アリスの白うさぎ

...when the Rabbit actually took a watch out of its waistcoat-pocket, and looked at it, and then hurried on,  Alice started to her feet, for it flashed across her mind that she had never before seen a rabbit with either a waistcoat-pocket, or a watch to take out of it, and burning with curiosity, she ran across the field after it, and fortunately was just in time to see it pop down a large rabbit hole under the hedge.

In another moment down went Alice after it, never once considering how in the world she was to get out again.

・・・実際、うさぎが、ちょっきのポケットから懐中時計を取り出し、それを眺め、そして、急ぎだしたとき、アリスは勢いよく立ち上がりました。というのも、アリスは今まで、ちょっきのポケットや、そこから取り出せる懐中時計を持っているうさぎなど、見たことがないと、はっと気づいたからです。好奇心に駆られて、アリスはうさぎを追いかけ野原を横切りました。そして、幸いな事に、うさぎが、藪の下にあった大きなうさぎ穴の中へ飛び降りるのを目撃することができました。

次の瞬間、うさぎを追ってアリスが穴へ飛び降りました。一体全体、後で、どうやって穴から出れるのかなどと全く考えもせずに。

Alice's Adventures in Wonderland,  I. Down the Rabbit-Hole, Lewis Carroll

不思議な国のアリス、第一章 ウサギ穴の中へ より ルイス・キャロル著(訳は私です)

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こうして始まる、アリスの冒険。来年は、うさぎ年という事で、今回のクリスマスカード兼年賀状は、この不思議な国のアリスの白うさぎをモチーフにしました。(全くの余談ながら、この本が出版されたのは1865年11月で、日本では幕末、同年同月に、駐日英国公使のハリー・パークスなどが神戸早期開港をめぐって幕府に圧力をかける兵庫開港要求事件などが起きています。)

イギリスの野生のうさぎは、ピーターラビットでおなじみ薄茶色で、白色のものというのはペット用のウサギでしかおめにかからないですね。特別変異のアルビノ(白変種)でない限り。ジャパニーズホワイト(日本白色種)と呼ばれる白い毛皮で赤いお目めのウサギは、日本語版ウィキペディアによると、「アルビノを品種として固定させたもの・・・明治初期に輸入された外来種と在来種の混血ではないかと思われる」とあります。実際のところ、アリスの白うさぎも、「ピンクの目をした白うさぎ」と表現されているので、アルビノなのかもしれません。イラストでは、目がピンクだとなんとなく怖いので、黒にしておきました。

日本でも、すでに明治維新前にペットのウサギというのはいたようですが、本格的にいろいろな種が入ったのはやはり明治になってからのようで、なんでも1870年代には、変わったうさぎを投資の対象とするウサギバブルというのがあり、一時社会問題にもなったというのです。オランダでも、1630年代に、チューリップの球根に投資する、チューリップバブル(Tulip Mania)っていうのがありましたね。

さて、イギリスのうさぎに話をもどすと、もともと一番最初にうさぎをイギリスへ持ち込んだのはローマ人、その後、ノルマン人征服により、再びノルマン貴族により再導入。貴族の貴重な食肉の対象として、うさぎを盗む者は厳重に処分されていました。最近では、この国ではウサギを食べる人というのはあまりいない様です。ベルギーのレストランでうさぎシチューを食べた事はありますが、こちらのレストランでメニューに挙がっていたのを見た記憶もないし。ただ、街の肉屋で幾度か売られているのを見たことはあります。

そう言えば・・・とここまで書いて思い起こすと、今年は、ほとんど野ウサギが走り回る姿を見なかった気がします。家から目抜き通りのある街の中心まで歩く途中、普通なら何匹かのウサギが茂みのそばなどで、もごもご口を動かして、近づくと藪にぴょーんと駆け込む姿は、鳥がその辺を飛んでる姿と同じように、ほぼ気に留めることもないくらい日常の風景であったのに。

ヨーロッパの野ウサギは、兎出血病というウィルス性伝染病にやられ、ひどい目にあうことが過去あったのですが、なんでも、このウィルスの変種が2010年にフランスで見つかり、他の国にも広がったという事。12年も前の話ですが、このウィルスが勢いをつけてきてるのか。もっと気にしながら、周辺で、うさぎの姿を探してみることにします。なんでも兎出血病は、ペットのウサギもかかるそうなので、飼い主は、ワクチン接種を奨励されているようです。人間がコロナでひどい目にあってる間に、うさぎはうさぎでウィルスとのバトルを余儀なくされてたんですね。鳥インフルエンザも猛威をふるってますが。おそろしいもんですね、ウィルス。H・G・ウェルズの「宇宙戦争」で、地球侵略を企てた火星人を殺したのも、人類の科学ではなく、病原菌ですから。

白うさぎを追って、ウサギ穴に落ち込んだアリスは不思議の国での妙な経験の後、実は夢でした、となりますが、コロナも、ウクライナも、その他もろもろのとんでもない出来事もすべて夢だったらありがたいのに。2023年のウサギ穴の中には、さらなるとんでもないことが待っているかもしれませんが、過去には戻れない、前に進むしかない。きっと、なんかいいこともあるさと希望は捨てずに。

コメント

  1. あの赤目の白ウサギはジャパニーズホワイトと呼ばれる品種なんですか!
    私の子供の頃は、ペットのウサギはあの赤目白ウサギがほとんどでした。けっこう凶暴だった記憶があります。目も赤くてちょっと怖かったし…
    最近のペットウサギはこぢんまりした可愛い種類ばかりです。耳も大きくて垂れ下がっていたり、ネズミみたいに小さかったり。
    赤目の、少し凶暴白ウサギちゃんが懐かしいです。割と大柄だった気がしますし。

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