イックワースはみやげの為に建てた家

サフォーク州にある、イックワース(Ickworth)という、こんなイタリア風丸いロトンダのある貴族の屋敷とその敷地を訪問しました。歴史的建築物や保護を必要とする自然区域を管理するチャリティー団体、ナショナル・トラスト所有です。

18世紀後半、中世からこの敷地を所有していたハービー家の、フレデリック・ハービーが、住むためと言うより、イタリア旅行で集めた数々の芸術作品を飾るショーケース用に作り始めたもので、まさに金持ちの道楽。変わり者であったというフレデリックの気まぐれにうんざりされていた奥さんからは「馬鹿げた大散財」となじられる。

当時イギリスでは、古代ヨーロッパ文化及び、ルネサンスの芸術がもてはやされ、貴族は競って「グランド・ツアー」(Grand Tour)と呼ばれた、イタリアを主としたヨーロッパ大陸への開眼の旅にお出かけ。現地で古い彫刻等の芸術品をお買い物して来るのが一大トレンドとなっていました。そうして持ち帰った芸術品をそれに似合う様な大邸宅に飾って見せびらかす。現代の私たちがおみやげをささやかに棚に飾るのとは大した違いです。
ところが、予定は未定にして確定にあらず。というのも、フレデリックがイタリアで集めまくったコレクションが、英国へ送られる前に、1798年、ローマに侵入して来たナポレオンの軍により没収されてしまう。

フレデリックは、1803年にイタリアで亡くなるまでの間、必死で没収されたコレクションの回収を試みますが、甲斐も無く。このコレクションは1804年にオークションで、あちこちに売り払われてしまったそうです。あーあ。

イックワースの屋敷は、フレデリックの息子によって完成されますが、もはや飾るものがなくなったので、ロトンダを挟んだ建物の東翼を家族が住めるように一部設計を変更したそうです。西翼は、ただ単に、左右対称になるようにと、これと言った用途もなく作ったそうで、今はナショナル・トラストのレストランとお店が入っています。

現在、屋敷は、歴代のハービー家が集めた家具や骨董品、ティチアーノ、ベラスケスを含む絵画を飾ってあり一般公開。東翼はホテルとなっていました。

家のすぐ回りはフォーマルなイタリア風ガーデン。

そしてその向こうには、羊があちこちで草を食み横たわる広大な敷地が広がっています。小さなぶどう園もありました。くるりと大回りして約11.2キロ。約半周しても十分な運動でした。

歩いた後は、レストランへ直行。ナショナル・トラストのレストランは、地元で入手した、いわゆるカーボン・フットプリントの低い、季節の素材を使った料理を心がけているそうで、味もなかなか。私はゴート・チーズと野菜のラザニエ、主人はソーセージとマッシュ。飲み物はエルダー・フラワー・プレス。

過去は道楽貴族の館でも、ナショナル・トラストの管下にある限り、この敷地が土地開発に持っていかれ、醜い建物乱立し、緑が消える事も無い・・・それだけでも良かったかなと。

Ickworth House,Park and Gardens
Bury St Edmunds, Suffolk
(National Trust)

コメント

  1. 新婚らぶらぶ^^2009/05/19 13:41:00

    こんにちわ^^
    いつも楽しみに読んでいます。今日は、アンティークフェアに行ってきました。最近、顔なじみが増えましたので、あちこちでひっかかって、お話していたら、夕方までかかちゃいました^^来週からロンドンに行くのよ~という人にも会って、ただ、ただうらやましい気持ちでいっぱいです。みにさんも日本のディーラー相手に輸出業なさればいいのに・・私の夢はそれです。教会のバザーとかを歩いて仕入れて日本に送って、お金持ちになる!!
    その時には、チェルシーに家でも買って、トヨタのハイブリッド車にでも乗って、奥を喜ばせてあげたいです^^
    できるかな~??がんばらなきゃ^^

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  2. らぶさん、
    読んで下さって感謝。5月中に、SLの過去の記事を全て移し終わるつもりでいたのに、このペースでは無理かも・・・。

    私はアンティーク見る目まったく無いので、教会のバザーで、価値の無いもの高く買って、買った値段以下で売る羽目になり、大損・・・なんて事になりそうです。
    ロンドンの家の値段、下がっているとは言え、チェルシーに家買うには、ロシアの富豪並みのお金を稼がないと。トヨタハイブリッド車は大丈夫でしょうが。家はロンドン郊外で妥協しましょうよ。

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