西洋オキナグサ


4月の日光を浴びて咲くこの花の、日本での俗名は翁草(オキナグサ)。花が終わった後の密集した種に、長い白い毛が付いて、風に吹かれている様子が、老人の白髪のようだというので、ついた名だそうです。葉も花びらも、柔らかな白い毛でおおわれています。少々うつむき加減でも、綺麗で、パッと目を引く紫の花は、老人という感覚より、おしゃれなボンネットをかぶった貴婦人が、はにかんでいるようで、コケティッシュな感じさえあります。

所変わって、イギリスでのこの花の俗名は、パスク・フラワー(pasque flower)。この「pasque」というのは、「イースターの」を意味する「paschal」という言葉から来ており、イースター(復活祭)の時期に花開するために、こう呼ばれています。西洋オキナグサの、正式なラテン語の学名は、Pulsatilla vulgaris(プルサチラ・ヴァルガリス)。パスクフラワーで大体の場合は通っているので、学名で呼ぶ人はほとんどいませんが。ついでながら、イタリア語でイースターは、パスカ(Pasqua)。

西洋オキナグサは、もとは野生植物で、イギリスで一番美しい野生の花などとも言われます。もっとも、何をもって最も美しいとするかは、個人差があるでしょうが、野に咲いていたら目立つのは確かです。今ではイギリスで、野生のパスク・フラワーを見られる場所はごく限られていてしまっているようで、実際、私は庭園以外では見た事がありませんが、もし、野生で咲いているのを見られるとすれば、主に、チルターン丘陵コッツウォルズ、イーストアングリアあたりの、チョーク層、石灰層の草原地帯だという事。ローマ人やデーン人(バイキング)が、戦闘で流した血がしみ込んだ土地から生えてくるという言い伝えがあるのだそうです。


我が家の西洋オキナグサは、去年の4月に購入したもの。多年草です。冬の間、葉は枯れて消えていたのが、早春に芽を吹き、今年もちゃんと、その名の通り、イースターに合わせて、先週末から咲いてくれました。去年植えた鉢で、そのまま、移し替えもせず、しかも、冬の間、あまりに乾燥している時に水をやった以外は、ほとんどなーんの手入れもしなかったのに。野生では、絶滅寸前、見られなくなっているのなら、せめて、我が家では、株を分けて、少しずつ増やしていきたいところ。今年は、ちょっと大き目の鉢に植え替えます。つぼみもまだ沢山ついており、翁草の名の由来となる花の終わった後の種の風情も面白い植物ですし。

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