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6月, 2015の投稿を表示しています

エルダーフラワーコーディアル

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5月半ばから、イギリスの田舎の風景の中で、白い小さな花があちこちに広がっていきます。近くの小川に沿った緑地にレースをかける カウ・パセリ (シャク)、散歩道のわきに点々と生える さんざし の木のメイフラワー。 マロニエ の木の逆さシャンデリアのような花も目に留まり。そして、5月も後半にさしかかろうという時期に咲き始めるのが、やはり白い小花の集合体の、エルダー(西洋ニワトコ)の花、エルダーフラワー(Elderflower)。 エルダー(Elder、学名Sambucus nigra)は、藪と木の中間のような植物。北ヨーロッパ一帯、北米でも一般的に見られるようです。うちの周辺にも、あちこちに沢山生えています。市販のエルダーフラワー系ドリンクが、好きなので、毎年、この季節になると、「エルダーフラワーを摘んで、自家製エルダーフラワーコーディアル(Elderflower Cordial)を。」と、ずっと思っていたのですが、いつも時期を逸していたのです。そろそろ、エルダーの花も終わりに近づいてきて、だんなが、「今年もコーディアル作らないの?花終わっちゃうよ。」彼のお父さんは、昔、良く、エルダーフラワーを摘んで、シャンペンを作っていたのだそうです。 「花終わっちゃうよ。」と毎日、私に言いながら、埒が明かないので、だんなは、先日、薬局から、エルダーフラワーコーディアル作りに必要な「シトリック・アシッド」(citiric acid、クエン酸)50グラムを1箱買ってきて、私に手渡し、再び、「エルダーフラワー終わっちゃうよ。」 ナッジ されてしまった、私。これは作るしかない、と、さっそく、その翌朝早く、ビニール袋とはさみを持って、エルダーフラワーを摘みに行きました。歩いて5分と行かない場所で、かなりの収穫ができるというのも、考えてみれば贅沢な話です。排ガスや、農薬が心配なので、道路際、畑の脇のものなどは、避けたほうが無難です。 こういう事をしていると、散歩で小川のほとりを歩く人が、声をかけてくるのです。イギリス人は、日本人より、喋り好きが多いのかもしれません。まず、ごっついおじさんが、「何それ、香りがいいわけ?」「コーディアル作るから摘んでるの」「へー」「だって、これ、エルダーフラワーでしょ?」私が手にした花に、顔を突っ込んで香りをかいでいたおじさん「え、知らない?はは

イギリスの芝生

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イギリスは、そろそろウィンブルドンを迎える、ローン(芝生)・テニスの季節。テニスコートもさることながら、ロンドン内の公園も一面芝。ロンドン内、歩きつかれたら、その辺の公園に入り、芝の上にごろんと寝転んで、休憩したりと、犬のウンコさえ気をつければ、芝は優れものです。以前、パリに旅行したときに、ベンチが近くに見当たらなくても、「よっこいしょ。」とできる、ロンドンの芝地が恋しくなりましたもの。ロンドンに限らず、イギリス各地の町や村でも、公共の地は芝が一面にひかれている。あまりにも普通の光景なので、「ここも芝、あそこも芝」などと、考える事もないですが。ちなみに、上の写真は、我が家から徒歩2分くらいの場所。 草は英語で、グラス(grass)ですが、芝生はローン(lawn)。このローン(lawn)という言葉が最初に使われたのは、13世紀に遡るそうで、フランス語の「laund」という言葉に由来するといいます。森に囲まれた空き地を意味し、思索の場所としての、修道院の回廊に囲まれた芝生の緑の空間を指したそうです。まるで緑の絨毯の様な美しい芝生をどのように植えるかなどのインストラクションも、すでに13世紀の書物に記載されていると言います。かつては修道院であったウェストミンスターに丹念に芝がひかれるのも13世紀。そして、娯楽のための庭園にも芝が用いられるようになり、やがて、緑の芝の上で興じる、ローンボウルズ(lawn bowls、 bowling)などの遊びも生まれ。 イギリスの村の典型的なボウリング・グリーン ローンボウルズ用の芝地は、ボウリング・グリーン(bowling green)と呼ばれ、こちらも、多くの町や村の一角に見られます。うちの町の中心には、ボウリング・グリーンが2つもあるのですよね。日本のゲートボール風に、今ではお年寄りのスポーツの感がありますが、ひそかに人気なのかもしれません。 イギリスの大邸宅は入り口から目に届く範囲までずっと芝に囲まれ、そのあちらこちらに木々がそよいでいる、という風景を作り出したのは、18世紀 ランドスケープガーデン の大御所、ランスロット・(ケーパビリティー)・ブラウン。庭は大部分芝で、ところどころに植え込みがしてある、というこのパターンが、当然、規模はぐっと小さくなるものの、やがては中流家庭にも浸透していき、現在の一般的

