ハムステッドのフェントン・ハウス

ハムステッドは、ロンドン北部に位置する高級住宅地。金融のシティや、ショッピングのウェストエンドへ出るのにも便利でありながら、すぐ側に、広大な丘の上の緑地帯ハムステッド・ヒースが広がり、田舎の雰囲気も味わえます。

鉄分を含んだこの地の井戸水が、身体に良いなどと言う噂も手伝って、すでに17世紀から、人気が出始め、18世紀には、中流階級富裕層が好んで住む土地としての地位を確立。詩人キーツ、画家コンスタブル等の芸術家、精神科学者フロイトも住んだ場所です。

そんなハムステッドの一角に、フェントン・ハウスという屋敷があります。
17世紀中に作られ、1952年にナショナル・トラストに寄贈されるまで、弁護士、商人、貿易商、エンジニアなどの所有者とその家族が移り住んだ屋敷。

フェントン・ハウスの名は、19世紀前半にこの館に住んだバルト海貿易商、ジェームス・フェントンの名から来ています。フェントン家は、催し物や、ディナー・パーティーをよく開き、週一回のダンス・レッスンなどもこの家で開き、近所の人々なども誘い、当時のハムステッドの社交に貢献したようです。また、彼は、ハムステッド・ヒース土地開発の話が持ち上がった際も、反対キャンペーン運動に参加。ヒースは後、1871年に、無事、リクリエーションの場所として公共の手に渡り、開発をまぬがれます。

高級住宅街というのは、大体高台にあり、周囲を「おほほん」と見下ろしているものですが、この屋敷の窓からも、ロンドンが遠くまで見渡せ、現在経済危機に大騒ぎのシティの建物なども空を背景にくっきり浮かんで見えました。

建物よりも、フェントン・ハウスは、ガーデンが良かったです。

高いレンガの塀に四方をしっかり囲まれた庭は、1982年から、約10年がかりで、ナショナル・トラストの手で現在の姿に作り直されています。スタイルは17世紀の「オールド・イングリッシュ」風を、少しやわらかくしたものだそう。

庭の中心は、サンクン・ガーデン(沈んだ庭園)で、レンガの壁の脇の小道より、少し下に掘り込まれたところにあります。風の強い日なども、きれいに刈り込まれた生垣を背に、花の間のベンチに腰を下ろして、気持ちよく時を過ごす事ができるでしょう。まるで、秘密の花園

花園のむこう側には、小さなコテージとキッチン・ガーデンがあり、リンゴの木、梨の木などの果物の他に野菜も植えられていました。少々、雑然と植えられた感じが素朴でした。

そばには大きな温室も設えられ

屋敷に続く緑の芝生の部分は、以前は、テニスをするのに使用されていたと言います。屋敷の奥様は、テラスでお茶を飲みながら、ゲストが芝の上でテニスに興じるのを眺めたりしたのでしょうか。

もし、一攫千金手に入ったら、私は、こんな庭のある家に住みたいです。お掃除が大変だし、泥棒に入られるのも嫌なので、家は小さめでもいいですが。・・・いや、もっと現実的に考えて、住み込みの庭師としてこういう所で働く、というパターンの方がいいかもしれません。少なくとも、泥棒の心配などしなくて良さそうだし。

Fenton House, Hampstead (National Trust)

コメント