ロンドンでワクチン接種

エクセルセンターの前に立つドックランドの労働者を記念する銅像

イギリスでのワクチン接種は、すでに去年12月初めに、高齢者から始まり、かなり急ピッチで進んでいます。リスクグループに属するうちのだんなは、1月後半に受けました。3月中旬の現段階で、人口の3分の1がすでに、1回目のワクチンを受けているとの事です。

ワクチンの供給量と配布速度に、波と限度があるため、できるだけ多くの人間に少なくとも1回目の接種を行おうと、イギリスでは、1回目の接種と2回目の接種の間隔を、製造業者から勧められている3-4週間ではなく、3か月とかなりのはばを取っています。実際のところ、3か月くらいの間隔を開けた方が、効き目があるという説もあるし、1回目の接種だけで、コロナ重症にかかる可能性はかなり減るらしく、全おとな人口に、ある程度の感染抵抗力を与えるには、これは、悪い対策ではないと思います。

さて、先週頭から、私の年齢グループにも、イギリスの医療機関であるNHSから、1回目のワクチンのお誘いの手紙が来たので、さっそくオンラインでべニューを探し、先週中に打ってきました。近場のワクチン接種所を探したのですが、この周辺では、車で行ける場所以外(私は運転せず、10か月近く動かしていないだんなの車は車検切れ)、今のところ空きがなく、早めに終わらせたかったので、はるばる1時間かけて、ロンドンのエクセル・センターを選び、お出かけしました。(エクセル・センターについては、過去の記事「ロイヤル・ビクトリア・ドック」まで。)

だんなを含めた、すでに接種を受けている近所の人たちは、皆、近くの歩いて行ける家庭医からの電話連絡を待ってから、そこで受けたようですが、いつになるかわからない連絡を待っているのも嫌だったので。特に今は、すでに1回目を受けた人たちの、第2回目の接種も始まっているため、家庭医もてんてこ舞いのようですし。

ロンドンへ向かうがらがら電車

とにかく、電車というものに乗るのは実に1年ぶりで、やや、緊張。混んでたらどうしよう、マスクをしていない人が沢山いたらどうしよう、と多少の不安はあったのですが、テレワークを基本としているロックダウンのイギリスで、必要のない人がむやみやたらに動き回ることは禁じられているため、ロンドン行の電車はそれは静かでした。行などは、乗り込んだ車両には、私だけ。

エクセルセンターに行くには、旧オリンピック・スタジアムのあるストラトフォード(シェイクスピアの故郷とは違います)で乗り換え、地下鉄、DLR(ドックランズ・ライト・レイルウェイ)と乗り返し、カスタムハウス駅で下車。こちらも、かなりガラガラでした。この駅で降りたのは、4,5人で、そのままワクチン会場へと向かったのは、見る限りにおいて、私と、前を歩いていたおじさんだけでした。(このおじさんは、トイレに向かったのも一緒なら、帰りも同じ電車だったのが、可笑しかった。)

会場に入って、「1時間早く着いちゃった。」と受付の人に言うと、「いいから、いいから」と、接種所への方角を教えてもらい、普段は展示場として使用される、だだっ広いホールの中に、5,6人の列ができていたので、まず、そこに並び。列を管理していた人に、「今日、空いてるね。」というと、「日によってむらがあるからね。」との返事。いくつか設置してあった机で、予約番号を確認。その後、さらに、隣のホールへと歩いて行き、いくつかの接種用ブースが並ぶところに出ると、案内係の人が、「それじゃ、ブース6に行って。」指さされた方を見ると、インド・パキスタン系のお兄さんが、6と書かれたブースの前で、手を振っていた。中へ入り、お兄さんに、NHS番号や住所などを教え、彼は情報を確認した後、「アストラゼネカのワクチンを打ちます」。その後、そばにいた、イスラム教風のスカーフを被ったお姉さんが、「アレルギーはありますか?」などいくつかの質問。最後に、彼女は、「これから、本当にワクチンを打ってもいいですか?」これには、私はにやけてしまいました。この期に及んで、びびって、「やっぱり、やめた。結構です。」なんて人がいるのだろうか。「そういう人いるんですか?」と聞いてみようかとも思ったのですが、それはやめて、「イエス」とだけ言いました。接種は、殆ど痛みも感じずあっという間の出来事。センターへ入ってから出るまで、トイレ時間もいれて、30分もかからなかった気がします。また、アストラゼネカワクチンは、ファイザーのように、接種のあと、15分待機する必要もなく、とっとと会場を去りました。私の2回目の接種は、6月頭となります。第1回目の接種後、効き目が出始めるのは、約3週間後。この間に、大胆になり、ぽこぽこ沢山出かけて、コロナになってしまったという話もあるようなので、油断大敵。

