投稿

1月, 2017の投稿を表示しています

ジャッキー

イメージ
アメリカの新大統領の就任式も終わり、間もないというのに、時計の針を大幅に後戻りさせたようなトランプ新政権の政策に、唖然とさせられる中、ブレグジット後は、ヨーロッパに親しいお友達がいなくなりそうなイギリスは、アメリカとの良好な関係の維持、アメリカと好条件の貿易協定を結ぶ必要から、アメリカの現政権におべっかを使う必要が生じ、トランプ政権が何をしようとも、我が国の方針とは違います、などと小声で言いながら、きっぱりと物申すこともできないという情けない状態に陥っています。それでなくても、状況が自分に不利の時は、こっそりとなりを潜めて、嵐が去るのを待つという、潜水艦の様な テリーザ・メイ の事ですから。野党側からは、ドナルド・トランプに尻尾を振る「テリーザ・ザ・アピーザー」(Therasa the Appeaser、へつらいのテリーザ)などという有り難くないニックネームも出始めています。 そんなこんなで、そのうち、アメリカでは再び、 魔女狩り でも始まるんじゃないか、くわばら、くわばら、などと思いながら、イギリスで封切り間もない映画「Jackie」(邦題は、「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」)を見てきました。ジャッキーはもちろん、米35代大統領ジョン・F・ケネディー夫人であり、つい先日、駐日アメリカ合衆国大使の座を去って帰国したキャロライン・ケネディーのお母さんでもあった、ジャクリーン・ケネディー。やっぱり、母子、顔ちょっと似てます。ケネディーからジョンソン大統領にかけては、黒人公民権を徐々に確立される努力がなされていった時代。 映画は、1963年11月22日、テキサス州ダラスでのJFKの暗殺から、11月25日の彼の葬式に至るまでのいきさつを、ファーストレディであった、ジャッキー・ケネディーの視点から描かれています。事後、ジャッキーにインタヴューをするために、彼女の家に現れたジャーナリストに、顛末を語るという形式。たまたま、これを見に行った翌日には、ジャッキーと精神面での対話をし、JFKの葬儀を執り行った、カソリック牧師さん役で登場していた英国俳優ジョン・ハートが亡くなるニュースが流れました。 ファーストレディであるとともに、ファッションアイコンでもあった彼女。アメリカの歴史、自分たちのシンボルとしての重要性をかなり意識していたようです。暗殺の日に

バーソロミューの市

イメージ
バーソロミュー・フェアを描いた1721年の版画 前回の投稿 で、イングランド王ヘンリー1世のお気に入りであったラヒア(Rahere)によって創立された聖バーソロミュー修道院、聖バーソロミュー病院の事を書きましたが、今回は、これにちなんで、聖バーソロミュー修道院と病院の維持費獲得のために、やはりラヒアにより始められ、ヘンリー1世によって許可を与えられたバーソロミュー・フェア(Bartholomew Fair、バーソロミューの市)の事を書くことにします。 その前に、まず、双方、日本語で「市 いち」と訳されるフェアとマーケットについて触れておきます。両方とも、店を売る屋台が出る「市場」である事は同じであるものの、フェアが、年に一回の行事であるのに対し、マーケットは毎日の様に立つ、日常の必需品などが売買される市を指します。イギリス内あちこちの村や町に、今もマーケット広場(Market Square)と呼ばれる場所がよくありますが、それは、かつてこうしたマーケットが開かれていた名残の場所です。 フェアと呼ばれるものの多くは、キリスト教の聖人の日に、イングランド各地の、特定の聖人をまつる教会や大聖堂などに、巡礼者たちが大挙して訪れるのを見込んで、周辺に屋台を立てる行商人が多くいた事に由来すると言います。アングロ・サクソン時代からすでに、こうしたフェアは行われていたようですが、王が、特定の団体に対し、「おぬしたち、マーケットを開いてよろしい、フェアを開いてよろしい」という許可(Charter)を与えるようになるのは、ノルマン朝に入ってから。フェアで出店するために、業者が支払う料金などは、フェアを開催する教会や、団体の収入となります。 フェア期間中の、屋台出品者の権利を守る、また、いさかいの解決、治安維持のために、パイパウダー・コート(Pie Powder Court)という法廷も存在していました。パイパウダーという妙な言葉は、フランス語の「pieds poudreux」(汚れた足)から来ているそうで、この法廷で裁かれる者たちは、フェアにやってくるのに歩き回って汚い足をしていたため。 バーソロミュー・フェア(1133~1855年) 722年も続いた、バーソロミューの市は、数多くあったイギリスのフェアの中でも、最も有名なもののひとつです。 ヘンリー1

