雨は夜更け過ぎに雪へと変わるだろう


 巷でも、ラジオからも、クリスマスの人気定番ポップソングが流れる季節。ワムのラスト・クリスマスやら、マライア・キャリーの恋人たちのクリスマスやら、なんやら、かんやら。それでも、キャロルやアニメ「スノーマン」のテーマ曲あたりを除けば、私がこの時期、一番聞きたくなるのは、いまだに、「雨は夜更け過ぎに、雪へと変わるだろう」で始まる、山下達郎氏の「クリスマス・イブ」です。今回は、イメージイラストも作ってみました。思うに、英語圏の国に住み、英語のみを喋り、英語文化にしか親しみのない人たちというのは、メジャー英米文化プラス自分たち独特の文化にも浸ってきた、他文化圏から来た人間に比べ、ある意味、文化生活の幅が狭いのではないかという気もします。自分たちから、積極的に他言語のものでも興味の範囲を広げようとしない限りは。

さて、「クリスマス・イブ」は、1983年、JR東海クリスマス・エクスプレスのCMでもおなじみの曲ですが、ビデオを探してみると、当時の、切符を切る駅員さんのいる改札口などが、なんとも、いいんですねえ。CMには、いろいろなバージョンがあるものの、クリスマスに電車に乗って愛する人がやってきたー、という、歌詞と相反して、一人じゃないクリスマス・イブが描かれています。ちゃんと、電車が、予定通り走る国でなければ、こんなCMにはならない。

ここしばらく、イギリスの鉄道は、従業員の賃金と労働環境をめぐり、度重なるストライキの波にやられています。前回の記事では、ロイヤルメールのストライキに言及しましたが、特に、多大な悪影響を出せるクリスマスと年末年始とあって、先週は、火水金土と4日間の鉄道ストライキ、さらには、ストライキのない合間の日にもダイヤの乱れや本数が減るなどの弊害も出ています。24日にもストライキが予定されているため、クリスマス・イブに電車に乗って愛する人のもとへ、なんて、あきらめた方がいいですねえ。

基本的に、車の移動より、電車での移動のほうが好きな私は、徐々に感じ始めています、電車がまともに動かせない国にいつまで住んでいられるかと。普段でさえ、キャンセルや遅れは日常茶飯事。週末にはよく、線路の整備のため、一部区間が不通となることもあり、その区間は、レールリプレースメント・サービスなる、バスを使うことになります。これがあると、移動時間、最低30分は上乗せとなります。一体全体、JRおよび日本の鉄道はどうやって路線のメンテを乗客にさほどの迷惑が掛からないように遂行し、よほどのことがない限り、時間通りに電車を走らせることができるのか、魔法のようです。日本の鉄道の従業員さんたち、メンテの皆さん、ほんと、お疲れさん、リポビタンDを何本でもあげたい。イギリスの状態を経験した後では、帰国の度に、感謝感激あめあられです。


先週の日曜日の夜に降った雪は、ここのところの低い気温に助けられ、今も周辺を覆い、一部歩道はかなりつるつるで、買い物に出るのも、よちよちと気をつけて歩いていました。鉄道のみならず、医療も崩壊に限りなく近い状態で、先日は看護婦さんたちのストライキ、来週は、さらなる看護婦さんのストライキと救急車要員のストライキも予定されているため、下手に転んで骨でも折ろうものなら、長ーい間、病院にも行けずにひどい目を見ることになるので、それは要注意でした。上の図は、年始までに予定されている各業界のストライキ事情。

さて、少々話を変え・・・ひらひらと空から落ちてくる雪片(雪の結晶)は美しいものです。が、最近、この英語である、「スノーフレーク」という言葉は、芳しくない俗語の意味が幅を利かせてきて、悪いイメージを呈するようになっています。雪の結晶は、ひとつひとつ、違う形をしている・・・まずは、そこから来て、自分のユニークさを必要以上に自認する人のこと、さらには、自分の権利や意見を必要以上に主張し、過剰なまでの繊細さを見せ、他人のちょっとした言葉にすぐに失礼だとか、傷ついたとかでクレームをしたり、逆上する人などを指したりします。すぐ溶けちゃうので精神的にもろい、という含みもあるのでしょう。さらには、この言葉が政治的に使用されるようになっていくと、ますます、醜いイメージの言葉と化していく。

ここから、さらに、Snowflake Generation(スノーフレーク世代)という言葉も現れ、この定義は、ケンブリッジ英語辞典によると

A way of referring to the type of young people who are considered by some people to be too easily upset and offended

一部の人間が、あまりに容易に逆上したり不快を示したりすると思われるタイプの若者たちを、指して使う呼称

とあります。SNSなどですぐにぶっちぎれたりするなども、そうでしょうが、こうしたことが、昨今、若者だけに限ったことかどうかは疑問ですがね。

せっかくの雪の結晶が!こんな使われ方するのは何とも残念。なんか、別の言葉を考えてくれないか・・・。ひとつひとつ美しく異なる結晶が、がーがーぎゃーぎゃー、唾を飛ばし、口角泡だて、「俺を見ろ、俺の意見は正義だ」「お前は完全に間違ってる」「俺以外の考えは悪である」「俺をけなしたな、失礼だぞ」などと騒がずに、しんしんと静かに空から降って、あたりを白く変えていく様子を頭に浮かべながら、またクリスマス・イブを聞いてみましょうかね。

天気は、ようやく、北からの風が南へ変わるため、雪は夜更け前に雨に変わるでしょう、そして、今夜から少し暖かくなる見込みです。残念ながら、予報を見る限りにおいては、イングランドでは、今年もホワイトクリスマスはなさそうです。

コメント

  1. 10月にイギリスに行った際、イギリス国鉄のストライキに振り回され、それでも行かなければならない先には、コーチを二重に予約したりと、本当に振り回されてしまいました。来年も続行ですかね?困りました。

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    1. それは大変。旅行なら、しばらくはイギリスは来ない方がいいなんて言えますが、仕事では仕方ないですね。今のところ、解決の模様は見えていないので、来年も続行と思います。この国、もうだめじゃないかと時々思いますよ。

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