クレッシング・テンプルでのイングリッシュ・ブレックファスト

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去年の4月、エセックス州の クレッシング・テンプル (Cressing Temple)を訪れた際、地方自治体の資金不足の影響か、敷地内にあったティールームは閉鎖するわ、その他もろもろの従業員も解雇という話になっており、「それは残念」と思ったのですが、今年5月になってから、近場の チップトリー (Tiptree)にある、ジャム製造会社である、ウィルキン・アンド・サンズ社(Wilkin and Sons Ltd)が、この場に、ティールームを新しくオーブンしたという噂を聞き、友人を連れて、先週、お茶とケーキをしに行きました。これが、なかなかグーだったのです。バスでお年寄りツアー客なんぞも来てました。クレッシング・テンプルは、テンプル騎士団が建築した納屋で有名な場所であるため、カフェの名は、そのまま、The Barns(納屋)。友達は、来るのが初めてだったので、きちんと納屋の見学もして。敷地内では、古い建物を紹介するテレビ番組のロケ隊とも出くわしました。 ウィルキン・アンド・サンズ社は、チップトリーの本社内はもちろん、他にも数件、エセックス内で、こうしたティー・ルームを経営していますが、場所的には、ここの方が本社のティー・ルームより、のーんびりできます。 12時前には、 イングリッシュ・ブレックファスト も出してくれるというので、だんなと、「試してみようか」と、本日再び、朝食なしで行き、ここで、ちょいと遅めの朝ごはん。ケチャップも、ウィルキン・アンド・サンズの小型瓶に入って出てきました。(ちなみに、私は当社のジャムの他にも、このトマトが沢山入った感じのドロッとしたケチャップのファンで、最近は、ケチャップは当社のものしか使いません。)盛り付けも上品だし、ソーセージもベーコンもトマトも卵も、質が良い感じで、美味しい。外のテーブルに陣取り、気分も良いぞと、むしゃむしゃ。大満足でした。これで足りない人は、エキストラで、トマトなり、ソーセージなりを増やして注文できるようになっていますが、私は、これで十分で、お昼も、ほとんどお腹がすかないくらいでした。 食べ物が出てくるのを待っている間に、敷地内の植物売り場へ駆け足で行って、植物もいくつか購入。ここの植物、比較的安く、ガーデンセンターでは、あまり見かけないような変わったものも置いてあるのです。御代は、売り場のそばに備え付

大きな森の小さな家(Little House in the Big Woods)

