モーターサイクル・ダイアリーズ

若かりしエルネスト・チェ・ゲバラが、生涯の友、アルベルト・グラナードと共に、故郷アルゼンチンを出発し、南米を旅した際の日記の映画化。ポンコツのオートバイは途中で壊れてしまいますから、後半は題名に偽りあり・・・ですが。

映画では、ゲバラが、社会主義に目覚めていく過程が強く描かれていますが、原作を読んだ限りにおいては、冒険と人生を楽しんでいる、まだ、悩みなき青春の日記という感が強かったです。映画は、原作に少し手は加えてあり、多少劇的にしてあるものの、主旨がよくわかり、心に響く、いい映画になっていると思います。

ゲバラもグラナードも、正義感、平等の意識が強い人間だったようですが、私が以前読んだゲバラの伝記によると、2人の違いは、グラナードは敵に銃を向けたとき、相手の家族などの顔を想像してしまい引き金が引けないタイプ、ゲバラは個人の悲劇や感情を超え、理想のためなら、引き金をためらいなく引くタイプということ。だんなか友達にするには、グラナードの方がいいかもしれない。

真の革命は、市民を武装させなければ到達し得ない、理想だけの平和主義では、平等な社会を作る前に、暴力を使う事を怯まない体制側にやられてしまう、というのがゲバラの考えだったようです。実際、若い頃、グラナードに、平和的反政府デモに参加しないかと誘われ、「そんな事してどうする。警察の奴らに思いっきり殴られておしまいだ。」という感想をもらしたというエピソードも、同じ伝記で読んだ覚えがあります。これは、独裁者または、体制側が、どれだけ、国際意見を無視して、冷酷に振舞えるかにもよるでしょうが。

2人は、チリのチュキカマタ銅山(Chuquicamata)を訪れ、そこでの鉱夫たちの扱いに怒りを感じる・・・時は経ち、今では、南米では比較的良くやっている感のあるチリ、時折ストライキの話は聞くものの、その鉱夫達の待遇もかなり改善されている様子で、給与も国内の他の産業従事者に比べ悪くはない、という話ですが。最近の救出劇で人気者になった鉱夫たちも記憶に新しいところです。

また、一生働いてきたものの、病気になり、家族の厄介者となってしまった老婆の看護を頼まれた際、貧民への無料の医療提供の大切さを痛感するくだりは、原作のほうでもかなり印象に残っています。

雄大な風景はとても美しく、彼らが少年時代に「本でしか知らなかった南米」を、一緒に旅するのも楽しいです。そして、マチュピチュ・・・という言葉を聞くと、この映画を見てからは、反射的に、若き日の2人がその前に立っている姿を想像してしまいます。
上記写真は、National Geographicのサイトより。

ガエル・ガルシア・ベルネル扮するゲバラは、魅力的に描かれていて、この映画で、彼に惚れ直し・・・なんていう人も多いのではないでしょうか。やはり読んだ伝記によると、彼の少年期、学校に一緒に行った女性いわく、「みんな、エルネストにちょっと恋してた」。美男で型破りだったという実物も、魅力的な男性だったのか。

この映画の最終シーンには、キューバ革命後、ゲバラに招かれ、キューバへ移り、以来キューバに在住のグラナード本人がちょこっと出てきます。映画の終わりの設定時から、15年後には、ゲバラは、もう死んでいるわけですから感無量。こんな旅をしながら、喘息の発作に悩まされながら、無事医大を卒業。数多くの書物を読んだり、自分なりに詩を書いたりと、時間をそれは有用に使って、太く短くの典型、急ぎ足で人生を過ごした人だったのでしょう。

カストロが死んでしまう前に、一度は行ってみたいと思っていたキューバ。いまだ、実現していないのですが、そうこうするうちに時間切れになってしまうかな・・・。

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原題:Diarios de motocicleta
監督:Walter Salles
言語:スペイン語
2004年

コメント

  1. おはようございます。今日は寒いです。夜には雪になる天気予報です。オートバイはモーターサイクルというのですね。のどかですね。チェゲバラは革命家という肩書きでしょうか。ハンサムで魅力的ですよね。カストロより人気があるかな?ゲバラの顔のポスターとかTシャツもありました。オートバイの大旅行は若者の特権ですね。あの小沢征爾も若い頃、バイクでヨーロッパを放浪した日記があります。愉快でたのしい本です。

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  2. 若くして死んでしまった分、アイコン度数はカストロより上でしょうか。カストロなども、背の高い人の様で、リーダーとして、見た目も、ついていきたくなるものがあるのかもしれません。それでも、ヒトラーのような小さい独裁者もいるので、一口では言えないですが。
    オートバイ、自転車での世界旅行、若者の特権ですね。

    こちらは暖かくなってきて、スノードロップ、クロッカスが咲き始めました。

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