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虚偽は飛び回り、真実は後から足をひきひきやって来る

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・・・as the vilest writer hath his readers, so the greatest liar hath his believers: and it often happens, that if a lie be believed only for an hour, it hath done its work, and there is no farther occasion for it. Falsehood flies, and truth comes limping after it, so that when men come to be undeceived, it is too late; the jest is over, and the tale hath had its effect: like a man, who hath thought of a good repartee when the discourse is changed, or the company parted; or like a physician, who hath found out an infallible medicine, after the patient is dead.・・・ 最も劣悪なる作家にも読者がいるように、極めつけの大ウソつきにも信者がいる。よくあることだが、嘘が一時間でも信じられたが最後、その役目はもう果たしてしまったと言え、もうそれ以上要はない。虚偽は飛び回り、真実はその後から、足をひきひきやって来る。よって、人が騙されたとわかった時にはもう後の祭り。いたずらは終わり、嘘物語はその効果を発揮してしまっている。話題がすでに別のことへ移ってしまった後、または会合が終わってしまった後に、機知に満ちた言葉を思いついた人物のごとく、患者が死んでしまった後に、効果満点の薬を発見した医者のごとくだ。 (日本語訳:本人!AIさんに頼ってませーん!) The Examiner誌 14号(1710年11月9日)に掲載されたエッセイよりの抜粋(英語全文は こちら ) これはAnglo-Irish(イギリス系アイルランド人)作家、ジョナサン・スウィフト(Jonathan Swift)によるエッセイの一部。いつの世も変わらぬものだと思う。...

AIスロップとコンテンツのクソ化にどう対処する?

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「何、これ・・・?」 30年以上前の話になる。美術学校に通っていたイギリス人の友人が、学年末の展覧会のための作品を作っているところへ遊びに行ったことがある。彼の前にでんとかまえていたオブジェは、新聞紙やら紙やらをくしゃっと潰して作ったものだった。かなり雑に作ったペーパーマシェといった風。4本の足のついた箱があり、その前には巨大エッグスタンドのような代物が据えられている。エッグスタンドの中には、空き缶やら煙草の空箱やら丸めた紙くずやらテークアウェイのプラスチック容器やらが入っている。ゴミ箱のように。そしてエッグスタンドの全面からは二つの筒のようなものが飛び出し、4本足の箱につながっている。 「どうだ」と言わんばかりの友人の視線を浴びながら、私はしばしその物体を見つめ、必死に頭の中で誉め言葉を探したが、見つからず、出てきた言葉は素直な疑問・・・「何、これ?」だった。彼はわからないのかとびっくりしたような眼を見開いた。「クソのようなテレビ番組を何時間も見ている人間たちの頭が、やがて、くずでいっぱいになるというメタファーだ!」 なるほど、この箱はテレビか。エッグスタンドは頭の部分が切り取られ空洞になっている人間の頭から肩というわけだ。空洞の中に入っているごみは、テレビに吸い付いた眼球(2本の筒)から取り込んだ内容物。言われてみると、エッグスタンド前面には鼻のようなものがついており、赤い絵の具で狂ったような笑いを浮かべた口も描かれている。彼はその後、延々とテレビ番組の内容の薄っぺらさを語った。当時のイギリスのテレビ番組はチャンネル数が日本のそれと比べてかなり少なかった。にもかかわらず、バラエティー番組ばかりの日本より、面白くためになるものも割とあると感じていた私だったが、一応ふんふんと意見を伺った。 こんな事を思い出したのは、AI slop とenshittificationという言葉に初めて行き当たった時だ。slopとは名詞の場合「汚水、泥水、残飯」などの意味。今更私ごときがエラソーに説明する必要もないのだろうけれど、AI slopは、AIが作り上げる低価値のコンテンツ。大量に流れ出すとインターネット、SNS上を汚染しまくることになる。enshittificationは新語で、直訳は「クソ化」。プラットフォームの劣悪化を指す。テレビの内容を心配するという時代から、ネット、S...