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ローラ・インガルス・ワイルダー(Laura Ingalls Wilder)というと、テレビドラマ化もされて人気だった「 大草原の小さな家 」(Little House on the Prairie)の著者として有名です。私は、本も読まず、テレビシリーズも見たことがなかったので、「大草原の小さな家」が、ローラ・インガルス・ワイルダーの半自伝シリーズ「インガルス一家の物語」シリーズの第2作目の題名だという事も知りませんでした。 昨今、アメリカの西部開拓の事などに興味が出てきたのもあり、先週、この「インガルス一家の物語」シリーズの第一作目、「大きな森の小さな家」(Little House in the Big Woods)を入手し読みました。出版は、1932年ですが、物語の背景は、19世紀後半のアメリカなので、出だしは、「Once upon a time, sixty years ago...(昔々、60年前に・・・)」で始まります。児童文学というより、19世紀のアメリカにおいて、自然の中での、自給自足サバイバル生活風景が、とても興味深かったのです。また、出版当時は、アメリカも大恐慌の只中とあって、苦労をしながらも明るく生活を送るフロンティア家族の奮闘記は、当時の読者の共感を買ったようです。 「大きな森の小さな家」は、アメリカは、ウィスコンシン州の北部、ミシシッピ川からほど遠からぬ集落、ぺピン近郊の森に住むインガルス一家の一年を追ったもの。お父さん、お母さん、5歳のローラと姉さんのメアリー、赤ん坊のキャリーが住むのは、森の中の丸太小屋。 冬に向けて、食べ物のたくわえをする季節から始まります。まず、お父さんが射止めた鹿を、燻製する様子。そして、年に一回、豚を殺すのもこの季節で、この豚の肉から、お母さんが、長期保存用に、豚の頭チーズなる代物、ソーセージなどを作る様子が描写され、また豚の膀胱を膨らませたものは、風船として、ローラとメアリーのおもちゃと化し、豚の尻尾を子供たちは火であぶって、しゃぶるのです。とてもワイルド!屋根裏部屋には、収穫したかぼちゃや玉ねぎが貯蔵され、子供たちは冬の間、かぼちゃを椅子や、テーブルにしたりして遊ぶ。 バターつくりの様子も描かれ、きれいな色が好きなお母さんは、にんじんの皮を利用して、バターに色付けをする。砂糖をキャラメル状

薬の先駆者、ジギタリス

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夏になると、ぐんぐんと、他の植物の間から顔を出して、長い茎に、鐘状の花をいくつも咲かせる植物は、日本名では、ジギタリス。英語では、俗に、Foxglove (フォックスグラブ)の名で親しまれています。直訳すると、フォックスグラブは、「キツネの手袋」となるわけで、日本人としては、新美南吉の童話「手袋を買いに」を思わせる微笑ましい名です。ただし、かつて、フォークスグラブ(folk's glove)と呼ばれていたものが、くずれて、フォックスグラブと呼ばれるに至ったという説もあるそうです。フォークとは、「一般の人々」を意味する言葉ですが、この場合は、妖精の事を指しているというので、「妖精の手袋」・・・それはそれで、ちょっといい名前です。また、グラブというのも、昔は鈴形をした楽器の名であった、という説もあるようで、妖精が、ちんからからと、ジギタリスの鈴を打ち鳴らしているのを想像すると、それもまたイケます。 学名のDigitalisは、ラテン語の「指」から来た言葉で、これもやはり花の形から。たしかに、指をすっと花に突っ込むと、ぴったりフィットですもの。 いまや、ガーデン用に色々な種類や色、模様のジギタリスが出回っていますが、イギリスの草原や藪、森林内の空地に咲く、原生のジギタリスは、Digitalis purpurea(日本語:ジギタリス・プルプレア)。背の高い茎に、紫を意味するpurpurea(プルプレア)の名の通り、紫の花が咲きます。時に白い花の、Digitalis purpurea albiflora と称されるものもあります。二年草です。 ジギタリスは、かなりの毒性があるにもかかわらず、古くから、民間療法で、薬草としても使用され、ジギタリスの葉のお茶は、風邪や熱、外用には、腫れや打撲のあざなどに当てて使用されたとか。心臓関係の病気、特に、dropsy(うっ血性心不全)に良く効くとされていたものです。 18世紀後半、植物学者でもあった、イギリスのウィリアム・ウィザリング(William Withering)医師は、シュロップシャー州で、薬草やハーブを用いて、病人の治療を行っていた女性から、うっ血性心不全には、ジギタリスが良いと言う話を聞き、ジギタリスの薬物的効果の研究を開始。こういう薬草での治療を行った女性たちは、往々にして、ウィッチ(魔

ブレイキング・バッド(Breaking Bad)

