ウェストベリーのホワイトホース

 前回のポストで、オックスフォードシャー州のアフィントンのホワイトホースのヒルフィギュア(丘絵)の話をしましたが、今回は、ウィルトシャー州のホワイトホースの丘絵に話題を移します。人呼んでウェストベリーのホワイトホース(Westbury white horse)。

ウィルトシャー州内には、かなり多くの白馬の丘絵が存在しますが、その中では、このウェストベリーのものが一番古く、また、最も景勝の場にあるという事。古いと言っても、アフィントンのものに比べれば、ぐっと新しく、最初に彫られたのは、1600年代後半ではないかと言われています。18世紀以前に、この丘絵に言及した記録は残ってないそうで。

おそらくは、アルフレッド大王が878年に、グスルムに率いられたデーン人の軍を破ったエサンドゥーンの戦い(Battle of Ethandun)、を記念するため彫られたのではないかと。この戦いは、または、エディントンの戦い(Battle of Edington)とも呼ばれていますが、戦いがあったとされるのは、この白馬の丘から2,3キロの場所ではなかったかと言われています。なんでも、17世紀には、アルフレッド大王人気が高まり、サクソン人がバイキングに勝利を収めた戦いを、白馬で記念するというのが流行った(?)という説明が、丘絵のそばの情報板に書かれてありました。これは、当時は、アフィントンのホワイトホースが、こうしたデーン人を負かした戦いを記念して、サクソン時代に作られたものだと信じられていたためのようです。アフィントンのホワイトホースは、今では、もっとずっと古い青銅器時代のものだと判明していますが。

ウェストベリーのホワイトホースは、1778年に、再び彫りなおされ、馬より、ラマと言った感じであったオリジナルのものより、この時、もっと馬らしく、現在の姿に近いものに、なったと言います。さらに、それから約100年後に、形が崩れ始めたのを、再び修復して、ほぼ現在の形に。今のホワイトホースは、白いペンキを塗ったコンクリート板をはめ込んで、固められていますが、これは1950年代に、メンテナンスの経費を落とし、手入れをラクにするために行われたそうです。

車内から取ったストーン・ヘンジなので、ちょっとぶれてます。

このホワイトホースの丘は、だだっ広いソールズベリー・プレイン(ソールズベリー高原)の西端に位置し、出かけた時は、この高原を突っ切って行き、途中、車内からストーンヘンジが見えました。

やはり、ホワイトホースを見るだけというより、ハイキングも目的であったため、ブラトン(Bratton)というふもとの小さな村に車を止め、丘の頂上めがけ、歩き始めます。丘の中腹にかわいらしい教会があり、日曜日の午前中で、11時から礼拝があったため、その直前に歩き始めた私たちは、その始まりを知らせる鐘の音を聞きながら、わりと急な坂を、まずこの教会めがけて登りました。小さな村のわりには、参拝者が、多く内部に集まっていました。

教会を去り、うっそうと木々のしげる中、片側に急な坂を見ながらゆるゆる登っていくと、視界が開け、丘の頂上が見え始めます。

上の写真は、ホワイトホースの頭上から取ったものですが、近づくと、コンクリート板だというのがはっきりわかります。継ぎ目に、ほそぼそと芝が生えていますし。

いい感じで、景色とホワイトホースが眺められる場所のベンチで、疲れた足を一休み。

頂上のホワイトホースのそばには、大きな駐車場があるので、歩いている時はほとんど人を見ませんでしたが、ここまでくると、人の数がぐっと増えます。日曜だというのもあり、丘の上で、凧揚げなどをして遊ぶ子供連れなどもいました。

ソールズベリー・プレインは、一部、軍の練習の地として使われており、時にタンクなども出没するのですが、ここもハイキング路のわきのだだっ広いエリアに、「銃砲が届く範囲、入るな」の掲示がある場所がありました。

周囲をぐるりと一周して、ブラトンの村に戻ると、地元のパブで昼飯を済ませ、すぐ隣のエディントン村にある、教会(Edington Priory)を見に立ち寄りました。ちょっと大聖堂めかした立派な内部だと、ガイドブックに書いてあったので。・・・たしかに立派でした。記念碑なども手がこんでいる。

立地場所も、牧歌的で、教会の道路を挟んだ向かいには、どうぞお使いくださいという札のある、ピクニックエリアが設けてあります。けだるい夏の日などに、ここで、ゆっくりランチを食べたりお茶を飲んだりして過ごしたい。

エリック・ラヴィリオスのカレンダー

今回、アフィントンのホワイトホースの他に、このウェストベリーのものも訪れたいと思った理由のひとつに、今年のカレンダーがあります。今年は、エリック・ラヴィリオス(Eric Ravilious、1903-1942)というイギリスの画家、版画家の作品を載せたカレンダーを買って壁にかけてありますが、3月に使われていたのが、この「The Westbury Horse」という題名の水彩画だったのです。これを眺めつつ、なんとなく旅情をそそられていました。

描かれたのは1939年ですので、まだコンクリート板がはめ込まれていなかったのでしょうね。背景を煙を立てて汽車が走っている姿が描いてあります。実際に、この場所から景色を眺めている時、今は当然、蒸気機関車ではありませんが、電車が走ってゆくのが見えました。うちのだんなは、昔、この路線の電車に乗って、サマセット州に住んでいたおじさんのところに遊びに行き、電車から、ホワイトホースを見た覚えがある、ような事を言っていました。

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