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11月, 2016の投稿を表示しています

トゥルー・カラーズ

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昨日は、ぐっと気温が下がり、普段は歩いていると暑くなるロンドンの巷も、ズボンの下のおしりが冷える寒さでした。今年は、紅葉が比較的綺麗だったので、11月中に何度か、森林や、庭園を歩き、できる限り、秋の風景を楽しみましたが、それも終わりです。 紅葉と日本語では書くものの、モミジなどの少ないイギリスでは、黄葉とした方がよさそうな感じです。それでも、日差しが強い時などは、黄色の葉が金色に輝き、美しくはあります。 夏の間に、光合成を行うため、お日様の光を吸収する役割を果たすクロロフィル(葉緑素)の存在のおかげで、エネルギー製造工場である木の葉は、緑色をしているわけです。秋となり、日の光も乏しくなってくると、木は、葉に残っているできる限りの養分を取り込み、クロロフィルは分解して消えうせる。そして、葉の中に他に存在しており、夏季はクロロフィルの緑に隠され見えなかった、キサントフィル(Xanthophyll)カロチン(Carotene)などの黄色、オレンジ色の色素が現れてくる・・・。よって、紅葉は、クロロフィルの存在で見えなかった本当の色が、魔法の様に秋の風景を染めるという現象なのだそうです。また、ある種の木は、更に化学変化により、葉の中にアントシアニン(Anthocyanin)色素が登場し、赤や紫に変化。 英語で show one's true colours 本性を表す(直訳:自分の本当の色を見せる) というイディオムがあります。 この語源は、紅葉や木の葉とは関係が無く、昔、大海原を航海中の船が、お互いの国籍などを識別できるのは、マストに掲げた旗の色であった事に由来するそうです。海賊が、標的とした商船などと同じ色の旗を掲げて、相手を惑わし、接近してから、「この旗嘘だよ!実は俺たち海賊だー!」と本性を現して、お宝頂戴攻撃をかけた事からきたのです。黒地にどくろマークのトゥルー・カラーズは、最初は隠しておかないと。 潜在的に持っていた木の美しいトゥルー・カラーズ(本当の色)の只中を歩くのは、意気高揚する経験ですが、何かがきっかけで、人間のたてまえが崩れ落ち、そのトゥルー・カラーズが見えたとき、当然ですが、その色は人によりまちまち。今年、ポピュリズム政治の結果、西洋諸国あちこちで数々起こる事件の中で、目をそむけたくなるような、人の心に潜ん

チャタムのロイヤル・ドックヤード(チャタム工廠)観光

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チャタム・ドックヤード内の19世紀後半の艦船、HMS Gannet 先月、ケント州にある、 ロチェスター (Rochester)を訪れた時の話を書き、少々、間が空いてしまいましたが、本日は、それと同じ日に訪れた、ロチェスターの隣町のチャタム(Chatham)の事を書くことにします。 チャタムは、ロチェスター同様、チャールズ・ディケンズゆかりの地で、ディケンズが、幼少の頃に一時住んだ場所であり、彼にとって、子供時代の最高の思い出のある場所とされています。お金を湯水のように使ってしまうディケンズの父は、この後、チャタムからロンドンへ引っ越した後、ついに借金に首が回らなくなり、債務者監獄である マーシャルシー監獄 に投獄。このため、チャールズは、12歳にして一時学校を去り、悲惨な状況でテムズ川沿いの工場で働く・・・という羽目になりますから、それは、チャタムで、周辺を自由に走り回ったころの生活が夢のように感じた事でしょう。 ディケンズがチャタムに住んでいる時、父と、ロチェスター北部のハイアムにあるギャッツ・ヒルという屋敷の前を通りかかり、その時、父が、「一生懸命働けば、いつかこんな屋敷を買って住めるようになる。」と息子に言って聞かせ、その後、幼いディケンズは、幾度かわざわざチャタムから歩いて、この憧れの屋敷を見に行っていたのだそうです。ディケンズは、人生の後半の1856年に、この館が売りに出ているのに気づき購入、お気に入りの館となり、1870年、当館で息を引き取ることとなります。 などと、ディケンズの事をたくさん書きながら、私が今回チャタムを訪れた目的は、ディケンズの足跡を辿るためや、ちょっと子供だまし的なディケンズのテーマ・パーク、ディケンズ・ワールドを訪れるためではなく、チャタムに約400年間存在した、広大なロイヤル・ドックヤード(Royal Dockyard、チャタム工廠)を訪れるため。ここは、イギリス海軍の造船と船の修復を行ってきた、かなり大規模なドックヤードでしたが、いまは博物館となって一般公開されています。チャールズ・ディケンズの父は、イギリス海軍の事務を司っていたため、チャールズの生まれた、やはり軍港のポーツマスから、ケント州のシアネス、そして、チャタムへと転勤になり、ディケンズ一家は、一時的にここに住んでいた次第です。 さて、このチャ