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先月の頭、だんなのヨークシャーの幼馴染から小包が届きました。中に入っていたのは、「すごく面白いよ。エンジョイ!」というメッセージと共に、米のテレビシリーズで、大人気を博した「ブレイキング・バッド」(Breaking Bad)のDVDボックス・セット。イギリスでは、有料のスカイテレビで放送され、最終回の高視聴率は、新聞記事にもなっていた記憶があります。うちは、スカイが無いので、テレビでは1度も見ていませんが、放送中は話題であったため、高校の化学の教師が、肺がんの宣告を受けて、自分の死後、家族が困らないように、金を稼ぎ上げるため、覚せい剤のメタンフェタミンを化学の知識を生かして製造し、麻薬ギャングのはびこる悪の世界へ踏み込んでいく・・・という、簡単なあらすじは知っていました。最近、肺にカビが発生してしまい、肺が弱っているだんなは、「まだ生きているうちに、クリスタル・メス(メタンフェタミン)を作って、一儲けしろっていう陰のメッセージで、これ送ってきたのかな。」なんて言ってましたが。 という事で、先月はほとんど、夜はテレビを見ずに、「ブレイキング・バッド」づくめ。だんな入院期間中には、私が見終わったDVDを、病院に持っていき、 酸素マスク をして、病室からほとんど出られなかった彼は、これをPCでみるのが、唯一の楽しみでした。最終回にたどり着いた時には、マラソンのゴールを切った感じでしたが、本当に面白かった。特に、最終シリーズは展開も早く、最終回は、満足の行くエンディング。なにせ、毎日の様に、楽しみに見ていたので、見終わってしまった今、「ブレイキング・バッド」の離脱症状をわずらっています。 出だしのあらすじを、もう少し詳しく書くと・・・ ニューメキシコ州、アルバカーキー。学者並みの頭脳を持ちながら、高校の化学教師に甘んじて生活を送ってきたブライアン・クランストン演じる、ウォルター・ホワイト(愛称ウォルト)は、生計をたてるため、学校の仕事の後は、近くのカーウォッシュのレジでも働く。妻スカイラーは、2児目を妊娠中で、高校生の息子ウォルター・ジュニアは、身体障害を持ち、杖をついて歩く。50歳の誕生日を迎えた直後、ウォルトは肺がんで、余命いくばくもない事が発覚。良い保険に入っていないため、治療には巨額が必要となる上、自分の死後の家族の生計も心配となる。 ひょんな事

柳のピクニック・バスケット

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昔スタイルの、柳のピクニック・バスケット。ピクニック・ハンパーなどとも称されます。うちのだんなの両親が、約50年前に購入して、長らく、ドライブとピクニックのお供に使っていたものです。半世紀を経ているわりには、留め金の皮が切れてしまった以外は、いまだ、立派ないでたちで、現在は、我が家で、テーブルクロス収納に使用しています。 植物繊維や枝を使用して編みこんで作られた製品を、英語では、一般にウィッカー細工(wickerwork)と言います。ウィッカー・チェア、ウィッカー・バスケットなど。もっとも、植物繊維以外の、ワイヤーを使用した ロイドルーム・チェア なども、ウィッカー・チェアと称されるので、植物と限定せず、細い枝風の材料で編みこんだもの一般が、ウィッカー細工と言えるかもしれません。「 ウィッカーマン 」という、スコットランドの小さな島を舞台にした映画がありました、そう言えば。これは、太陽崇拝をする妙な宗教を信じる島民達が、柳で作った巨大な人型のウィッカーマンの中に、人間の生贄を入れて、豊作を願って、ウィッカーマンごと燃やしてしまう、というすごい話。 日本で言う、籐椅子、籐籠などの籐は、熱帯植物ラタンの事ですが、イギリスでのウィッカー細工は、うちのバスケット同様、柳の枝を使用したものが主流です。ラタンは、当然、イギリスでは育たないので、ラタン製品が輸入されはじめる前は、特に。 イギリス内で、編み細工に使用される柳の枝の生産地は、サマーセット州が有名で、うちのピクニック・バスケットも、だんなによると、サマーセット州の柳細工の店で購入したものだそうです。現在、巷に出回っている、比較的安価で購入できる籠類は、大半が中国製ではないかと思います。人件費、素材費、場所代を考えると、どうがんばっても、今のイギリス製は、値段と量では、輸入物に太刀打ちできないですから。 ウィッカー・バスケットにご馳走をつめてのピクニックというと、いまだ、子供時代に読んだ、児童文学「 たのしい川べ 」(Wind in the Willows)の第一章の、川ネズミと、モグラのピクニックのシーンを思い出します。せっかく、立派なピクニック・バスケットがあるのだから、車でお出かけの際は、川ネズミのランチ・バスケット同様、ご馳走で膨らんだバスケットを持って行って、川沿いの景色の良い場所でご飯・・