ばら戦争を見下ろした時計塔

 セント・オールバンス(St Albans)の時計塔(Clock Tower)は15世紀に建てられ、イングランドに残る唯一の中世の町の鐘楼。

塔の高さは19.6メートル、壁の厚さは鐘を鳴らす衝撃に耐えられるよう、なんと1.22メートル。当時、ロンドンのビッグ・ベンがある辺りに立っていたウェストミンスター宮殿の時計塔がモデル(こちらは、1697年に破壊)。

1トンの重さの、オリジナルの鐘は、天使ガブリエルにちなんでガブリエルと名づけられ、まだ内部に納まっています。鐘にはラテン語で、「我は天より来たり、我が名はガブリエル」と掘られてあります。

塔は、近くにあったセント・オールバンズ修道院(現セント・オールバンズ大聖堂)に対抗し、町民達の自由と富の象徴の意味があったようです。時計は、この頃、非常にめづらしく、高価なものであったけれど、修道院にすでに時計があったため、町民達も負けじと、この塔に時計を設置。
ただし、中世の時計は、全く時間の正確さがあてにならず、18世紀には、別のものに取り替えられています。現在の時計は1866年のもの。

セント・オールバンズは、ランカスター家とヨーク家の勢力争い、ばら戦争の戦闘の幕が切って落とされた場所でもあります。

この、1455年5月22日の第1回セント・オールバンズの戦いの際にも、ガブリエルが鳴らされたと言われます。戦闘は、ヨーク家のリチャードと彼に組したウォリック伯の勝利に終わり、ランカスター家ヘンリー6世は、捕われの身に。

週末は、塔の内部を登って、上からセント・オールバンズの町並みを見下ろせるそうです。

幸い、今は、町のマーケット・プレイスを行くのは、のんびりした風情の買い物客や子供連れで、血まみれの剣を振りかざすヨーク家とランカスター家の兵士達ではありません。

コメント

  1. 「薔薇戦争」聞いたことがある・・・。
    Wikiで調べてみました。
    百年戦争、ヘンリー6世、マーガレット・オブ・アンジュー etc.
    覚えられそうにもないけれど勉強になります。それにしても、ヘンリーやリチャードの数が多すぎます。^^

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  2. ばら戦争、何度おさらいしても、時間が経つと、忘れる部分も出てきて。いとこ戦争なんて言われる様、子孫が多すぎたエドワード3世の末裔達(ヨーク家とランカスター家)の間のお家騒動なのですが。広義の意味ではエドワードの孫のリチャード2世の時代に始まると言われます。シェイクスピアの一連のばら戦争ものの戯曲が頭に浮かびます。

    一般人では、ジョンがやっぱり多い気がします。

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