イングリッシュ・オーク

イギリスの各所で見られるオークの木。その、夏の豊かな緑や、冬のねじれた枝が、にょきっと広い空に突き出している姿を見るのが好きです。

寿命の長さと、家具や木材にしたときの堅さ質の良さで、「森の王者」とも称されます。イギリスの国土と気候に適した木であるため、多少の病気にも強く、平均250年の生涯の中、200種以上の生物(カビやきのこ、微生物を含む)の住処となります。葉は多くの虫の幼虫の食べ物となり。ですからオークは、間接的に、それら虫を食べる小鳥、そして、小鳥を食べる鷹類の生命も支え。リスは枝の上に巣をつくり。朽ちかけたオークの木の穴にふくろうが住むというおとぎ話めいた光景もわりとあるのかもしれません。

オークの葉と、その実であるどんぐり(エイコーン)のマークはナショナル・トラストのロゴとしても使われています。

とある、名もない教会にふらりと立ち寄った際、内部に、何気なくこの写真の様な木製の箱が置かれていました。400年以上前に、1本のオークの幹をくり貫いて作ったダッグ・アウト・チェストです。教会の大切な書類や、貴重品を入れて、錠をかけ使用したと言う事。以前、別の教会でも似たものを見た事があります。私もこんな立派なチェストを持っていたら、家宝を中にしまって大切にする事でしょう。

船が、木製であった時代は、当然、造船にはオーク材が多量に使われていましたし、教会内のチェストや内装に限らす、昔のイングランドでは、ゆりかごから棺おけまで、人生の中、常に身近に触れる木であったのです。

最近では、オーク製の家具なども、かなり手ごろな価格で買えますが、これは、中国などから、大量にオーク材が輸入されているためで、イングリッシュ・オークで作った家具は、輸入オークで作ったものに比べ、ぐっと値段があがります。

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国内あちこちに、歴史的いわれのあるオークは沢山あります。一番有名なのが、ロイヤル・オークでしょうか。

父親チャールズ1世が処刑され、フランス、後にオランダに亡命していたチャールズ2世が、クロムウェルから政権を取り返そうと英国へ戻る。1651年のウスターの戦いに敗れた後、チャールズは王党派のギルフォード家所有、ボスコベル・ハウスにかくまわれ、館のそばに立つオークの木によじ登りやって来た追っ手から隠れたといういわれの木です。現在この場に立っている木は、当時のものではないそうですが。

ロイヤル・オークは、パブの名前にも使われ、木の葉の中からぽこんと顔を出しているチャールズ2世がパブ看板に描かれていたりします。


この写真のかなり傷んでしまっているオークは、ある日訪れた、別の貴族の館の敷地内(サフォーク州、イックワース)にあったものです。樹齢約700年。国内でもかなりの長寿だそうです。根元に書かれていた説明を読むと、ティー・パーティー・オークと呼ばれ、子供たちが、この木の周りで遊んだり、ティー・パーティーをしたことに由来するとありました。

幾世代もの子供たちが訪れては去るのを、ずっと立って見ていた木です。不思議な気がします。

コメント

  1. しんこんらぶらぶ2009/04/30 6:11:00

    こんにちは^^と言っても、そちらはまだ朝ですね。
    ロンドンで、オークのボディの置き時計を2つ買いました。15分毎に、キンコンカンコンと、素敵な音を鳴らしてくれます。
    明日から、東京ドームでの催事です。ロンドンで購入したものをがっちり売って、またイギリスに行きたいと思っています^^今日はこちらは夏のように暑い日差しです。
    それなのに、ず~と家の中で、ふたりで値段付けとか、磨きをしています・・泣き・・らぶらぶ

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  2. らぶらぶさん
    最近はアンティークを投資として買う人も増えていると言う話です。ロンドン購入品完売するといいですね。
    オークは丈夫で長持ち、その時計もどんなお屋敷や家庭で時を刻んできたのでしょうか。そういう想像ができるのもアンティークならではの楽しいところです。

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