パンズ・ラビリンス

1944年、フランコ将軍政権下、内戦(1936-1939年)の傷跡残るスペインを舞台にしたの映画。題名のパンは食パンではなく、ギリシャ神話に出てくる半人半獣のパン神。

主人公は、少女オフェリア。父親は内戦中に死亡。母親は、フランコ下のサデスティックな指揮官ヴィダルと再婚。ヴィダルの子を身ごもっています。ヴィダルは反フランコのレジスタンス一掃のために、森の中の司令部にとどまっていますが、映画は、オフェリアと母が、この司令部に移るところから始まります。

彼らが生活する家の家政婦メルセデスと、出入りする医師はレジスタンスの一味で、背後で、レジスタンスの活動を手伝っていますが、残忍なヴィダルの元での、このような活動は、ばれたら終りの命がけ。見ていてはらはら。顔をそらしたくなる場面もいくつかあります。捕らえたレジスタンスの一人を、ヴィダルが拷問にかける場面が特につらかった。顔を覆い、「うぎゃー。」とうめいてしまいます。

こんな現実を背景に、物語のもうひとつの筋は、オフェリアのファンタジーの世界。ラビリンス(迷宮)に迷い込んだオフェリアは、そこであったパンに、自分は迷宮のプリンセスであるかもしれない、と告げられ、それを証明するために、3つの課題を渡されます。

ファンタジーの世界での圧巻は、何と言っても、上の絵の、手のひらに目玉がある、子供を食べるモンスター。フェアリーを捕まえて、むしゃむしゃっと食べるこのおばけが、私の後を追いかけてきたら、一体どうしてくれよう。このシーンをUチューブで見てみましょう

現実とファンタジーの間を行きつ戻りつしながら、非常時を利用して残忍な本性をむき出しにする人間が恐ろしくなり、また、弱そうに見える人物が、追い詰められた際に見せる勇気に感動し。映像もそれは美しいです。

メルセデスが、怖がるオフェリアに歌って聞かせる子守唄が映画全編を流れるテーマ曲。終わったあとも、心の中で鳴っていました。

スペインの内戦というのは、私には、どうしても把握しにくい歴史事項です。何度か、それに関した分厚い歴史の本を読もうと試みたのですが、ややこしくて途中でやめてしまい。左派が、内部のイデオロギーの違いから、今ひとつ、まとまった目的と行動が取れなかったのに対し、フランシスコ・フランコ率いる右派は、多少の違いはあれ、達したい目的がほとんど同じで、統一された作戦行動をとり、勝利した・・・という漠然とした認識があるくらいです。フランコが死んだのは、1975年の事ですので、スペインにはフランコ政権時代を覚えている人は、まだかなりいるわけです。スペインの現代史も、また、めげずにそのうち勉強してみましょうかね・・・っと思ってはいます。

原題:El Laberinto del Fauno
監督:Guillermo del Toro
言語:スペイン語
2006年

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