探偵の誕生
推理小説は大ファンと言うわけではありませんが、読み出すとはまる方です。
世界最初の架空の探偵は、1841年出版のエドガー・アラン・ポー作「モルグ街の殺人」(The Murders in the rue Morgue)に登場するオーギュスト・デュパン(Auguste Dupin)。そしてその翌年に、英語圏内では一番初めのプロの探偵たちがロンドン・メトロポリタン・ポリスによって任命される。この8人の初代探偵たちのうちの一人に、ジョナサン・ウィッチャー氏がいました。
数日間は地元の人員で捜査が行われたものの、らちがあかず、ロンドンのスコットランド・ヤードから、上記ジョナサン・ウィッチャー氏が事件の解決に送り込まれる。
このロード・ヒル・ハウス事件は、当時の大ニュースとなったようで、一般庶民はもちろん、ディケンズなどの作家までがにわか探偵と化し、自分達の推理を展開し、世間は一大探偵ブーム。自分の推理を手紙でスコットランド・ヤードや内務省、新聞社等に送る人間も多く出てくる始末。
そんな探偵ブームとは裏腹に、殺人事件の捜査により、外見は平常を装いながらも、問題を抱えるヴィクトリア朝中流家庭の内幕が公衆の面前にさらされる事になり、ウィッチャー氏を、徐々に、家庭の秘密を暴く悪魔の様に報道するメディアも出てきたようです。ことわざにあるとおり「イギリス人の家は彼の城」そこに土足で上がりこむ人間に対する嫌悪と、また、当時の探偵や警察官は労働者階級出身であったため、階級からくる偏見も手伝い。
さて、館の背後にどんな秘密が隠れていたかと言うと・・・
作家達が生きた時代に、見たもの、聞いたもの、当時の話題が、その作品に表れる、というのは当然と言えば当然ですが、時代の背景を教えてくれるようなこういう本は、他の同時代小説を読む時にも背景理解に役に立ち、重宝です。
「物を好きになっている時間なんぞないが、もし好きな事をする時間があれば、ほとんどの時間をバラに費やすだろう。父の庭の中で人生が始まったように、できれば庭の中で人生を終えたいものだ。そう、そのうちに(神よ、願わくば)こそどろを捕まえる事から引退し、バラを育ててみたいものだ。」
こういうところは、非常にイギリス的ではあります。うちの前庭でも、今、バラが満開です。
世界最初の架空の探偵は、1841年出版のエドガー・アラン・ポー作「モルグ街の殺人」(The Murders in the rue Morgue)に登場するオーギュスト・デュパン(Auguste Dupin)。そしてその翌年に、英語圏内では一番初めのプロの探偵たちがロンドン・メトロポリタン・ポリスによって任命される。この8人の初代探偵たちのうちの一人に、ジョナサン・ウィッチャー氏がいました。
「ウィッチャー氏の疑惑またはロード・ヒル・ハウス殺人事件」(The Suspicions of Mr Whicher or The Murder at Road Hill House)という題名のこの本、1860年、中流家庭の屋敷、ロード・ヒル・ハウスで実際に起こった殺人事件を追った話です。一部ミステリー、一部雑学物、一部社会風俗史。この手の本は大好きです。
ケント家が住むウィルトシャー州の田舎の館ロード・ヒル・ハウスで、家長のサミュエル・ケント氏の末子が無残に殺される。館は殺人のあった晩、内側から鍵がかかっており・・・。
数日間は地元の人員で捜査が行われたものの、らちがあかず、ロンドンのスコットランド・ヤードから、上記ジョナサン・ウィッチャー氏が事件の解決に送り込まれる。
このロード・ヒル・ハウス事件は、当時の大ニュースとなったようで、一般庶民はもちろん、ディケンズなどの作家までがにわか探偵と化し、自分達の推理を展開し、世間は一大探偵ブーム。自分の推理を手紙でスコットランド・ヤードや内務省、新聞社等に送る人間も多く出てくる始末。
