イギリスの白鳥達

小川の傍らで羽繕いをしていた白鳥の親子。

子育て時期の白鳥は、なかなか凶暴で、こちらがあまり接近しすぎると、翼を広げて「それ以上、近寄るな」とばかりに、「しゅーーーー!」と蛇の様な音を立てて脅かされてしまいます。

イギリスのほぼ全域で、一年中見られる白鳥は、このMute Swan(コブハクチョウ)と呼ばれるものです。くちばしはオレンジ色、首は優雅にS字をして。この国で一番重い鳥だそうで、空に飛びたつには、エンジンをかける様に、ばたばたと何度か威勢よく羽ばたきして、水面を足で蹴りながら滑走してから。

寿命は40歳くらいまで生きるものもいるようですが、多くは4歳に満たないうちに死ぬという事。この白鳥の親子がいた直ぐ脇は、ゴルフ場だったのですが、ゴルフのプレイを一時停止して、白鳥の親子を眺めていた人が、先日、きつねが白鳥の子を口にくわえているのを見たと言ってました。こんな、のんびりしている様に見えても、自然界で生き延びるのは大変なのです。

白鳥カップルは、一生の伴侶となるケースが多いそうです。

食べ物は、基本的にベジですので、主に水草。公園などで、パンを与える人が多いのですが、野菜くずなどを、水に放ってやる方が良いのだそうです。
 中世の時代は、白鳥の肉は有難がられ、王と一部貴族のみが食せる贅沢品。そのため、昔から、「王の鳥(Birds Royal)」のイメージが定着。まあ、大型の鴨かあひるの様なものですから、食べると、確かに美味しいのだろうな、とは思います。

この貴重な鳥を、いつでも晩餐の食卓に支障なくあげることが出来るよう、王から許可を受けた業者のみが、白鳥の所有及び保護管理をする権利を与えられ、それぞれの管理する白鳥のくちばしにマークをつけてきた・・・。

その名残の行事が、毎年7月第3月曜日から5日間、テムズ川で行われる、Swan Uppingです。今年は、明日、20日の月曜日から始まるようです。現在では、白鳥を食べるなど、もっての他ですので、このSwan Uppingは、テムズにいる白鳥の保護とその健康状態のチェックが目的。

15世紀に、王から白鳥を所有する特権を与えられ、今でもこの伝統を続けているVinters(ヴィントナーズ)社とDyers(ダイヤーズ)社の2社を代表するボートと、女王を代表するボートが、5日間に渡って、テムズを漕いで、白鳥とその子供達の数を数え、怪我をしていないかチェック、体重などを計ったりした後、足にIDリングをつけて、再び解き放つ。マークのついていないイギリスの白鳥は全て、女王のものとされています。

ちなみに、ヴィントナーズとダイヤーズは、中世からシティー・オブ・ロンドンに存在したリヴァリカンパニーと呼ばれるギルド(商業組合)の類で、前者はワイン業者、後者は染物業者の組合です。白鳥とはあまり関係なさそうな商売なんですけどね。

昔から、許可無しに一般庶民が白鳥を捕まえ殺したりすると、犯罪者として捕らえられ、ひどい時では、数年間の強制労働などさせられたりしていたようですが、現在でも、白鳥を、保護管理の目的以外で、捕まえたり、故意に傷つけたり、またその巣を荒らす、卵を盗むなどの行為は違法とされています。

さて、このコブハクチョウの他に、冬越しに、シベリアからBewick's Swan(コハクチョウ)とアイスランドからWhooper Swan(オオハクチョウ)もやって来ます。こちらは、両方ともくちばしが黄色。首は、まっすぐにつき立てています。

イギリスの白鳥のイメージは、やはり、こうして優雅に首をS字にし、すいすいと泳ぐコブハクチョウの姿です。

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