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小説を読むのは体にいい?

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先日、朝、うとうとしながら、寝床の中で枕もとのラジオをつけて、何気なく聞いていると、「小説を読むのは精神と体にいい」という話が流れてきました。ある研究によると、余暇として、小説を日常的に読む人は、全く読まない人より、約2年ほど長生きする・・・というような、「本当かいな?」と思うような情報に、思わず、目がしゃっきりと開きました。これが、新聞やら、マガジン、SNSのメッセージに読みふけるのはではなく、とにかく、小説がいい、という事なのです。色々、これをするといい、あれをすると長生きする、という情報が行きかう中、こんな話は、初耳です。 小説を読むことが、なぜ精神に良いかという理由は、悩みやストレスがある時、今まで、心が内へ内へと向いて、自分や自分の状況ばかりに焦点を当ててしまい、くよくよしていたのが、物語の世界へと注意が移り、精神が安定してくるというのがひとつ。次に、小説内の登場人物へ抱く感情は、実生活での人間関係の経験と、ほぼ同様の効果があり、他人を理解する能力が向上、また、他人とのつながりを感じるという、ソーシャルな影響もあり。この小説の力で、自分中心の世界から外へ連れ出されることにより、常に痛みに悩まされている人も、痛みが多少なりとも緩和されたりするのだそうです。コロナのロックダウン中には、私も読書と映画には、精神的に、かなり助けられましたしね。 物語を読むと、脳の血流が盛んになるという事も研究でわかっているといいます。語彙が豊富になるのはもとより、内容を追い、描写を想像したりすることで、語彙をつかさどる以外の脳の部分も刺激され、たとえば、花の香りなどの事が書かれていると、嗅覚に関わる脳の部分も活発に動き始めるのだそうです。そんなこんなで、小説を毎日読むと、ボケにくくなる・・・黙読でも十分だけれど、本を音読すると、さらに、記憶力が良くなるそうです。という事は、子供や孫に、本を読み聞かせてあげるというのは、子供のためにはもちろん、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんの脳みそにも良い効果があるという事になります。 それから、一日30分本を読む人は、読まない人より、23か月、長く生きる・・・という研究の話が出たのですが、これに関しては、はっきりした理由はわからないと。どのくらいの規模の研究で、どういう人たちを対象に行ったのかなど、詳しい事は知らないので、その信ぴ

ガヴァネス(女家庭教師)

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前回のポストに書いた、ヘンリー・ジェームズの小説、「 ねじの回転 」の主人公は、住み込みの女性家庭教師でしたが、この職業は、英語で言うと「Governess ガヴァネス」。ビクトリア朝のイギリス小説、または、この時代のイギリスを舞台にした小説には、よくこのガヴァネスが登場します。一番有名なところで、シャーロット・ブロンテの「ジェーン・エア」(Jane Eyre 1847年出版)ですかね。 どういう人物が、このガヴァネスという仕事についたのか。中年のガヴァネスもいたものの、大体の場合が、教育のある中流の若い女性で、何かの事情で、家計が苦しくなり、外に出て金を稼ぐ必要があった人物。貴婦人(レイディー)が外に出て働くという事が、蔑視されていた時代、一般の召使、店の売り子などの労働階級の女性がするような仕事は、たとえ、貧しくても、やりたくもないでしょうし、やるわけにもいかない・・・彼女らが、多少の面目を保ちながら、できるのは、学校の教師、または、ガヴァネスだったわけです。 雇い主は、最初は、貴族、上流階級の家庭であったのが、徐々に富裕になって、財を成した中流家庭も、ステータスシンボルとして、上の階級をまねて、ガヴァネスを雇うようになっていった。教える子供の年齢は、女の子は、5歳から18歳くらいまでと幅があり、男の子は、大体が学校へ行くまでの年、8歳くらいまでであったようです。教える内容は、読み書きと計算などの、基本的なものから、子供のニーズと親の野心に合わせて、フランス語、イタリア語、数学、ピアノ、ダンス、水彩画などなど。良い結婚をするために、女性としての価値を上げるための、花嫁修業的な要素の、歩き方や身のこなしなんぞもあったようです。また、キリスト教的モラルを教えることも多少要求され。 勤め先の家庭で、寝起きを共にするガヴァネスですが、雇い主から見れば、一人の雇用人ですから、家族の一員として、同等の扱いを受けることは稀、横柄な態度で扱われる事はしばしば。一方、労働階級で、大体の場合はあまり教育のない他の召使とも、違う立場の人間であるため、時には、「同じ雇用人なのに、えらそうに。面倒かけやがって。」のように、反感を買う事もあったようです。要するに、上からも下からも、完全には受け入れられず、居住する館内で、心許せる人を探すのが難しい、精神的に隔離された存在であった。「ねじの回

