小さな恋のメロディ

Who is the girl with the crying face looking at millions of signs?

She knows that life is a running race.

Her face shouldn't show any sign.


Melody Fair, won't you comb your hair? You can be beautiful too.

Melody Fair, remember you're only a woman.

Melody Fair, remember you're only a girl.


Who is the girl at the window pane watching the rain falling down?

Melody, life isn't like the rain.

It's just a merry go round.


泣き顔をしている子は誰?たくさんの兆しを見つめながら。

あの子は、人生が競争だと知っているけど、

憂いを顔に出さないで。


麗しのメロディ、髪をとかして。君も美しくなる。

麗しのメロディ、忘れないで。君は一人の女性。

麗しのメロディー、忘れないで、君はまだ少女だと。


窓枠の中にいる子は誰?雨が降るのを眺めている。

メロディ、人生は雨じゃない、

ただのメリー・ゴーランド。


(上の日本語歌詞は、私の個人的な意訳ですので、悪しからず。)


ビージーズの歌う「メロディ・フェア」なぜか、先月辺りから頭に鳴り響き初め、ふと、この歌が挿入されている「小さな恋のメロディ」(原題:Melody)を見たくなりました。これは、確か、かなり大昔に見たはずなのですが、細部が思い出せなかったので。なにせ、作られたのは1971年と、50年ほど前。どへ!男の子の主役2人は、ミュージカル「オリバー」でお馴染みの、マーク・レスターとジャック・ワイルド(彼は、53歳と若くして、もう亡くなってます。見た時は気が付かなかったのですが、「ロビン・フッド」にも脇役で出ているようです。)

なんでも、この映画は英米ではさほど成功しなかったのに、なぜか日本とラテンアメリカで大うけしたのだそうです。挿入歌「メロディ・フェア」がシングルとして発売されたのも日本だけなのだそうで。だんなに、この映画知ってるか、と聞くと、見た事も聞いた事もない、という返事でした。「メロディ・フェア」も、聞き覚えないと。1970年代初期のイギリスの学園ものだというと、郷愁をくすぐられたのか、見てもいい、というので、さっそく一緒に、お茶の間映画館をしました。

あらすじは・・・

ロンドンのテムズ川南岸にあるランべス地区の公立学校が主な舞台。比較的裕福な家庭の息子、ダニエル(マーク・レスター)と、貧しい家の悪ガキ、オーンショー(ジャック・ワイルド)は、仲良しとなり、つるむようになる。が、そのうち、ダニエルは、同じ学校の少女メロディ(トレーシー・ハイド)に心奪われるようになり、オーンショーそっちのけに、メロディと、二人で学校を一日さぼり、海岸リゾートへ遊びに行ったり、やがては、今すぐ結婚しようなどと思い立つ。最初は、面白くなかったオーンショーも、やがて、二人が真剣だと気づき、クラスメイトたちを引き入れ、二人の結婚式を線路沿いの、壊れかかった建物の中で執り行う。そこへ、学校の教師陣とダニエルの母がかけつけ、大人と子供の大格闘。最後は、オーンショーの助けで追っ手を逃れ、ダニエルとメロディは、線路の上に放置されたトロッコを動かして、田舎の景色の中へ消えてゆくという、実際はありそうにもないけれど、有名なエンディングとなります。

あまり良くない学校だったのか、チューインガムをくちゃくちゃ噛む生徒、校庭でたばこを吸う生徒もいるし、ギンガムチェックの制服を着た女の子たちの中には、そのスカートの丈が極端に短い子も沢山。そのわりには、ダニエルやメロディなども、「結婚」というのは、ただ、好きな人とずっと一緒にいる事、というくらいの理解があるのみの純情なところがあるのです。昨今のイギリスの11,12歳なんて、これよりもっとませてるのではないでしょうか。それに、最近の治安の悪い地域の公立校の学生たちの間では、時に、ナイフでの生徒同士の殺傷事件なども問題になっていて、映画とは比べ物にならぬくらい、暗く質の悪いものになっている感もあります。

映画は、50年前のテムズ川の風景から始まります。やはり当時は戦後の開発が、まだまだ終わっておらず、しかもテムズ南部は、空き地も多い感じで、今はおそらく家やフラットが密集して立っているであろう線路わきは、まだがらーんとした荒れ地。子供たちは、この荒れ地で、手作り爆弾の実験をし、最後の結婚式も、格闘シーンもここで起こります。一度、ダニエルとオーンショーが、放課後バスに乗ってロンドン中心地へ遊びに行き、トラファルガー広場やソーホーを歩き回る、その風景にも年代を感じます。

子どもたちは、学校の帰りによく、墓場を通り抜けていくのですが、だんなが、「この墓場、ナンヘッド(Nunhead )墓地と似たような感じ。」と言っていました。彼は、ロンドンで仕事を始めたばかりの若いころ、少々ガラが悪いので家賃が安かったという、テムズ川南岸のペッカムという場所で、下宿をしていたことがあり、近くにあったナンヘッド墓地は、緑が多く、都会のオアシス風で、ときどき足を延ばしたようです。映画の後で調べて見たら、ロケ先は、本当にナンヘッドでした。この墓地で、女の子たちが、墓石の上に、持っていたミック・ジャガーのポスターを広げ、一人の女の子が、それにキスするなんてのも、可笑しかったです。

