チーズ!

日本では、「月でウサギが餅をつく」。所変わればで、こちらでは、「月はチーズでできている」。

イギリスのアニメ、「ウォレスとグルミット」(Wallace and Gromit)。イングリッシュ・エキセントリック(変わり者のイギリス人)の典型の様な、変な発明の大好きなウォレスと、まじめで優秀な愛犬グルミットの巻き起こす物語。

彼らがデビューした1989年の約30分のテレビ用短編、「A Grand Day Out」(邦題、チーズホリデー)のテーマは、月とチーズ。チーズが大好きなウォレスは、家でチーズを切らしてしまった事に気づき、ロケットを作り、月への日帰り旅行に出かけるというもの。クラッカーを沢山持参し、月の表面をナイフで切りながら試食。籠いっぱいに月製チーズを切り取って持って帰ります。
こちらのスーパーでは大体、チーズ・カウンターがあり、英国産はもちろん、ヨーロッパ各国のチーズを塊で売ってくれます。目方を言って、切ってもらう事もできますし、もちろん、すでに、切られてラップに包んで売られているものを取り上げて買うこともできます。英国のチーズは(ヨーロッパのチーズも大体そうでしょうが)、地域や場所の名がついているものがほとんど。チェダー、グロスター、スティルトン、ランカシャー、ウェンズリー・デイルなどなど。

我家で、量的に一番多く買い込むのは、シチューやマカロニチーズなどの料理とチーズ・オン・トーストに使うチェダー。その他常時あるのは、パスタ用塊のパルメザン・チーズ(すでに粉になっているものより味がいいです)。後は、ピザの材料と、サラダと食べるモッツァレラ。ウォレスの好きなウェンズリー・デールもピクルスと一緒に作るサンドイッチ用に蓄えてあります。

燻製したもの、ハーブや、アプリコットなどのドライフルーツの入ったもの、スパイシーなメキシカン風などもあり、チーズ業界もあの手この手。変わったものを試すのも楽しいです。

 パブ・ランチのメニューには、プラウマンズ・ランチ(ploughman's lunch ・小作人ランチ)と呼ばれるものがありますが、これは、パンとサラダとチーズを盛り合わせた簡素なランチ。チーズは選べることが多いですが、私は、大体、わりと強烈な味の青カビのチーズ、ブルー・スティルトンを選びます。パンと一緒に、サイダー(りんご酒)かビールでぐびっと、流し込むと美味しいのです。

これは、以前、イギリスのコメディアンがアメリカ旅行をした際に言っていた事ですが、「アメリカにいて、恋しくなったのは、ちゃんとした塊で買えるチーズ。」なんでも、アメリカの店で遭遇したチーズのほとんどが、日本と同様に、プロセスチーズ系のものだったとかで、塊が売っていると思うと、皆チェダーばかりで、種類が少ないそうですが。うちのだんなも、やはり、日本とアメリカを旅した時の食生活で、ちょっと物足りなく感じたものに、濃い紅茶と本格チーズ、それに美味しいブラウン・ブレッドを揚げていました。

ウォレスとグルミットのティー・タイムは、いつも、ポットいっぱいの紅茶と、チーズ。紅茶の用意をするグルミットに、ウォレスが言う決まり文句は、

Don't forget the crackers !
「クラッカーを忘れないでね!」

正方形のクラッカーの上にナイフで切ったチーズをのせて、もりもり食べています。

ウォレスのお好みのイギリス北部のヨークシャーの、オリジナルのウェンズリー・デール・チーズはこの番組のおかげで、一時は落ちかけていた売り上げも好調とか。

そして、彼が贅沢品として時々食べたくなるのは、こってりとコレステロール高そうな、イタリアのやわらかいブルー・チーズのゴルゴンゾーラ。これは、うちも好きで時々買ってます。クラッカーの上にちびっと取ったゴルゴンゾーラをナイフで引き伸ばして、一口食べては、やはりウォレスの決まり文句を口走ってしまうのです。

Oh, I do like a bit of Gorgonzola !
「うーん、ゴルゴンゾーラをちびっと食べるの好きだなー。」


*余談:ウォレスとグルミットの無粋の粋

去年のクリスマス、実に久しぶりにウォレスとグルミットのテレビ用新作「A Matter of Loaf and Death」(邦題は、「ベーカリー街の悪夢」)が放映され、クリスマスのテレビ視聴率では、堂々の一位になっていました。家族全員で見るクリスマスのテレビ番組は子供から、パパ、ママ、じーちゃん、ばーちゃんまで色々な世代で楽しめる番組が強いです、やはり。ちなみに、このタイトルを直訳すると、「一斤のパンと死に関わる事」。「a matter of life and death 生と死に関わる事」という英語のフレーズをもじったもので、パン屋を営むウォレスとグルミットが、パンやばかりを襲う、謎の連続殺人事件に巻き込まれるという内容。

監督のニック・パーク氏は、北部ランカシャー州出身で、ウォレスとグルミットも、ランカシャーに住んでいる設定になっています。

彼らの家の室内装飾は、いまだ、カーペットも壁紙も模様入りだし、カラーコーディネートなどあったものではありません。最近の家のインテリアは、柄を使わず、シンプルで、白やクリーム色を基本にした方がモダンでお洒落とされていますので、彼らの家は非常に、ださい。運転する車もぼろい。テレビは星一徹もびっくりの年代物。ウォレスのチョッキや下着なども、お洒落な人は着ないようなもの。

ニック・パーク氏に言わせると、この究極のダサさが、粋(cool)で愉快なのだと。と言うことは、やはりダサい柄入りカーペットで、テレビもいまだ買い替えていない我家も、ひねった意味では粋なのだ!と胸をはったりもして。

それでは、次回カメラに向かった時は、にこっと笑って、
「ウェンズリー・デール・チーーーズ!」

Wallace & Gromit Official Site

コメント