そんな探偵ブームとは裏腹に、殺人事件の捜査により、外見は平常を装いながらも、問題を抱えるヴィクトリア朝中流家庭の内幕が公衆の面前にさらされる事になり、ウィッチャー氏を、徐々に、家庭の秘密を暴く悪魔の様に報道するメディアも出てきたようです。ことわざにあるとおり「イギリス人の家は彼の城」そこに土足で上がりこむ人間に対する嫌悪と、また、当時の探偵や警察官は労働者階級出身であったため、階級からくる偏見も手伝い。
さて、館の背後にどんな秘密が隠れていたかと言うと・・・
この館に移り住む以前、家長のサミュエル・ケント氏の一番目の妻は、精神異常をきたしてしまったため、氏は住み込みで子供達の教育をみていた女性メアリーと関係を持ち始める。1848年には、妻の狂気は更に悪化し、家庭のやりくりはすべてメアリーに任せられ。折りしも、その前年に、ケント家の事情と、そっくりな筋立てのシャーロット・ブロンテの「ジェーン・エア」が出版されたばかり!ケント家は近所でのゴシップを逃れるため、住んでいたデボン州の館から幾度か引っ越し。妻の死後、ケント氏はメアリーと再婚し、ロード・ヒル・ハウスに引っ越します。
殺人事件当時、ロード・ヒル・ハウスに住んでいたのは、第一婦人との間の子供達4人と、ケント氏、第二婦人、第二婦人の子供3人(うち末子が殺害される)、住み込みの召使達。第一婦人の子供達は、第二夫人により差別的扱いを受けていた。
当事件は、文学にも影響を与え、ディケンズの未完の最終作「エドウィン・ドルードの謎」(The Mystery of Edwin Drood)には、この殺人事件の要素が一部取り込まれているという事。また、T.S.エリオットによると「イギリス最初のそして最高の推理小説」とされる、ウィルキー・コリンズ作「月長石」(The Moonstone)に登場する探偵カフは、ウィッチャー氏からインスピレーションを得たといいます。そしてやはり、ロード・ヒル・ハウス事件からアイデアを得た要素もところどころ入っているそうです。
作家達が生きた時代に、見たもの、聞いたもの、当時の話題が、その作品に表れる、というのは当然と言えば当然ですが、時代の背景を教えてくれるようなこういう本は、他の同時代小説を読む時にも背景理解に役に立ち、重宝です。
という事で、「月長石」を買いました。「イギリス最初で最高の推理小説」をそのうち読んでみます。
ウィッチャー氏の父親は庭師であり、氏も庭や植物に対する愛情は終始持ち合わせていたようです。「月長石」の探偵カフも、同様に、父親が庭師だったという設定で、こよなく庭とバラを愛していたとか。
小説内での探偵カフいわく
「物を好きになっている時間なんぞないが、もし好きな事をする時間があれば、ほとんどの時間をバラに費やすだろう。父の庭の中で人生が始まったように、できれば庭の中で人生を終えたいものだ。そう、そのうちに(神よ、願わくば)こそどろを捕まえる事から引退し、バラを育ててみたいものだ。」
こういうところは、非常にイギリス的ではあります。うちの前庭でも、今、バラが満開です。
中学生時代、親しかった友人の影響で推理小説を沢山読みました。
返信削除月長石も読んだような気がするのですが、中身は忘れてしまいました。
もとになった事件、設定が本当に「ジェーン・エア」によく似ていますね。
面白そう。ウィッチャー氏は犯人を特定できたのでしょうか。
ウィッチャー氏、犯人を当てたのですが、最初は証拠不十分で、そのまま、すごすごロンドンへ帰る事になり。後になってから、この本人が自首。刑務所暮らしを済ました後、この人物、オーストラリアへ移住します。
返信削除ジェーン・エア風のスキャンダルなども、ぽつぽつ実際あったのかもしれないですね、この時代。小説が事実をまねるのか、事実が小説をまねるのか。