映画の最初でダニエルは、BB(Boys' Brigade)という団体に、母親にいれられて、ユニフォームを着て行進させられていましたが、これは、ボーイ・スカウトのようなものであるようです。

ダニエルは、学校には、皮の四角い鞄(satchel)を持っていき、オーンショーは、ダッフルバッグ。だんなも、この2種のバッグを両方持っていて、「両親は、革鞄を使って欲しかったようだったけど、イメージがいい子ちゃん過ぎて、何となくかっこよくなかったので、ダッフルバッグばかり使っていた。」

メロディは、馬車に色々なものを乗せて通りを行商するおじさんから、洋服と交換に、金魚をもらいますが、だんなは、これを見て、「うちのそばにも来ていた、Rag and Bone Manみたいだ。」このラグ・アンド・ボーン・マンとは、こうした馬車をひいて通りを練り歩き、一般から要らないものを安価で引き受けるタイプの人たちであったという事。メロディが、このガラス瓶に入った金魚を持って、お父さんが飲んでいるパブまで歩いて行くシーンで、メロディ・フェアの曲が流れるのです。途中の道路沿いにある、馬の水飲み場(trough、トロフ)で、金魚を少し泳がせてから。ついでに、メロディが住むフラットは、カウンシルハウスと呼ばれる総合公共住宅で、比較的低所得者層が、安い値段ですめるようになっているものです。

学校の教師陣の中には、この頃もまだ、「チップス先生、さようなら」風の黒い長いガウンを着ている者もいて、更には、チップス先生の時代からはかなり経っているのに、悪さをするとおしりを叩く、という体罰が続いて行われていた模様を描いています。

公立ですが、まだラテン語のクラスもあり、オーンショーは「大昔のローマ人と話す機会もないのに、そんな死語を学んでも意味がない。」と意見し、歴史のクラスでは、ナポレオン戦争中の、アーサー・ウェルズリー(後のウェリントン公)による、WIC(Wellington's Iberian Canpaign、ウェリントンのイベリア半島の戦い)を勉強している時、「どうしてウェリントンはそんな戦いをしたのか。」というオーンショーの質問はまるで無視され、「ただ、覚えろ」と教師に言わています。オーンショーはこうやって、結構まともな意見や質問をしているのに、当時の教育は、一方的に黙って覚えろ的感覚が強かったのでしょうか。また、キリスト教の授業で、教師が、「ユダヤ人の子は、この授業を受けなくてもよろしい。」これに乗じて、オーンショーもクラスから出ていこうとすると、「お前はちがうだろ。」と止められる。

さて、そして、爆弾作り!男の子たちが、幾度も、除草剤を使って小さな爆弾を作り、実験しては失敗を繰り広げているのですが、これも、うちのだんなは子供の時やったらしいのです。除草剤と砂糖を混ぜて作っていたそうで。家の庭で友達を呼んでこそこそやったり、映画のように、空き地や森の外れなどで試したりと。当時はIRA(アイルランド共和軍)による爆弾騒ぎもあり、警察も、民間人も、神経質になっていたのか、「近所の悪ガキどもが爆弾を作っている気配がある」と誰かに通報され、ある夜、彼の家にも警察が来てしまったとか。お父さんが、おまわりさんを居間に通して、だんなは、「ちょっと実験したことはあるけど、だめだったから、それっきりになっている。」と白状すると、おまわりさんは、すぐ帰って行ったそうです。それでも、逮捕されては困ると心配になった彼は、翌日、車庫に置いてあった沢山の除草剤を、見つけにくいところに隠した、と言っていました。もっとも、その頃には、それこそIRAの事もあるので、除草剤などにも、爆発を抑えるための化学薬品を加えて製造されていたようで、実際、何回、やってみても煙や炎がちらりと上がる程度で、子供がいたずらに買うような分量で、爆弾と言えるようなものは作れなかったと言います。

だんなの話を聞いていて、映画なども、よく世相を反映しているものだと感心しました。だんなの昔話が入ると、DVDを一時止めたり、一部あとずさりして、見直したりとしましたが、楽しいひと時を過ごせた映画鑑賞でした。

コメント

  1. miniさん、初めまして
    ジェイコブズ・アイランドのことを調べていて、こちらにたどりつきました。「小さな恋のメロディ」は私が初めて映画館で観た洋画でした。数年前にDVD買って、思い出したらちょこっと見てみるという感じでしたが、今度見るときは、もっと楽しめそうです。ありがとうございます!これからも、ブログ楽しみにしています。

    返信削除
    返信
    1. よしさん、始めまして。
      今は、綺麗なジェイコブズ・アイランド周辺も、この映画が作られた当時は、まだ、ぼろっとした感じを残していた事でしょう。初めての映画館体験の映画なら、それは思い入れありますよね。私も、また、時々、見たい気になると思います。

      削除

コメントを投稿