「子猫のトムに会いに」湖水地方今と昔

イギリスはカンブリア州、レイク・ディストリクト(湖水地方)。その湖水地方の湖のひとつ、ウィンダミア湖西岸の小さな村、ニア・ソーリー(Near Sawrey)にあるヒル・トップ(Hill Top)は、ピーター・ラビット作家、ビアトリクス・ポターの家として有名です。

前回ここを訪れたのは、4、5年前の、この季節でした。最初に訪れたのは、はるか昔の、イギリスに来たばかりの頃の話で、なつかしさがいっぱいで辿り着くと、なんと家の内部は閉館日。しかも、家の正面は修繕工事用の足場が組まれていていました。

庭だけは開放してあったので、庭と周辺をふらっと歩き、のどかな風景にそれなりに満足しました。人があまりいなかった分、かえって、静かで雰囲気を味わえたのもあります。(これは、ただの負け惜しみか?)

1907年、ポターさんが、「こねこのトムのおはなし」(The Tale of Tom Kitten)を書いた時には、すでにこのヒル・トップを購入して1年が経過していました。

家のドアから公道へと続く、小さな細長いコテージ・ガーデン作りに励みながら書いた本だといいます。上のイラストで、トムがお母さんに引っ張られ歩いた小道のあるガーデン。ガーデンの柵のすぐむこうには羊が草食む草原が広がり。


猫のタビタ・トゥイッチット奥様が、3匹のわんぱく子ねこ、トム、ミトンズ、モペットと共に住んだ設定になっている家のモデルは間違いなくこのヒル・トップ。

お客様が来るというので、子供たちに上等な服を着せたタビタ奥様。「後ろ足で歩くよう、汚いところに行かないよう」とお母さんに言われながらも、3匹の子猫が転がりまわる庭の様子、石塀によじ登って眺めるソーリー村の景色は、ポターさんの願いのまま、今も昔も変わらない。

家の内部の様子もいくつも描かれているこの「こねこのトムのおはなし」と、やはりこの猫達が再度登場し、トムが、巨大ラット(ねずみ)のサムエルとその妻アナ・マライアに捕まって、猫まき団子にされかける「ひげのサムエルのおはなし」の2冊は、ヒル・トップを訪れる際、持参して、挿絵と実物を見比べると楽しいかもしれません。

ポターさん、後年こんな事を言っています。「道端で出会う自然で素朴な喜びを、世の子供たちが味わい楽しむことができる事に、私が少しでも貢献したのだとしたら、ちょっとでも良い事をしたのかなと思います。」

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湖水地方というと湖のイメージが強いですが、600~900メーターの丘があちこちに点在し、丘登り、谷めぐりも良い場所です。南部のウィンダミア湖を見るだけでは、惜しいです。

更に北上し、詩人ワーズワースゆかりのグラスミアを通り、数ある湖の中でもっとも美しいと言われるダーウェント湖のほとりのケズウィックあたりに泊まって、数日、ハイキングをするのも良いかもしれません。

時間が無ければ、レンタ・カーで国立公園全体をゆっくり一周してみるか。

「ティギーおばさんのおはなし」」(The Tale of Mrs. Tiggy-Winkle)で、少女ルーシーが、失くしたハンカチを探して歩き回る、雄大な風景にめぐり合えます。はるか昔、氷河に削られてできた、U字型の谷。

尚、この地域で、湖は、ウィンダミア(Windermere)のように「ミア、mere」で終わるか、ダーウェント湖(Derwent Water)のようにLakeではなく「ウォーター、Water」が後ろにつきます。「フェル、Fell」という言葉を聞いたら、それは丘のことです。

Lake District Guideで、湖水地方の情報と地図、写真が見れます。


*寄り道*
ケズウィックのそばに鉛筆博物館なるものがあります。1832年からこの地で鉛筆を作っているカンバーランド・ペンシル・カンパニー所有のもの。

1500年初め、この辺りで、鉛筆の芯の原料、グラファイト(黒鉛)が発掘され、初めは、羊にマークをつけるのに使用。のち、中世ヨーロッパ大陸の芸術家達の需要を満たすため輸出されていたという話。

展示の目玉は、世界最長だというジャンボ鉛筆。そのミサイルのような姿を本の写真で見て、次回行ったときには覗いてみようと思っています

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