チップトリーより愛をこめて
エセックス州ティップトリー(Tiptree、発音はティップトリーなのですが、なぜか日本ではチップトリーと呼ばれているようです・・・)。
平たい大地の続く農耕地帯。ここに1885年創業のウィルキン&サンズ社(Wilkin and Sons Ltd)のチップトリー・ジャム工場があります。英国王室ご用達、007も愛食、世界各国へ輸出との名声からは程遠い、なんとものんびりしたたたずまいであります。
18世紀から、周辺の土地で農業を営んでいたウィルキン家ですが、19世紀中ごろには、果実を専門に育てる農家に移行し、ロンドンなどにも、フルーツを出荷し始めます。産物の移動中に、果実が傷むことなどもあり、1885年、アーサー・ウィルキンは、それでは、摘んだ果実の一部は、自分のところでジャムにしてしまえ、とジャム会社を創業。
1904年から1962年までは、ロンドンへ行く本線とエセックスの海岸線を繋ぐ鉄道支線が、チップトリーを通過していたため、チップトリーからのジャムの出荷は、この鉄道が大活躍して、使用されていました。が、鉄道の赤字削減対策で、60年代に多くの支線が閉鎖されてしまい、この路線も犠牲となります。というわけで、残念ながら、現在は、チップトリーには、鉄道の駅はありません。もし、まだ、チップトリーで止まる電車があれば、外国からの観光客なども、気軽に訪れる事ができるでしょうに、残念ですね。もっとも、当会社のティールームとショップ以外には、チップトリーには、とりたてて見る物があるわけでもないのですが。(60年代のイギリスでの鉄道支線閉鎖については、こちらまで。)
現在でも、イギリス国内で育成可能な果物は工場の周りや、周辺のエセックスの農地や果樹園で栽培。売れ筋のママレード(Tiptree Orange Marmalade)用オレンジなどはさすがに輸入に頼っているようですが、全てここで選別、調理されているそうです。ウィルキン社のジャムは、一般にフルーツの含有率が高く、「しっかりした果物が沢山入っているぞ。」という感じ。そのわりには、値段も目玉が飛び出るようなものではないし、その辺りのスーパーでも入手できるので、うちは、ジャムといえば、もっぱらこの会社のものばかり買っています。
007こと、ジェームス・ボンドは、ウィルキン社製造の、いちごジャムの一種である「リトル・スカーレット」(little scarlet)がお好みであった、という事になっています。イアン・フレミング作「ロシアより愛をこめて」の一説に出てくるということですが、私は、この原作は読んだことが無いので、007ファンは、本をめくって、確認してみては?
リトル・スカーレットは普通の農家で栽培されるいちごより、野いちごに近いそうで、かなり小粒。収穫と選別に時間と人件費がかかり、値段は普通のいちごジャムに比べ少々高め。収穫後のリトル・スカーレットは、あまりにもデリケートであるため、即効で、工場へ運び込み、ジャムにする必要があるという話です。このジャムを口の中に入れると、もちもちっとした、いちごの粒がいっぱいで、とても美味いのです。トーストでさくさく。ヨーグルトにぐるぐる、オートケーキでコリコリ。けちけち食べるつもりでいたのが・・・。イギリス内で、リトル・スカーレットを栽培しているのは、この地だけであるそうで、その年に取れて、瓶詰めにしたものがすべて売り切れると、後は、翌年まで待つしかないという貴重な代物です。
リトルスカーレットも、果実の含有率が100グラム中60グラム。スーパーマーケットの棚にならぶ色々な会社のジャムを片っ端から手にとって、ラベルを読むとわかりますが、格安ジャムは、やはり果実の含有率が35%くらいに落ちるのです。
ジャム工場の脇には、お店と、小さい瓶入りジャムの付いたスコーンなどを食べられるティールームの入った建物があり、ちょっとした観光名所になっています。特に、バスツアーでやって来た年配のイギリス人に人気で、シルバー世代が、バスからどっと降りて、ここのティールームで、午後のひと時を、クリームティーを食しながらのんびり過ごし、ジャムを買って帰るようです。以前、このティールームに、イギリスに遊びに来た友人を連れて行った際、「スコーンにつけるジャムに何が良いか」とウェイトレスに聞かれ、友人すかさず、「007の好きなやつお願いします。」ところが、「あ、リトルスカーレットは、ティールームでは出していないので、普通のストロベリージャムになります。」やっぱりね~。友人は、後で、お店で購入していました。
お店の棚にずらっと並んだレベルを読んでいるとよだれが出そう。
また館内の一室は、ジャム作りに関する小さな博物館もになっており、ジャム作りに使われた機械や道具等も展示されています。
ウィルキン・アンド・サンズのチップトリー・ジャムは、日本の実家のそばのスーパーでも見かけた事があるので、日本でもわりと簡単に手に入るようです。もし、リトル・スカーレットも売られていたら、乙女チックに、レースなどで包んで、「007が愛したジャムです。」と人にプレゼントしたりすると、喜ばれるかもしれません。
ウィルキン・アンド・サンズ社のサイトは、こちらまで。