ねじの回転

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怪談などを集まって語り合う・・・などという事は、日本では夏に多い・・・暑い夏の夜に、怖い話を聞いて、背中をヒヤッとさせる、というわけでしょうが。欧米で、お化け話の集いは夏というより、ハロウィーンあたりからの晩秋や冬のイメージが強いです。特に、イギリスの夏などは、10時ころまでほの明るかったりするので、お化けの登場できるような真っ暗な時間が短い、というのもある! 米作家(のち、英国籍取得)の、ヘンリー・ジェイムズ(Henry James 1843-1916)著の「The Turn of the Screw」(ねじの回転)も、こうした怪談話の会合が、暖炉を囲んで、クリスマスイブに開かれているところから始まります。参加者の一人のダグラスが、かつて自分の妹の家庭教師であったが、今は亡き女性の経験談の手記を、この集まりで読んで聞かせる。自分より、10歳年上であったというその女性は、自分だけに、彼女の昔の奇怪な経験を教えてくれたということ。その手記の内容がこの物語になっており、話は、主人公の女性家庭教師により、一人称で語られます。 ざっとしたあらすじは、 舞台はイギリス、田舎の子だくさんの牧師の家に育った主人公の女性は、エセックス州の田舎にある大きな館に住む幼い兄妹(マイルズとフローラ)の面倒を見る、住み込み家庭教師の職に応募する。雇い主は、兄妹のおじで、この二人の両親が死んだあと、面倒を見ることになったが、独身で、ロンドンでのプレイボーイ風生活を楽しみ、あちこち旅行も続けたい彼は、自分を一切煩わせることなく、いちいち自分に連絡を取ることもなく、全責任を負って、田舎にいる子供たちの世話してくれるような家庭教師を探しているという。主人公は、この美男で魅力的な雇い主に心惹かれ、淡い恋心まで抱き、いささか疑念を持ちながらも、職を引き受けてしまう。以前、家庭教師をしていた女性は、急死してしまったと聞かされる。 巨大な館には、古くからの家政婦のグロス夫人と、料理人、庭師などの、ごく少ない召使たちのみ。主人公は、愛らしい少女フローラに紹介され、瞬く間にこの少女を気に入る。兄のマイルズは、寄宿学校に入っているものの、休みのために間もなく戻ってくるが、その直前、学校側からの手紙で、理由は、はっきりと書かれていないものの、他の生徒への悪影響を考え、マイルズは、退校処分にするとの通知。マイルズのよ

イギリスの中世のお祭り(メディーバル・フェア)

