ポンセチアとアクリスマス

12月に入り、巷のクリスマス色も強くなっていきます。スーパーのレジの周りには、列を作って待っている人たちの衝動買いを促すかのように、大量のポインセチア(Poinsettia)が置かれていました。イギリスで、クリスマスの時期に一番売れる植物は、このポインセチアなのだそうです。我が家で、冬季の室内用に購入する植物は、大体、ヒヤシンスとシクラメンですが、たまには、ポインセチアも飾ってみるか、とひとつ購入。わりと大きめで、2ポンド50ペンスと、スーパーで買う植物も、最近は安いものです。どこかの巨大な温室で、同じ植物を一気に、大量生産しているのでしょう。

頭でっかちな植物であるため、バランスが取れるよう、家に持って帰った後、わりと大き目のポットに移し変えました。また赤と緑のバランスで、赤がかなり強烈なので、ポットの色は少々緑がかったものにし、ついでに、つたで作ったリースで鉢の底を飾り。2階の寝室の窓辺に置くと、ベルベットの様な赤い葉が、イギリスの冬の空を背景に、わりといい感じです。もっとも、この赤い部分は、厳密には葉でも花でもなく、苞(苞葉)、英語では「bract」と呼ばれるもの。

ポインセチアの故郷はメキシコ南部を含む中南米。赤と緑の強い色合いは、出身地がメキシコと言われると、確かに、そうだろうなという感じはします。アステカの時代には、紫色の染料材として、ミルク色の汁は、解熱のための薬に使用されたとか。

トウダイグサ(ユーフォルビア)属のポインセチアの学名は、「Euphorbia pulcherrima」。意味は、「最も美しいトウダイグサ(ユーフォルビア)」。もちろん、学名で呼ぶ人などはほとんどいませんが。俗称のポインセチアは、アメリカ合衆国にこの植物を持っていき、紹介した人物の名からきています。1825年、初代メキシコのアメリカ大使となったジョエル・ロバーツ・ポインセット(Joel Roberts Poinsett)氏は、メキシコで、このカラフルな植物に遭遇し、アメリカの、自分の家のグリーンハウスで育成するよう送り、また、知り合いにもいくつか送り、そこから広がり、徐々に商業用に売られるようになります。1830年代から、すでに、アメリカでは、この植物は、ポインセット氏の名から、ポインセチアと呼ばれるようになっていたということ。

なぜ、ポインセチアがクリスマスに使用されるのか・・・。それを説明するメキシコの伝説は、

とある貧しい娘が、クリスマス・イブに、教会のクリスマス・サービスで、幼子イエスに捧げるプレゼントが買えないと悩んでいたところ、いとこに、「イエスは、ささやかでも、自分を愛する者がくれるものなら、どんなものでも喜ばれるに違いない。」と助言され、道端の雑草を摘んで束にし、教会へ出向き、それを供えた。すると、雑草は、みるみる赤い美しい植物と化し、教会内にいた者たちは、奇跡と驚いた・・・というもの。以来、メキシコでは、ポインセチアは、Flores de Noche Buena(聖夜の花)と呼ばれているとやら。イエスの血を思わせる赤は、クリスマスのアクセント色でもありますし。また、苞葉の形が、東方の三賢者が導かれてイエスの元にやってきた、ベツレヘムの星の形にも見えるというのも、クリスマスとの関連のひとつ。

さて、伝説から現実に戻り、ポインセチアのお手入れ法。最低必要温度は13~15度。強烈な直射日光と、隙間風を避けるようにし、また、店から買って家に持ってくるまでの間に、あまり寒い思いをさせないようにすることは必至で、抱えたまま、長時間、巷の風に吹かれて、うろうろしないこと。また、葉をよくラップして持ち帰ること。時に、家に持って来てすぐに、葉がしなっとなってしまい、もとに戻らない場合は、店が、管理を怠り、寒い場所にしまってあった可能性があるそうで、そうなったら、もう、なすすべは無いようです。水のやりすぎには注意で、基本的に、水は、土の表面を触って、乾いていると感じたらやるようにすること。また、時々、葉に霧吹きをかけると、長持ちするとのこと。買ったからには、クリスマスを過ぎたら、ポイなどとしないで、冬の間、出来るだけ長く、カラフルでいつづけてもらいたいものです。

最近は、苞は赤に限らず、白いポインセチアなど、他の色のものも出回っているようです。少し大型のナーサリー(植物を売る店)へ行くと、たしかに、変わった色のものが並んでいました。

薄紅色のものや、まだら模様のものがあるかと思うと、

ぱっと見、クレマチス風の、白にピンクが混じったもの、

クリーム色もありました。贈り物には、こうした変り種も、面白くて、いいかもしれません。

参考サイト(英語)
ポインセチアの歴史と伝説は
http://www.whychristmas.com/customs/poinsettia.shtml
ポインセチアの世話に関しては
https://www.rhs.org.uk/advice/profile?pid=146

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