旅するガーデン・ノーム

ジャン・ピエール・ジュネ監督の2001年のフランス映画、「アメリ」は大きな瓶詰めのゼリービーンズの様でした。鮮やかな色彩と、お洒落なパリの風景、主人公アメリのファッション、アップ・ビートな物語は、童心に返らされ、目に美しく、心楽しく。

 学校へ行かず、家庭で教育を受けて育った内気で夢見がちのアメリが、パリのカフェで働きながら、陰で周りの人間を幸せにしようとする中、自分も恋する男性を見つけ、何とかアプローチしようとするのですが、臆病風を吹かせてしまい・・・。

そんなアメリへの、同じアパートに住む風変わりな老人からの忠告は、
「心はガラス細工じゃないから、人生の多少の波風には耐えられるようにできてるんだ。このチャンスを逃すと、お前さんの心は、やがて、この老人の骸骨のように乾いてパサパサになってしまうぞ。だから、ほら、行って彼を捕まえるんだ!」
この映画の小さなエピソードとして出てくる、旅するガーデン・ノーム(庭に置く小人の妖精の人形)の話も、愉快で好きです。

やもめになって一人で隠居生活を送る父に、今まで行く機会が無かった世界旅行をしてみたら、と薦めるアメリ。それでも、父は、考えるだけで、なかなか重い腰が上がらない。そこで、アメリは父の庭からガーデン・ノームを盗み、スチュワーデスの知人にそれを託す。彼女は、行った先々の海外のあらゆる場所で、ノームの記念写真を取り、それをアメリの父親へエア・メールで送る。

自分のノームが海外旅行をし、様々な場所から送ってくる記念写真に、びっくりしながらも、旅行欲が刺激される父。ノームから送られてくる写真に写るのは、モスクワ、ニューヨーク、イスタンブール、挙句の果てにはアンコールワット!そして、ある日、ノームが庭に戻ってくると、父は、今度は自分がトランクを詰めて旅にでる。

原題:Le Fabuleux Destin d'Amélie Poulain
監督:Jean-Pierre Jeunet
言語:フランス語
2001年

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イギリスでも、同じ様に、ガーデンノームが海外旅行をする事件が起こり、ニュースになった事もあります。

前庭に置いてあったノームがある日、無くなってしまい、盗まれたものと思っていた某ご婦人。しばらく経ったある日、ドアを開けると、ノームが戻され、その下に一冊のアルバムが。アルバムの中には、ノームの海外旅行の記念写真がいっぱい貼ってあったと言う事です。誰かがいたずらで、海外旅行にノーム氏を連れて行ったのでしょうが、この手のいたずらは、されても楽しいです。

(少々、話がずれますが、同じ通りの住人は、前庭に、小さなアヒルの置物を飾っていましたが、ある日盗まれ、代わりに同じ場所に、生卵が3つ置かれてあったそうです。)

フランスには、「ガーデン・ノーム開放前線」と称する妙な団体があるそうです。ガーデン・ノームをノームの本来の住処である森の中へ開放しようというのが目的。郊外の庭からノームを盗んでは、森に置いて行くというのですが、暇ですね。メンバーは他のヨーロッパ諸国にもいるのだそうです。

旅するノームに対抗して、リックを背負い、近くても遠くても、未知の地へ踏み出してみましょうか。

*なお、イギリスにおけるガーデンノームの歴史については、別の記事の後半部をご参照ください。こちらまで。

コメント

  1. (⌒∇⌒)楽しいお話ですね
    旅するノーム… ウィットがあって、なんだかすてき♪

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    1. 庭にガーデンノームがちょこんと立っているのを見、人が知らない間にどこぞを探検してるかも、と想像するだけで、微笑ましいです。

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