平たい大地の続く農耕地帯。ここに1885年創業のウィルキン&サンズ社(Wilkin and Sons Ltd)のチップトリー・ジャム工場があります。英国王室ご用達、007も愛食、世界各国へ輸出との名声からは程遠い、なんとものんびりしたたたずまいであります。
18世紀から、周辺の土地で農業を営んでいたウィルキン家ですが、19世紀中ごろには、果実を専門に育てる農家に移行し、ロンドンなどにも、フルーツを出荷し始めます。産物の移動中に、果実が傷むことなどもあり、1885年、アーサー・ウィルキンは、それでは、摘んだ果実の一部は、自分のところでジャムにしてしまえ、とジャム会社を創業。
1904年から1962年までは、ロンドンへ行く本線とエセックスの海岸線を繋ぐ鉄道支線が、チップトリーを通過していたため、チップトリーからのジャムの出荷は、この鉄道が大活躍して、使用されていました。が、鉄道の赤字削減対策で、60年代に多くの支線が閉鎖されてしまい、この路線も犠牲となります。というわけで、残念ながら、現在は、チップトリーには、鉄道の駅はありません。もし、まだ、チップトリーで止まる電車があれば、外国からの観光客なども、気軽に訪れる事ができるでしょうに、残念ですね。もっとも、当会社のティールームとショップ以外には、チップトリーには、とりたてて見る物があるわけでもないのですが。(60年代のイギリスでの鉄道支線閉鎖については、こちらまで。)
現在でも、イギリス国内で育成可能な果物は工場の周りや、周辺のエセックスの農地や果樹園で栽培。売れ筋のママレード(Tiptree Orange Marmalade)用オレンジなどはさすがに輸入に頼っているようですが、全てここで選別、調理されているそうです。ウィルキン社のジャムは、一般にフルーツの含有率が高く、「しっかりした果物が沢山入っているぞ。」という感じ。そのわりには、値段も目玉が飛び出るようなものではないし、その辺りのスーパーでも入手できるので、うちは、ジャムといえば、もっぱらこの会社のものばかり買っています。
007こと、ジェームス・ボンドは、ウィルキン社製造の、いちごジャムの一種である「リトル・スカーレット」(little scarlet)がお好みであった、という事になっています。イアン・フレミング作「ロシアより愛をこめて」の一説に出てくるということですが、私は、この原作は読んだことが無いので、007ファンは、本をめくって、確認してみては?
リトル・スカーレットは普通の農家で栽培されるいちごより、野いちごに近いそうで、かなり小粒。収穫と選別に時間と人件費がかかり、値段は普通のいちごジャムに比べ少々高め。収穫後のリトル・スカーレットは、あまりにもデリケートであるため、即効で、工場へ運び込み、ジャムにする必要があるという話です。このジャムを口の中に入れると、もちもちっとした、いちごの粒がいっぱいで、とても美味いのです。トーストでさくさく。ヨーグルトにぐるぐる、オートケーキでコリコリ。けちけち食べるつもりでいたのが・・・。イギリス内で、リトル・スカーレットを栽培しているのは、この地だけであるそうで、その年に取れて、瓶詰めにしたものがすべて売り切れると、後は、翌年まで待つしかないという貴重な代物です。
リトルスカーレットも、果実の含有率が100グラム中60グラム。スーパーマーケットの棚にならぶ色々な会社のジャムを片っ端から手にとって、ラベルを読むとわかりますが、格安ジャムは、やはり果実の含有率が35%くらいに落ちるのです。
ジャム工場の脇には、お店と、小さい瓶入りジャムの付いたスコーンなどを食べられるティールームの入った建物があり、ちょっとした観光名所になっています。特に、バスツアーでやって来た年配のイギリス人に人気で、シルバー世代が、バスからどっと降りて、ここのティールームで、午後のひと時を、クリームティーを食しながらのんびり過ごし、ジャムを買って帰るようです。以前、このティールームに、イギリスに遊びに来た友人を連れて行った際、「スコーンにつけるジャムに何が良いか」とウェイトレスに聞かれ、友人すかさず、「007の好きなやつお願いします。」ところが、「あ、リトルスカーレットは、ティールームでは出していないので、普通のストロベリージャムになります。」やっぱりね~。友人は、後で、お店で購入していました。
お店の棚にずらっと並んだレベルを読んでいるとよだれが出そう。
また館内の一室は、ジャム作りに関する小さな博物館もになっており、ジャム作りに使われた機械や道具等も展示されています。
ウィルキン・アンド・サンズのチップトリー・ジャムは、日本の実家のそばのスーパーでも見かけた事があるので、日本でもわりと簡単に手に入るようです。もし、リトル・スカーレットも売られていたら、乙女チックに、レースなどで包んで、「007が愛したジャムです。」と人にプレゼントしたりすると、喜ばれるかもしれません。
ウィルキン・アンド・サンズ社のサイトは、こちらまで。
チップトリーのマルベリー(桑の実)・ジャムについては、こちら。
エセックス州内にいくつかある、チップトリー経営のティールームについては、こちら。
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