まさかの世界

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え、冗談でしょ?まさかの世界に突入してしまいました。 イギリスのブレグジットも、アメリカのドナルド・トランプ勝利も、最初の予想が外れたのは、実際にブレグジットとドナルド・トランプに投票した人間の一部が、自分がどう投票するか、恥ずかしいから黙っていたか、嘘をついたためという話が出ています。両方とも、ブルーカラーの労働者が多く投票したという事になっていますが、郊外に住む比較的富裕な保守的壮老年層の支持も、かなり多かったという話。黙っていたのは、こういうタイプかもしれません。特にアメリカでは、本当に生活が大変な層では、ヒラリーに票を入れる人が多かったのだとかいう話も耳にしました。自分の子や孫のためにトランプに入れたなどとインタヴューで言う人もいましたが、それなら、地球温暖化を信じない人間に入れるでしょうか?たとえ、100%証明できなくても、念のため、温暖化対策をしておこうと思わないのかな? 世界の水準から行くと、ずっと豊かな社会でありながら、グローバル化の中、将来の自分の生活が良くなるより、悪くなるという危機感を感じた場合、「移民が悪い、他の国々が悪い。そいつらをブロックすれば、この国は栄える。」と非常に簡単な解決策を提案する人間を信じてしまうものでしょうか。西洋諸国の現政権が、移民対策に関することは、すべて、人種差別だと、タブーとして、冷静な話し合いにつながらず、代わりに移民の話題を極端に避けてきたのも原因のひとつなら、グローバル化は避けられないので、自国の国民自身がそれに対処し、変わる必要があるという事実をはっきり言わないのも、こうした結果につながっていったのでしょう。あとは、少数でも、汚職やスキャンダルを起こす政治家への不信感の蓄積。 世界が変わる中、自分が、そのまま、ずーっとやってきたことを続けるのは無理な話です。例えば、炭鉱夫なら、将来も、自分の子供もずーっと炭鉱で働き続けるんだ、というのも。そして、「そうだよ、ずーっとそのままでいいんだよ、悪いのは、あんたがやっていることを、もっと安く、または、効率よくやろうとする他国のせいだから、外を遮断すればいい・・・」と言ってくれる人に、アメリカは飛びついてしまった感じです。大昔、勢いをつけ始めた日本の自動車産業を目の敵としたアメリカ人が、野球のバットで日本車を殴っている姿を、テレビのニュースで見て、「こ

宇宙戦争

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No one would have believed in the last years of the nineteenth century that this world was being watched keenly and closely by intelligences greater than man's and yet as mortal as his own; that as men busied themselves about their various concerns they were scrutinised and studied, perhaps almost as narrowly as a man with a microscope might scrutinise the transient creatures that swarm and multiply in a drop of water. (...)  Yet across the gulf of space, minds that are to our minds as ours are to those of the beasts that perish, intellects vast and cool and unsympathetic, regarded this earth with envious eyes, and slowly and surely drew their plans against us. 19世紀も終わりに近づいた時代に、この世界が、人類より優れた知能をもちながら、人類と同様に有限の命をもった生体により、熱心、かつ入念に観察されていようとは、誰が想像し得たであろう。これらのものたちは、一滴の水に潜むはかない命の微生物が群れを成し、倍増するする様子を、顕微鏡により、詳細に観察するように、人類が、各人の都合で右往左往する姿を、事細かに観察し、研究していたのであった。(中略)空間を越えたかなたから、我々が自分の知能を絶滅した動物の知能と比較した場合の様な優越した知能、卓越し、そして、冷たく、同情を持たない知性が、この地球を羨望の目で見つめ、人類に対して、ゆっくりと、確実に計画を練っていたのであった。 1898年出版、H.G

ルーム

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秋風が吹き始めると共に、うちの旦那は、さっそく、どこぞから風邪菌をもらってきて、私もうつされてしまいました。計画していた外出もキャンセルとなり、ここ2,3日、ティッシュペーパーを絶えず抱えて、鼻ずるずる、咳こほこほ。数日だけでも、室内にこもりきりは、段々、耐えられなくなってくるのです、これが、何年も、小さな場所に閉じ込められたきりであったら、どんな事になるやら。考えただけで、気が狂いそうです。ということで、去年(2015年)公開になって話題を呼んでいた映画「ルーム」を、これを機会にお茶の間鑑賞しました。 何年も行方不明になっていた女の子が、ある日突然、なんの変哲もない郊外の家の庭におかれていた小屋や、民家の地下室に軟禁されていたのを発見され、家族と再会するる・・・などというニュースが時々あります。「ルーム」は、18歳の時に誘拐され、変な男(オールド・ニック)の家の庭にある、改造した小屋に閉じ込められ、7年もそこで過ごしたジョイと、そこで生まれた彼女の子供で、5歳になったばかりのジャックの物語。 2人がルームと呼び、住む小屋には、暗証番号を入れなければ開かない鍵がついており、脱出は難しく、窓もなく。外界が見えるのは、屋根についている小さな四角いスカイライトと、おんぼろテレビのみ。トイレもお風呂もベッドも、小さな台所、流しも、すべてこの小さな空間にあり、飲食料、その他必要なものは、オールド・ニックが夜、届けに来る。 最初から、ほぼ最後の方まで、こうした監禁生活の話かな、と思いきや、映画の中盤で、死体を装い、無事、小屋から担ぎ出された後、脱出したジャックのおかげで、警察がこの小屋を探し当て、母子ともども、自由の身となるのです。そして、後半は、新しい外の世界での生活に適応できずに落ち込むジョイと、徐々に外の世界を受け入れていくジャックの様子が描かれています。 ジョイがルームで、オールド・ニックの虜となっている間に、ジョイの両親は離婚。ジョイのお母さんは、別の、優しそうな彼、レオと一緒に、昔の家に住んでおり、救出されたジャックとジョイは、そこに同居。本当のジョイのお父さんは、犯罪者、オールド・ニックの子供であるジャックを孫として受け入れられず、話しかけることはおろか、面と向かって見ることもできない始末。 ジョイは、失われた青春の7年間を嘆くとともに、ル