セント・ジェームズ・パーク早春のスケッチ

東は、官庁街ホワイトホールの裏手から、西はバッキンガム宮殿にいたる、やや小さめの細長い公園が、セント・ジェームズ・パーク(St James's Park)。

ヘンリー8世が、じめっとした沼地だったというこの土地を、ロンドン初の王室の公園としたのが始まり。名の由来は、13世紀、この地にあったハンセン病患者のための病院の名からきています。エリザベス1世は、この公園で、多くの派手やかな催しを楽しみ。ジェームズ1世は、水はけを向上。イギリス内戦、王政復古の後、チャールズ2世は亡命していたフランスの公園の影響を受け、公園に芝を植え、並木を植え、彼の時代に公園は一般に公開されるようになります。19世紀前半、リージェント・ストリート、リージェンツ・パークの設計でも知られるジョン・ナッシュが、もっとロマンチックな、自然な雰囲気の造園を行い、現在の姿へ。

私の、この公園の思い出は、英語のクラスで一緒だったイタリア人の友達が、いつも、ここの池のアヒルやカモ達に、ランチのサンドイッチの残りをあげていた事。彼は、ホームステイをしており、ホストマザーが毎日お昼用に、手作りサンドイッチを持たせてくれたのは良いが、それがあまりに不味くて、中のハムやレタスをちょっと食べただけで、しなっとしたパンはすべて、セント・ジェームズ・パーク湖の鳥達の餌と化し。「サンドイッチの様な簡単な食べ物を、あれほど不味く作ることができるなんて・・・ある意味では、技術を要するんじゃないか・・・」と文句を言いながら、「あまりに不味くて食べられなかった。」と当のホストマザーには言えないまま、いつも空っぽのタッパーウェアを持って帰り、全部平らげたふりをしていたため、哀れ、彼は、夏の滞在中ずっとサンドイッチ攻撃に悩まされていたのでした。

桃色の花が、まだ葉の無い枝に、ちらほら咲き始めています。バッキンガム宮殿の、道を隔てたすぐ前のものも、ほのかに花びらを広げ始め、観光客や、ジョギングする人々、オフィスの休憩時間のひと時を過ごす人たちを見下ろし。

バッキンガム宮殿には、国旗のユニオンジャックではなく、王家の旗、ロイヤルスタンダードが早春の風に翻っていたので、女王はご在宅です。

白いクロッカスが、一面に咲いていましたが、こちらはそろそろ終わり・・・

バトンタッチを受け、ダファデル(ラッパスイセン)の黄色い顔が、徐々に明るく広がり始めています。

鮮やかな色の花達が並ぶ花壇。

ここの花壇、いつ覗いても、灰色リスたちが、あちらこちらほじくり返して、木の実を掘り出しているのか、埋めているのか、それとも、ただ砂遊びがしたいのか。

淡い花のピンクと空の水色が溶けた水彩画の中を歩くような、セント・ジェームズ・パークのひと時でした。

*セント・ジェームズ・パークのオフィシャルサイト

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