聖バーソロミュー・ザ・グレート教会

イメージ
数あるロンドン内の教会の中、 ウェストミンスター寺院 と、 セント・ポール大聖堂 の2つの大聖堂以外で、見学するのに入場料を取る教会というのは、考える限り、テンプル騎士団ゆかりの テンプル教会 と、ここのみではないでしょうか・・・地下鉄バービカン駅のそばにある、セント・バーソロミュー・ザ・グレート教会(St Bartholomew-the-Great)。かなり強気ですね。その歴史と重要性に自信がある証拠か。 外からのぱっと見は普通の教会ですが、ロマネスクと称されるノルマン朝の丸いアーチに支えられた内部は、なかなか厳かで、違った雰囲気があります。 当教会は、1994年の映画「フォー・ウェディング」(Four Weddings and a Funeral)で、4つ目の結婚式が執り行われた場所として知られています。4つ目の結婚式、とは言っても、映画内では、花婿が、他に愛している人がいると式の最中に告白して、怒った花嫁に顔面パンチを受け、聖壇の前でノックアウトされるという顛末なので、実際の結婚にはいたらなかったわけですが。この他にも、数々の映画に使用されており、ざっと有名どころを挙げると 1998年の「恋に落ちたシェークスピア」(Shakespeare in Love) 2007年の「エリザベス:ゴールデン・エイジ」(Elizabeth: The Golden Age) 2008年の「ブーリン家の姉妹」(The Other Boleyn Girl) 2009年の「シャーロック・ホームズ」(Sherlock Holms) こうした人気メディアに登場する頻度が高いのも、強気の理由でしょう。上のU字型をした祭壇部分の写真を見て、「そう言われれば、確かに、映画で見たような記憶がある」なんていう人もいるかもしれません。「フォー・ウェディング」に使用されたこともあって、いまだ、結婚式のヴェニューとしても人気の様です。「フォーウェディング」は、公開されたときに、私は、ロンドンのスイス・コテージという場所の映画館に見に行ったのです。映画館はわりといっぱいで、噴き出したり、「えー!」と叫んだり、「くさーい!」のような声を挙げたりの、観客の反応などもよく覚えている、とても思い出深い映画です。 さて、このセント(聖)・バーソロミュー・ザ・グレート教会の設立の

悲惨なるサザンレール通勤

イメージ
現在イギリスの鉄道は、鉄道の線路自体はネットワークレールと称され、国営ですが、その上を走る列車の運行は、地方により異なった私営の列車運行会社によって行われています。運航権は、わりと短期で更新、または他社に移行されるため、うちの周辺を走る路線も、過去何回か、経営会社変更のため名前が変わっています。この、運航権を与えられる期間が比較的短期というのは、良くないのですよね。会社が、営業権を更新されなかった時のために、長期的な計画をたてられず、大規模の投資をしないで終わるので。 さて、サザン(Southern)と称される路線は、主に、イギリス南部の海辺の町、サセックス州ブライトンとロンドンの間を走っています。この路線は、去年2016年の春から、幾度ともないストライキを引き起こし、この列車を使ってロンドンに通勤する人たちの生活を、かなり惨めなものにしています。 今年も引き続き、年明け早々、サザンレールは、先週3回のストライキ。その頻度があまりにも多く、通勤者が、仕事場に到着できなかったり、あまりにも遅れてついたりするため、この路線に住む人たちは、求職の面接などで、サザンレールを使っているとわかると、それを理由に採用を拒否されるという話も出ています。ストレスのあまり神経障害を起こす人も増え、先日はラジオで、ストライキに次ぐストライキと、ダイヤの乱れのために、ある日、やっと乗り込んだ列車が、自分の降りるはずの駅を素通りしてしまい、ついに耐え切れず、列車の中で声を上げて泣き出してしまった、などと言う人もいました。また、沿線にある学校では、ストの日に、生徒が授業にたどり着けずに、教室が半分からだったというニュースも読み。風刺やコメディー番組では、最近、必ずと言っていいほど、サザンレールが取り上げられ、おちょくられていますが、沿線に住み通勤する人たちには、笑い事ではないでしょう。比較的ましな方の、うちの路線でさえ、5分や10分の遅れは、わりと頻繁で、通勤している時は、何度かいらいらさせられたものです。 もともと、サザンのストライキの、事の起こりは・・・DOO(Driver Only Operation ドライバー・オンリー・オペレーション)をめぐっての論争。このDOOとは、今まで、駅を出発するときに扉を閉めるのは、車掌の役割であったのが、これを、2016年の春から、すべて

古本の浪漫

イメージ
一昨年、懐かしくなって、子供の時に愛読した絵本「 おやすみなさいフランシス 」の古本をインターネットで購入してから、時に、ふと思い立って、「あれも、もう一度入手したい」などと思った絵本を、ぼちぼち購入しています。古本は、基本的に、新しいものより、ずっと安いという利点がまずあります。もっとも、レアな貴重本となると、その価値たるや、目玉の飛び出るものもあるわけですが。そういえば、去年の春には、5万ポンドもの価値があると言われる、ケネス・グレアム著の「 Wind in the Willows たのしい川べ 」の初版をめぐって、この本を所有していたディーラーが殺害されるという事件までありましたっけ。当然、私は、投資の対象を探しているわけではないので、購入している本は、みな、板チョコと同じくらいの値段のものばかりです。 安い、という事の他に、古本には、どこかで、別の誰かが読んだものであるという、ロマンがあるのです。表紙の裏などに子供の名前が書いてあると、この人は、今頃、どこで何をしているのか、などと思いをはせたりもし。古本に、書き込みがあったりすると、それが有名人物の手記でない限り、値段が下がるらしいですが、私は、その本の過去の歴史がうかがえるので、前の所有者の名前を初め、何かが、ちらっと記載されている古本の方が好きです。 先日購入した、米作家による絵本には、表紙の裏に、アリゾナ州のユマという場所にある小学校のスタンプが押されていました。アメリカの小学校の図書館にあった本が、なぜか、イギリスへやってきて、イギリスの古本屋から、私がネットで購入した次第。この本の履歴と旅路など、考えただけで、なんだかわくわくします。 この本が置かれていた小学校は、まだ存在するのかしらん、と、スタンプにあった学校の住所を、グーグルマップで調べてみたところ、あった、あった、まだありました。通りの写真などを見てみると、がらーんとしただだっ広い雰囲気の景色。学校のウェッブサイトもついでに覗いてみたところ、「ロードランナーのふるさと」と学校名の下に堂々と記載されており、笑みが浮かびました。 ロードランナー(Roadrunner)は、ワーナー・ブラザースのアニメでおなじみのオオミチバシリという鳥ですが、飛べるにもかかわらず、砂漠の景色の中を、たったか、たったか、高速で走るのが得意とい