桑の実摘んで現行犯
caught red-handed(コート・レッドハンデッド)という英語のフレーズがあります。直訳すると、「赤い手をしているところを捕らえられる」ですが、「(犯罪や、その他よからぬ事を)行っている最中に捕まる、発見される」という意味。要は、現行犯です。
He was caught red-handed.
殺人を犯して、その血で手がまだ染まっている時に、発見されて捕まってしまう・・・というところから来たフレーズで、このレッドハンデッドが初めて、文学作品内で使用されたのは、スコットランドの作家ウォルター・スコットによる、「アイヴァンホー」だったと言います。この本読んだんですけどね、気がつかなかったです、このフレーズ。何せ、わりと長い本なので(・・・と言い訳)。
さて、先日見たテレビ番組で、エセックス州チップトリーにあるジャム会社、ウィルキン・アンド・サンズ社の果実園で、桑の実(mulberry マルベリー)を摘む様子と、それをジャムにする様子を放送していました。この放送の中で、マルベリーを密かに摘み取ると、その実の汁で手が赤く染まってしまい、その色がなかなか落ちないのだそうで、「あ、こいつは、桑の実盗んでおった!」と犯罪が発覚してしまう・・・まさに、これも、「caught red-handed」である、などとやっていました。血に染まった手よりもご愛嬌ですが。
この番組を見た後、さっそくスーパーでマルベリージャムを探したのですが、ウィルキン社のものも、他社のものも、マルベリージャムなど置いていない。そこで、ジャム工場とショップが一緒になっている、チップトリーのウィルキン本社へ乗り込んだものの、ここのショップでも売っていなかったのです。レジの人に聞くと、「売切れてしまって、今週中には、また店に出せるようになると思うけれど。」そこで、「テレビ番組でやっていたから、ちょっと、どんな味かと思って。」という話をすると、「そうそう、それ以来、かなり人気が出たんですよね~。」テレビの威力はすごいのです。
その帰途、ちょろりと寄ったガーデンセンター。ガーデンセンターの一角にあったファームショップへ足を運ぶと、あったのです、ウィルキン社のマルベリージャム!テレビを見た人たちは、皆、私の様に、本社へ直行して、本社では品切れになってしまったのでしょう。約6ポンドと、ジャムにしては、かなり高額ですが、テレビ番組で、マルベリージャム加工の過程で、桑の実のひとつひとつから、実が崩れぬよう、手作業で、へたを引き抜いている様子を映していたので、この値段も仕方ないかと、納得。かなり手がかかっているのです。フルーツ含有率も、堂々の70%ですし。ついでに、大好きなストロベリージャムのリトルスカーレットも一緒にかごに突っ込んで、夏の植物用のコンポストと一緒に購入。
家に戻って、さっそく、パンにどかっとのせて試食しました。思ったより、あまり特徴の無い味です。桑の実は、ぐちょっとつぶれておらず、皆、ひとつひとつ形を留めて、ころころとしており、果物を食べているという気分はあります。
ジャムでない、自然の桑の実を食べたのは、はるか昔の日本での子供時代でした。自宅と小学校の途中に、どんぐり文庫という児童図書館があり、良く学校帰りに通っていたのですが、このどんぐり文庫の建物の裏手は、小さな林になっており、その中に、なぜか一本、桑の木が生えていたのです。実のなる季節に、友達と、ここで、甘酸っぱく美味しい実を、摘んでは食べ、摘んでは食べ。味も、ジャムにしたものより、ずっと美味しかった気がしますが、楽しかった事の記憶は、いつもレインボーカラーですから、断言はできません。童謡「赤とんぼ」にも歌われていましたね、桑の実。「山の畑の桑の実を、小かごに摘んだは、まぼろしか」。非常に美味しく感じたあの味も、まぼろしかも・・・。
イギリスでは、桑は、ローマ人がイギリスに持ち込んだとされる植物のひとつです。この国の桑の木の大半は、ブラックマルベリー(Morus nigra)と呼ばれる種で、蚕さんのためのホワイトマルベリー(Morus alba)とは違う種です。雄と雌が別の植物ですが、栽培されているほとんどは、雌で、蜂などの受粉に頼らず実をつける、頼もしい植物です。ただし、植えてから7年は、実がならないので、小さい木から育てるには、収穫できるようになるまで、辛抱が必要。
私の、イギリス自然辞典によると、1609年に、フランスからの絹を輸入するのに、イングランドが巨額を払っている事に愕然としたジェームズ1世は、自国で絹を生産できないものかと、イングランド内に、蚕の餌用のホワイトマルベリーを沢山植えて、養蚕を奨励しようとしたのですが、ホワイトマルベリーは、この国の気候には合わなかったようで、栽培は上手くいかず、計画はおじゃんとなったそうです。ジェームズ1世は、現在のバッキンガム宮殿の南側に位置する場所に、わざわざ桑園をしつらえて、このイギリス絹産業打ち上げに、かなりのお金とエネルギーを注ぎ込んだようなのですが。以前訪れた、サドベリーにある、画家トマス・ゲインズバラの生家の庭で、この、ジェームズ1世の時代に植えられた樹齢400年の桑の木(ブラックマルベリー)を見たことがあります。
最後に、桑を歌った、イギリスのナーサリーライムをひとつ。
Here we go round the mulberry bush
The mulberry bush, the mulberry bush,
Here we go round the mulberry bush,
On a cold and frosty morning.
桑の茂みをぐるりと回る
桑の茂み、桑の茂み
桑の茂みをぐるりと回る
寒く霜が降りる朝
最後の一文を
So early in the morning
朝もまだ、早いうち
とするものもあるようです。
寒く霜が降りる朝も、もう数えるばかりとなりそうです。ついに、庭のラッパ水仙も咲きはじめましたから!
