スノーマンと空を歩く

 スノーマン(The Snowman)。原作は1978年、英国絵本作家、レイモンド・ブリッグズ(Raymond Briggs)によるものです。

1982年に、約30分の短編テレビアニメ映画となり、当時新設のテレビ局、チャネル4で放送されました。以来、クリスマス期には必ず、テレビ放映されます。

少年が、家の前に作った雪だるまと、仲良くなり、共に遊び、空を飛んで、サンタとたくさんの雪だるまが住む北極へ遊びに出かける・・・ただそれだけの一晩の思い出の話ですが、何度見ても、いまだに、朝になって、スノーマンが溶けて無くなってしまっているラストシーンにはほろりとさせられます。原作の絵本では、スノーマンと少年の冒険は、ブライトンまで遊びに行ってもどってくるのみで、海を渡ったり、サンタと会ったりはアニメだけの話。当初、レイモンド・ブリッグズは、この多少の変更に難色を示したようですが、完成作品を見て満足したとのこと。

2007年は初放映から25周年ということで、作家のブリッグズ氏のインタヴューなどを見ました。ハリウッドから、リメークの話がかかったのを断ったという逸話を語っていました。作品の持つ素朴さが失われるのが嫌だったのでしょうか。

確かに、「不思議な国のアリス」「くまのプーさん」なども、ディズニーのものは、自然素材で作ってある原作がプラスチック製に変えられてしまったような感覚があります。アメリカ文化に対する、驕った優越態度、なんて言ってしまえばそれまでですが。

このアニメの北極にむかう飛行シーンに「Walking in the air」(ウォーキング・イン・ジ・エア)という美しい歌が使われています。今や、「ウォーキング・イン・ジ・エア」は、この国では、冬季、特にクリスマスシーズンにはあちこちで耳にする、定番です。作曲は英国音楽家、ハワード・ブレーク(Howard Blake)。彼も、やはりインタヴューで「ラストシーンは、何度見ても泣かしてくれる」という事を言ってました。

白い息を吐き、霜を踏みながらの、冬の日の散歩には、必ずといっていいほど、口ずさんでしまいます。出だしの歌詞は、

We're walking in the air
We're floating in the moonlit sky
The people far below are sleeping as we fly・・・

僕らは空を歩く
僕らは月に照らされた空を漂う
僕らが飛ぶうち、地上で人々は眠り・・・

スノーマンの飛行場面を歌を聴きながら見てみよう。イギリスの田舎の雪景色の上を飛び、ブライトンのパビリオンを下に眺め、海岸の白い崖を離れて、海を越え、北へと飛んでいく。

ウォーキング・イン・ジ・エアの残りの英語の歌詞は以下の通り。訳はしませんので、悪しからず。

I'm holding very tight
I'm riding in the midnight blue
I'm finding I can fly so high above with you

Far across the world
The villages go by like dreams
The rivers and the hills
The forests and the streams

Children gaze open mouth
Taken by surprise
Nobody down below believes their eyes

We're surffing in the air
We're swimming in the frozen sky
We're drifting over icy
Mountain floating by

Suddenly swooping low on an ocean deep
Arousing of a mighty monster from its sleep

We're walking in the air
We're floating in the midnight sky
And everyone who sees us greets us as we fly

雪だるまというのは、幼少期の冬をなつかしく思い起こさせるものです。

古いアルバムから掘り起こしたこんな写真を、2,3年前にクリスマスカードにして送ったところ、「昔、自分も父親とこんな雪だるま作った。なつかしい。」などと言う人が何人かいました。

いつかどこかでクリスマス
パパと私と雪だるま

雪だるまは溶け
パパは逝き
思い出静かに降り積もる

いつかどこかでクリスマス
パパと私と雪だるま

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