ちなみに、ワクチン会場で受付や案内をしているのはほとんどボランティアの人たちで、こういう地味なボランティアを積極的にやる人たちもえらいなあ。みな、感じが良かった。

強風だったのですが、気持ちよく晴れた日で、久しぶりのドックランドの景色を楽しむため、しばしふらっと周辺を歩いてから、駅へ向かい。多少、電車を使うのは怖かったけど、来てよかったと思いながら。いつかはまた、前のように頻繁に電車に乗り地下鉄に乗り、動き回らねばならない日が来る。その時への下準備になった気分もあります。

今のところ、この国で使用されているのは、日本でも使われ始めた、ファイザー社(ドイツのビオンテックのリサーチに基づく)とアストラゼネカ社(イギリスのオックスフォードのリサーチに基づく)のもの。前者の方が、効果が高いと言われていますが、ファイザーワクチンは、イギリスで、ゲットしてある絶対数がアストラゼネカに比べ少ない上、供給も今のところ、かなり波があります。どちらを打ってもらえるかは、その日の運。一般人が自分で、あっちがいい、と選ぶことはできません。うちの通りでは、知っている限り、一番最初に接種を受けていた、80歳以上の老人2人がファイザーだと言っており、約3週間前に受けたお隣さんは、夫婦ともアストラゼネカ。うちのだんなもアストラゼネカ。私も上述の通り、アストラゼネカでした。知り合いもほとんどがアストラゼネカ。ファイザーが良かったけど、現在、1回目にファイザーを受けた人たちの2回目接種も始まっている事から、ますます数が足りていないのでしょう。まあ、アストラゼネカでも、やっておけば、重症になる可能性はぐっと減るので、ないよりはずっといい。そうしているうちに、おそらく、他のもっと効き目のあるワクチンも段々に増えていく事でしょうし。

ただ、ちょっと不満に思うのは、アメリカでは、バイデン大統領がファイザーを、ファルーチ氏がモデルナを受けたと公表したのに対し、こちらでは、女王を初め王室のメンバーが、どちらのワクチンを受けたかを言わない事ですね。私は、絶対ファイザーだと思います。もし、アストラゼネカであれば、イギリスが開発したものであるため、かなり大々的に、女王は、イギリス開発のアストラゼネカワクチンを接種、イギリスのすぐれた科学のなせるわざ、なんて大々的に宣伝すると思うのです。何も言わないで、ワクチンを受けたとだけいうこと自体から、もう、より効果の高いファイザーだなと、想像はつきます。まあ、現王室はもともとドイツ出身だし、ドイツのビオンテックがリサーチをしたファイザーワクチン使っても言い訳が立つというのはありますがね。

もっとも、あからさまに、アストラゼネカワクチンが、ファイザーやモデルナに比べ劣るという話が流布しすぎると、ワクチンを拒絶する人が増えるという問題もあるのでしょう。現に、EUが今、そんな状態の様です。EUは、初めの頃、アストラゼネカは65歳以上は効かない、という根拠のない断言をしてしまったため、いくつかの国で、ワクチンを受けたがる人が少ないという問題が起きている。実際のところは、65歳以上のデータが少なかっただけで、どの年代にも効果はあるという話だったのですが。特にフランスなどでは、今、急速に感染が再び広がっているのに、ワクチンを嫌がる人口がとても多いようで、大変なことになるのではないでしょうか。

