汚れなき瞳

イングランド北西のランカシャー州(Lancashire)にある農家が舞台のこの映画は、アンドリュー・ロイド・ウェバーの同名ミュージカル「Whistle Down the Wind」の基になったものだそうです。原題は、「風にのる口笛」とでも訳せばよいのでしょうか。邦題は「汚れなき瞳」となっています。

殺人を犯し逃亡中の男(アラン・ベイツ)は、3人の子持ちのやもめ男性が営む、大きな丘のふもとの農場の納屋に身を隠す。やがて、農家の子供たちは、納屋でこの男を発見し、ひょんな理由から、彼を、この世に再来したイエス・キリストだと思い込んでしまう。長女キャシー(ヘイリー・ミルズ)の持つイエスの絵は、彼にそっくり。

傷を負って疲れ果てている、この現代のイエス(英語読みはジーザス、Jesus)に、子供たちは、食べ物、飲み物を持ち込み、与え、また、大人たちに知らせると、前の時のように、イエスは捕らえられ、どこかへ連れて行かれてしまうと心配し、密かに納屋にかくまい続けるのです。そのうちに、イエスが納屋にいるという噂が村の子供達の間に漏れてしまい、幾人もの子供達が、一目イエスを見ようと押しかける。それでも、何とか、しばらくの間は、子供の間だけの秘密とする事ができるのですが。

キャシーは、食べ物の他にも、イエスに欲しい物は無いか聞き、調達しようとします。「煙草が欲しい。」と言われ、「あなたが、煙草を吸うなんて知らなかった。」というやり取りが愉快でした。

やがては、大きなケーキをイエスのために持っていこうとした次女が思わず口を滑らせ、納屋に殺人犯がいると知った父親は警察を呼ぶ。警察がくる前に、納屋の壁の外から、涙ぐみながら「またいつか会うことができる?約束してくれる?約束してくれる?」と、内部に立てこもる現代のイエスに聞くキャシーの姿がいじらしいのです。

警察が来ると、男は、抵抗せずに納屋から出ます。警官に凶器を持っていないか調べられる際に、彼は、ぱっと両手を横に広げ、十字架にかかったようなポーズを取る。キャシーは、その姿に、はっと息をのむのです。そして、子供達の見守る中、連行されてしまう。この後、彼がどうなったかはわかりませんが、当時の殺人罪は、ほとんどの場合が、死刑・・・でしょうか。

当映画の原作は、キャシー役のヘイリー・ミルズの母、メアリー・ヘイリー・ベルによる1959年出版の同名の小説です。尚、ヘイリー・ミルズの父は、俳優のジョン・ミルズ。両親が有名だと、スムーズな人生をはじめられるのは、今も昔も変わらないようです。まあ、彼女、なかなかの名演でしたが。


この映画内で、キャシーが冒頭部分で身につけている、帽子とマフラーが一緒になった代物が、お洒落でした。一緒に着ていた、スタンダードの黒いセーター(白黒映画ですから、黒と書きまずが、別の色かもしれません)とスカート、長靴、しっかりしたウールのコートのいでたちにとても似合っています。

こんな帽子つきマフラー、今でも売っていたら欲しいところです。耳が痛くなるような風の冷たい冬の日に便利。編み物上手だったら、比較的作るの簡単かもしれません。長靴も、田舎住まいには必須アイテムですね。特に、ランカシャー州は雨が多いですから。

ちなみに、上に載せた写真はランカシャーの風景です。

原題:Whistle Down the Wind
監督:Bryan Forbes
言語:英語
1961年

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