ジーザス・クライスト・スーパースター


「ジーザス・クライスト・スーパースター」は、イエス・キリストの十字架上の死に至るまでの最後の1週間(受難週)を、作曲アンドリュー・ロイド・ウェバーと作詞ティム・ライスのコンビがロック・ミュージカル化した1971年初舞台の作品。先週、折しも、イースター(復活祭)の週末に、この作品の最近の舞台公演を、ユーチューブにて観劇できました。

というのも、新型コロナによる世界的ロックダウンで、各地の劇場も閉鎖し、それは多くの人たちが自宅で過ごすこととなっているため、「The show must go on」と銘打って、2週間前から、アンドリュー・ロイド・ウェバーの数々のミュージカル舞台公演を、イギリス時間では、金曜日の夜7時から48時間、無料でユーチューブで配信してくれるという有り難い企画のおかげです。イギリスのナショナル・シアター(National Theatre)も、1週間ごとに演目を変えての無料舞台公演を配信してくれています。これを利用しない手はない。

私は、アンドリュー・ロイド・ウェバーのミュージカルは、見た気になりながら、見ていないものがほとんどです。「ジーザス・クライスト・スーパースター」も、最初から最後までは見た事がなかったのですが、それは、有名なミュージカルのこと、いくつかのメロディーは知っていました。特に、テーマ曲的「スーパースター」の、やまの部分、

Jesus Christ
Jesus Christ
Who are you? What have you sacrificed?
イエス・キリスト
イエス・キリスト
あなたは何者だ?あなたは何を犠牲にしたのか?

とか、

イエスが、逮捕される前ゲッセマネで、「なぜ死なねばならぬのか」と悩みながら叫ぶように歌う部分、

I'd want to know, I'd want to know, my God
神よ、私は知りたい、私は知りたい

くらいは、どこかで聞いたのが頭にこびりついていて、気が付くと時々、歌っていた事もあるのですから、不思議なものです。

ミュージカルは、イエス・キリスト、イスカリオテのユダ、マグダラのマリアの3人が軸となっていますが、イエスよりも、実際は、ユダが主人公ではないか、という雰囲気を強くかもし出しています。

この公演では、舞台は現代に置き換えられており、イエスは、金融危機の際に起こった経済的不平等に対するプロテストのオキュパイ・ムーブメントのカルト的リーダーのような雰囲気で、周りの従者や使徒たちも、みな、ヒッピー風。イエスが、カリスマ・リーダーとして、徐々に神性をおびて、周囲の者に持ち上げられるようになっていく中、社会的解決は見つからぬまま、自分たち民族に、政府が取り締まりを強化し、不必要な敵視を受けるのを心配し、憤りを示すユダ。確かに、イエス役の男性は、ムーブメントのポスター・ボーイとしてはぴったりの、チェ・ゲバラ風のいい男でした。

やがて、ユダは、イエスを社会の不安分子として目をつけている政府に、居場所を通報し、裏切るわけですが、罪の意識にさいなまれ、首つり。自殺の前に、「神にキリストを殺す道具として使われた、なぜに自分を選んだのか」という内容の歌も手伝い、イエスより、ユダの方に同情を寄せてしまいました。ただ、ユダの役者のメイクが、アダムズ・ファミリーのメンバーような感じで、アップになるとご愛敬、という一面もありましたが。


イエスの心の支えとなり、常に香油を彼の頭などにマッサージ(!)してあげて、子守歌の様なやさしい歌を歌って聞かせているマグダラのマリアは、どこかで見た事がある顔だ、と思っていたら、もとスパイス・ガールズのスポーティー・スパイス、ことメルC(上の写真中央)でした。途中で、彼女がジャケットを脱ぎ、立派な筋肉のついた二の腕の入れ墨を見た時に、気付きました。

マグラダラのマリア(英語ではメアリー・マグダリン)という女性は、新約聖書内では、イエスの従者として、死刑を他の女性たちと見守り、イエスの復活を目撃した最初の人物の一人とされていますが、その他の彼女に関する記述はあまりなく、どういう人物であったのか、イエスとの関係はどういうことであったのか、不明の様なのです。が、時と共に、彼女の伝説に尾ひれがついていき、罪深い過去なる女であった、改心した売春婦であった、最近では、実はイエスと結婚していた、とか、聖書から独り立ちした女性像が確立しています。ミュージカルの中でも、おそらく売春の過去のある女として描かれていました。

さて、今週末の「The show must go on」の演目は、「オペラ座の怪人」。こちらも、見に行こうと思いながら、ずーっとそのままになっていたミュージカルです。イギリスでは、今夜7時からの放送で、これは、なぜか、24時間だけの発信となるそうなので、見逃さないようにしないと。また、ナショナル・シアターの今週の演目は「宝島」。こちらも楽しみです。ユーチューブで、それぞれ、「The show must go on」、「National Theatre」で検索すると、すぐ探せると思いますので、興味がある方は、観劇しましょう。日本語字幕は、当然、でませんが!

*ジーザス・クライスト・スーパースターの中にも描写される、イエスの受難週中の出来事に関する過去の記事は、下の通り。

キリストはロバに乗って

キリスト最後の夜

手を洗うか足を洗うか

風見鶏

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