そして、今度は、デンマークなど、いくつかのEU諸国で、アストラゼネカワクチン接種後、血栓で死者が出たというニュースが流れ、ますます、一般人をおじけづかせることとなるかもしれません。実際のところ、ワクチンと血栓に関係があるのも疑わしく、更には、現在アストラゼネカの接種を受けた人口に対する血栓ができた人の割合は、一般人口の中で血栓で問題が出る人の割合より、ずーっと少ないらしいのです。このワクチンに関する、ある種のヒステリアがEUで広がっている感じです。飛行機が落ちるとセンセーショナルなニュースが流れ、飛行機は危ない、と思ってしまうようなものですかね。実際は、車に乗って移動する方が、リスクは高いのに、判断が印象によって狂わされる。それとは別に、ロックダウンであまり外へ出れない国々では、運動もままならず、それこそ血栓などが増えてしまうかもしれないので、まめに運動しましょう。

イギリスに限っては、一部、エスニックマイノリティーグループを除いては、積極的に接種を受けている人が大半で、実際、知り合いの中で、ワクチンを拒否したという人は、今のところいないです。もっとも、これだけの多くのコロナによる死人を出している国なので、コロナにかかり重症化するリスクの方が、ワクチンで変なになるリスクよりはるかに高いというのを認識している人が多いのかもしれません。もっとも、ワクチン接種の年代が下がっていくとどうなるかは、わかりませんが。

アストラゼネカの利点は、ファイザーより扱いやすいことと、現行の他のワクチン製造社と異なり、営利を目的としないというスタンスを取ったため、ファイザーより安価である事。まあ、多少効果はおちても、超スピードで、使用する価値のあるワクチンを、なんとかかんとか、作り上げたことだけは、イギリスもまだ捨てたものではないと言えるかもしれません。

最後に、副作用について一言。アストラゼネカを受けた人の中で、翌日、風邪の様なだるい症状などを訴える人はかなりおり、私も友達に注意されていたのですが、やはり、翌日は、夕方まで、ぐったりとし、元気が出なかったです。まあ、どんなワクチンでも、よくある話でしょう。ファイザーについては、経験談はできませんが、通りの老人は二人とも何ともなかったといばっていました。先日、ラジオで聞いた話によると、アストラゼネカは1回目接種、ファイザーは2回目接種で副作用が強く出る人が多くいるという事。まあ、これも個人差あるのでしょうが、怖がる必要があるような事態は、今のところ、イギリスでは起こっていません。接種された腕の鈍痛は、4,5日続くかもしれませんが。大体、利き腕でない方に接種するという人が多いですが、寝るときに、どちらかの側を下にして寝る癖のある人は、その反対側の腕にした方がいいかもしれません。左下に寝る癖のあるだんなは、右腕にやってもらってました。

追記

これを書いた後、アストラゼネカのものは、稀ではあるものの、脳内の血栓を引き起こす可能性があるという結論が出ました。特に、最初に考えられていたように高齢者ではなく、年齢が低い人の方が、そのリスクは高まるという事で、40歳以下は、他のワクチンを与えた方がいいという話です。似たタイプのジョンソン・アンド・ジョンソンのものも同じリスクがあてはまるようです。いずれにせよ、やはり、コロナにかかり重症化するリスクと、ワクチンで血栓になるリスクでは、前者が高いので、打つようにというアドバイスは変わっていませんが。まあ、アストラゼネカを使っていない日本にはあまり関係の無い話でしょうが。世の中、人間が生きていくうえで、リスクがないものというものは、ほぼ存在しないのかもしれません。

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