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 毎年、このくらいの季節になると、近くの教会(上の絵右手後方)から、Mediaeval Fayre(メディーバル・フェア、中世の市・祭り)開催のお知らせのビラが届けられます。コロナ禍のため、去年、一昨年と、2年続きで、この中世フェアは催されていなかったのですが、今年はちゃんと、やりますよ、とうれしいお知らせ。 うちの町のメディーバル・フェアは、だいたいの場合が、6月後半の土曜日の午後で、教会の敷地内に、色々な屋台が立ち、ちょっとした余興が催され、2ポンドほどの低額の入場料を取りますが、売り上げは、教会建物のメンテ、修復作業費用などに回されます。14世紀に遡る教会なので、きちんとメンテしてもらって、ずっと立っていてほしい。 主催者たちや参加者は、中世風の衣装を着て、昔ながらのフェア(市)の雰囲気を盛り上げ。ちなみに、Fayreとは、 昔の英語のスペルで、Fair(市)の事。日本語の「いち・市」に当たる言葉に、フェア(Fair)とマーケット(Market)がありますが、その違いについては、以前の記事( バーソロミューの市 )に書きましたので、ここでは省略します。もっとも、この教会のある小さい丘は、昔はマーケットが開かれていた場所でもあります。 さて、このお知らせのビラには、いつも、屋台で売るための物の寄付を募り、それを回収に来る日時の知らせも書かれています。この回収日は、いつも、週日の6時過ぎで、大体の家庭が家に帰っている時間。この寄付のお願いの記述が、ちょっと面白いので、ここに書き写してみます。 まずビラの、最初の部分に、「このメディーバル・フェアは、教会の年中行事の中でも重要な資金調達のためのイベントでもあり、教会は、他の慈善団体同様、コロナ禍での寄付金の減少に悩まされていました。とはいえ、支援してくれる方々も、物価上昇に苦しんでいる今日この頃、販売品の値段は通常と同様にしたいと思っています。」と書かれてあり、屋台で販売するものの寄付を募る部分に、 Will you please donate a bottle of wine or pop or something? Please note that goods must be within their use-by-date. ワインや清涼飲料の寄付をお願いできますか?品物は、賞味期限が切れていないものをお願いし

プラチナ・ジュビリーのパーティーとビーコン

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近所のプラチナ・ジュビリー記念ビーコン(かがり火)  イギリスは、昨日6月2日から始まった、 エリザベス女王即位70周年 を記念するプラチナ・ジュビリー・ホリデーの真っただ中ですが、バッキンガム宮殿のみならず、各地の地方自治体が、色々な催しを行っており、昨日の午後は、我が家から歩いて1分とかからない小川のわきの緑地でも、ちょっとしたコンサートと野外パーティーが催されていました。 うちのお隣さんは、クラッシックカーを所有していて、なんでもクラッシックカーは特別に緑地内に駐車を許されていたらしく、他の2台のクラッシックカーと並べて駐車し、車の中から、コンサートを眺めていました。もうすでに、3時くらいから、音楽が聞こえていたのですが、私たちは、夕食を終わらせてから、腹ごなしもかねて、のこのこ覗きに行きました。お隣さんによると、もっと早い時間には、ちょっと太りすぎのエルビスのそっくりさんなども出てきていたそうで、見栄えはともかく、なかなか上手かったなどと言っていました。なんだ、前から知ってたら、エルビス見に行ったのに・・・。 屋台などもいくつか立ち、臨時トイレなどもあり。屋台の食べ物は、いい匂いはするものの、典型的イギリスのファーストフードで、不健康そうなものばかり売っていたので、こちらは冷やかしでのぞいただけ。コンサート舞台のそばで踊る人たちなどもおり、みんな、幸せそうでした。コロナ、ウクライナ、インフレ等々、暗いニュースばかりだったところへ、ぱーっと陽光が差した感じで。 私は、今の家に住んでもう20年以上たちますが、ここの緑地で、これほどの催しが開かれたのは、初めての経験です。即位70周年・・・これが女王のジュビリーの最後になるのでは、と思う人が多いせいか、地方自治体も力をいれたのかもしれません。うちのだんななどは、75周までは大丈夫じゃないか、などと言ってますが。でも、即位75周年記念の前に、女王は100歳に達するので、そうなると、100歳のバースデー祝賀の方が先に来ますね。 宮殿前の巨木インストレーションの点灯 夜の9時半ころには、バッキンガム宮殿前に備え付けられた巨大な木のインストレーションの点灯をはじめに、イングランド各地にあるビーコンに火がともされることになっており、うちでも、隣村に常設してあるビーコンまで車で行って見てこようか、などと話していたのですが、なん