He was caught red-handed.
殺人を犯して、その血で手がまだ染まっている時に、発見されて捕まってしまう・・・というところから来たフレーズで、このレッドハンデッドが初めて、文学作品内で使用されたのは、スコットランドの作家ウォルター・スコットによる、「アイヴァンホー」だったと言います。この本読んだんですけどね、気がつかなかったです、このフレーズ。何せ、わりと長い本なので(・・・と言い訳)。
さて、先日見たテレビ番組で、エセックス州チップトリーにあるジャム会社、ウィルキン・アンド・サンズ社の果実園で、桑の実(mulberry マルベリー)を摘む様子と、それをジャムにする様子を放送していました。この放送の中で、マルベリーを密かに摘み取ると、その実の汁で手が赤く染まってしまい、その色がなかなか落ちないのだそうで、「あ、こいつは、桑の実盗んでおった!」と犯罪が発覚してしまう・・・まさに、これも、「caught red-handed」である、などとやっていました。血に染まった手よりもご愛嬌ですが。
この番組を見た後、さっそくスーパーでマルベリージャムを探したのですが、ウィルキン社のものも、他社のものも、マルベリージャムなど置いていない。そこで、ジャム工場とショップが一緒になっている、チップトリーのウィルキン本社へ乗り込んだものの、ここのショップでも売っていなかったのです。レジの人に聞くと、「売切れてしまって、今週中には、また店に出せるようになると思うけれど。」そこで、「テレビ番組でやっていたから、ちょっと、どんな味かと思って。」という話をすると、「そうそう、それ以来、かなり人気が出たんですよね~。」テレビの威力はすごいのです。
その帰途、ちょろりと寄ったガーデンセンター。ガーデンセンターの一角にあったファームショップへ足を運ぶと、あったのです、ウィルキン社のマルベリージャム!テレビを見た人たちは、皆、私の様に、本社へ直行して、本社では品切れになってしまったのでしょう。約6ポンドと、ジャムにしては、かなり高額ですが、テレビ番組で、マルベリージャム加工の過程で、桑の実のひとつひとつから、実が崩れぬよう、手作業で、へたを引き抜いている様子を映していたので、この値段も仕方ないかと、納得。かなり手がかかっているのです。フルーツ含有率も、堂々の70%ですし。ついでに、大好きなストロベリージャムのリトルスカーレットも一緒にかごに突っ込んで、夏の植物用のコンポストと一緒に購入。
家に戻って、さっそく、パンにどかっとのせて試食しました。思ったより、あまり特徴の無い味です。桑の実は、ぐちょっとつぶれておらず、皆、ひとつひとつ形を留めて、ころころとしており、果物を食べているという気分はあります。
ジャムでない、自然の桑の実を食べたのは、はるか昔の日本での子供時代でした。自宅と小学校の途中に、どんぐり文庫という児童図書館があり、良く学校帰りに通っていたのですが、このどんぐり文庫の建物の裏手は、小さな林になっており、その中に、なぜか一本、桑の木が生えていたのです。実のなる季節に、友達と、ここで、甘酸っぱく美味しい実を、摘んでは食べ、摘んでは食べ。味も、ジャムにしたものより、ずっと美味しかった気がしますが、楽しかった事の記憶は、いつもレインボーカラーですから、断言はできません。童謡「赤とんぼ」にも歌われていましたね、桑の実。「山の畑の桑の実を、小かごに摘んだは、まぼろしか」。非常に美味しく感じたあの味も、まぼろしかも・・・。
イギリスでは、桑は、ローマ人がイギリスに持ち込んだとされる植物のひとつです。この国の桑の木の大半は、ブラックマルベリー(Morus nigra)と呼ばれる種で、蚕さんのためのホワイトマルベリー(Morus alba)とは違う種です。雄と雌が別の植物ですが、栽培されているほとんどは、雌で、蜂などの受粉に頼らず実をつける、頼もしい植物です。ただし、植えてから7年は、実がならないので、小さい木から育てるには、収穫できるようになるまで、辛抱が必要。
私の、イギリス自然辞典によると、1609年に、フランスからの絹を輸入するのに、イングランドが巨額を払っている事に愕然としたジェームズ1世は、自国で絹を生産できないものかと、イングランド内に、蚕の餌用のホワイトマルベリーを沢山植えて、養蚕を奨励しようとしたのですが、ホワイトマルベリーは、この国の気候には合わなかったようで、栽培は上手くいかず、計画はおじゃんとなったそうです。ジェームズ1世は、現在のバッキンガム宮殿の南側に位置する場所に、わざわざ桑園をしつらえて、このイギリス絹産業打ち上げに、かなりのお金とエネルギーを注ぎ込んだようなのですが。以前訪れた、サドベリーにある、画家トマス・ゲインズバラの生家の庭で、この、ジェームズ1世の時代に植えられた樹齢400年の桑の木(ブラックマルベリー)を見たことがあります。
最後に、桑を歌った、イギリスのナーサリーライムをひとつ。
Here we go round the mulberry bush
The mulberry bush, the mulberry bush,
Here we go round the mulberry bush,
On a cold and frosty morning.
桑の茂みをぐるりと回る
桑の茂み、桑の茂み
桑の茂みをぐるりと回る
寒く霜が降りる朝
最後の一文を
So early in the morning
朝もまだ、早いうち
とするものもあるようです。
寒く霜が降りる朝も、もう数えるばかりとなりそうです。ついに、庭のラッパ水仙も咲きはじめましたから!
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