さわってごらん、ウールだよ


中世以来、羊毛、毛織物業で富をなした国でありながら、高騰する羊の肉の価格とは裏腹に、羊毛の値段は下がる一方で、最近では、羊毛の卸し値は、もう0に等しい、という様な事を、農家の人が、テレビで言っているのを聞きました。現在の卸し値、羊毛1キロにつき約1ポンド20ペンスだそうです。

確かに、衣替えをして、冬物を引きずり出している時に、ふと思ったのですが、私は、もうほとんど全毛のセーターも、カーディガンも持っていないのです。ウールのコートなども、着なくなって手放してから、かなり経ちます。

理由は・・・?
まず、100%羊毛のセーターなどは、首まわりなどちくちくする。後は、ドライクリーニングなど、手入れが面倒な服は、あまり持ちたくない。何枚かあった、だんなの、肌触り良く、やらかいラムズウールのVネックセーターは、たんすの中でモスに食べられ、1枚残らず穴が開いてしまい。また、ロンドン内を、がんがん歩き回ったり、地下鉄の駅に出たり入ったりしていると、冬でも、そのうち暑くなって、上着やジャケットを脱ぎたくなる。脱いだ際、手に持って歩くのに、軽いに越した事はない。そうです、フリース地、その他の、軽くて、手入れの楽な素材の上着を身に着けることが断然多い、今日この頃なのです。最近買ったばかりのカーディガンも、洗濯機で洗うことができるタイプで、羊毛混合率は30%のみでした。

そう思うのは、私だけではないでしょうから、一般的羊毛離れ、需要の低下、よって羊毛が商売としてなりたたない状態になっているわけです。「さわってごらん、ウールだよ」なんて、羊毛100%をありがたがって、日本でコマーシャルやっていた頃から時は経ったのです。

羊毛の魅力は、何と言っても、天然素材だという事。濡れるような緑を食べて育った羊の毛。その、自然で、ほのぼの暖かいイメージから、おうちでくつろいでいる時くらい、ざっくりと網目のついた、ウェストをひもで縛るスタイルの全毛カーディガン一枚くらい、持っていてもいいかな、という気はするのです。おそろいの、もこもことした、羊毛長靴下でもはいて。

セーター、カーディガン姿の憧れは、このマリリン・モンローが、亡くなる前、最後に撮影されたという海岸での写真。ドレス姿の彼女よりも、それこそ天然の魅力がいかしてます。彼女の着ている、カウチン・セーター(Cowichan Sweater)風の部屋着で、くつろぎのひと時を過ごしてみたい。

ちなみにカウチン・セーターは、カナダ西岸、ブリティッシュコロンビア州のカウチン・ヴァレー周辺の原住民による手編みのざっくりセーター。彼ら、ヨーロッパ大陸の文化が入り込む前は、ヤギの毛などで毛布等を編んでいたということですが、19世紀半ば、羊がこの地に導入されてから、羊毛を使って、スコットランド等からの移民の技術やデザインにも影響を受け、現在も人気の、自然な色のみを使用したパターン入りのセーターを作り続けています。そのうち、マリリン風カウチン、ひとつは欲しいところ。

また、最近の、衣類以外のウールの用法として、断熱材があります。

去年は、ロフトの一大整理をしました。その際、おうちを少しでも暖かくするため、ロフトの床板の下に、ガラス繊維を用いた、グラスウールの断熱材を敷き詰めたのです。今考えれば、グラスウールでなく、羊毛材を使えば良かった。羊毛断熱材は、断熱効果はもちろん、燃えにくく、火災にも強いはず。いつか引っ越して、またロフトの断熱をする事になった際には、羊毛材を選ぶことにしましょう。
さて、先週は、妙に暖かい週でした。また今週から、11月の標準の天気が舞い戻り、本日は横なぶりの強風と冷たい雨。週末に、春の球根類を花壇に植える作業を完了したのは正解だったようです。

コメント

  1. 同じく「扱いやすい」を基準に衣類を選ぶことが多くなっています。シルクなども手入れを考えると着る機会が減っています。ウールも改良されて軽いものやウォッシャブルも出てきていますが試していません。羊毛断熱材はオーストラリアやニュージーランドから輸入されたものが日本でも使われています。断熱効果はグラスウールと同じかやや劣る程度。作るためのエネルギーがグラスウールより格段に少ないのでエコ素材と言えます。そしてなによりも作業者の体への負担が少ないのです。100%だとへたるのでポリエステルが混ざっているということでした。輸入されたなかに臭い(羊の排泄物のような)のがあって、お取替えになったことがありました。

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  2. ロフト整理の際、まず、古い、やはりグラスウールの断熱材を取り除いたんですが(写真奥の黄色の物体)、ビニールカバーがかかっておらず、むき出しだったので、ちくちくするわ、目がかゆいは、せきは出るは、とひどい目にあいました。しかも処分が大変で。
    値段はグラスウールよりは少々高いのですが、次回は、多少おしっこの臭いがしても羊毛にします。

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  3. おはようございます。秋も深まり、朝晩は寒いです。
    やはりウールは暖かい。数年前から、羊毛のホワイトクラウドというブランケットを敷いて寝ています。これが暖かい。純毛という言葉もありました。母はこの信奉者で繊維を一本取り出すと,マッチで火をつけて臭いで確かめるくらいでした。化繊を軽蔑?しています。
    妹は染色と手織りをやっているので、羊を飼いたいと言っていました。
    カウチンセーターは娘に編んであげたのですが、重たいといって着てくれませんでした。
    今年も一つ、ウールの毛糸でセーターを編みたいと思っています。イギリスには編み物の伝統もありますよね。

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  4. 繊維に火をつけて確かめる・・・それはかなり凝ってます。
    せっかくのカウチンセーター、残念ですね。外出用ではなく、室内用のみだったら、多少重くても良い気がするのですが。

    スコットランドの漁村などが、色々な伝統の手編みが多いですね。漁師が嵐で亡くなり、遺体の判明がし難い際、独特の網目でどこの家のだんなかわかるという、ちょっと暗い過去の歴史もあるようですが。

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