ふくろう三昧

イギリスでは、フクロウのモチーフの入った小物が大人気です。わりと昔から、フクロウ模様グッズは出回っていましたが、特にここ数年、その人気ぶりには、目を見張るものがあります。可愛いインテリアや雑貨の店にはいると、まず目に付くのが、フクロウ柄ですから。カップ、洋服、バッグ、クッション、ドアストッパー、ぬいぐるみ、エトセトラ~エトセトラ~。

かくなる私も、フクロウは好きで、上の写真に、手持ちのフクロウグッズを並べてみました。気に入っているワンピースの柄もふくろう。去年のクリスマスにも、小さなフクロウの飾り物を買ったし、以前から持っている、青いシリアル・ボウルの縁にも3羽のフクロウがとまっている。(まあ、このボウルは、友人から、おフランス土産にもらったものなので、イギリス・グッズではないのですが。カフェオレ・カップとしても使えそうではあるのですが、角度を考えずに、カップを口に当てがばっと傾けると、ふくろうに鼻を突かれます。)鉤針編みの名手の日本人の友達に、最近作ってもらったクッションもフクロウ。

フクロウというと、森の賢者のイメージがあります。くまのプーさん(Winnie-the-Pooh)に出てくるフクロウも、森の動物の中で一番物知りという事になっていました。少なくとも、他の動物達はそう思っていた・・・。

"And if anyone knows anything about anything," said Bear to himself, "it's Owl who knows something about something."

「誰かが何かについて、何か知っているとしたら」とプーは独り言を言いました。「それは、オウルだ。オウルは、何かについて、何か知ってるもの。」

動物仲間の尊敬を受けながらも、フクロウは、言葉のつづりは苦手で、長い文章を書く時は、クリストファー・ロビンに助けてもらっていたのですが。プーが、イーヨーの誕生日に、はちみつを入れてあったつぼをプレゼントにあげる事にし、そのつぼに、「A Happy Birthday」と書いてもらおうと、フクロウの家に持って行ったところ、フクロウが書いたのは、

HIPY PAPY BTHUTHDTH THUTHDA BTHUTHDY

という、妙に長い、ぐちゃぐちゃの綴り。それでも、字の読めないプーは気がつかない。

Pooh looked on admiringly.
"I'm just saying A Happy Birthday," said Owl carelessly. "It's a nice long one," said Pooh, very much impressed by it.
"Well, actually, of course, I'm saying A Very Happy Birthday with love from Pooh. Naturally it takes a good deal of pencil to say a long thing like that."
"Oh, I see," said Pooh.

プーは、尊敬の眼で(オウルが字を書くのを)見つめていました。
「なに、ただ、ハッピーバースデーと書いているだけさ。」オウルは、事も無げに言いました。「とても長くて、立派に見える。」と、いたく感心したプーが言います。
「ふむ、もちろん、実際に書いているのは、プーより愛をこめてハッピーバースデーだけれどね。当然、これだけ長い文を書くと、えんぴつも沢山使うことになる。」「ああ、なるほど。」とプーは言いました。

愉快です。「わー、ボクより物知らなーい。」と子供たちが笑って、登場する動物達が愛しくなるのがわかります。

一方、イギリス原生の赤りす、ナトキンを主人公にした、ビアトリクス・ポターの「りすのナトキンのおはなし」(The Tale of Squirrel Natkin)に登場する、ふくろうのオールド・ブラウンは、プーさんのオウルより、もっと怖く、最後には、悪ふざけが過ぎたナトキンを、がしっと足でつかみ、皮をはいで、ご飯にしようとするのを、ナトキン、しっぽが半分切れてしまうものの、命からがら逃げ出すのでした。

ふくろうは、サイレント・フライヤーなどとも言われ、飛行の際にはまったく音がしないと言います。ハトなどが、大きな音を立てて飛び立つのと大違い。自分の羽の音で、獲物の動く音を聞きそびれないように、また、獲物にも、自分が近づいていくのを聞き取られないように。音無しで飛べるフクロウの羽の弱点は、他の鳥たちの羽と違い、ウォーター・プルーフでない事。そのため、フクロウは、雨が非常に苦手な鳥なのだそうです。だから、比較的、雨の入ってこない、納屋の中や、木のほらの中を住処とするフクロウたちが多いのでしょう。

フクロウは基本的に、夜でも、よーく獲物が見えるように目玉が大きいわけですが、種によっては、眼球が頭蓋骨の70%近くを占めるのだそうです。人間の眼球が頭蓋骨にしめる割合が5%だというので、いかに大きいかわかります。

また、首をくるくるっと回すのもご愛嬌ですが、特殊な首の作りのおかげで、顔を270度回せるそうです。これで、後方まで、良く見えますからね。

さて、イギリスには、5種の野生のフクロウがいます。以下フクロウの絵と写真は、すべて、RSPB(王立野鳥保護協会)のサイトより拝借。

tawny owl(モリフクロウ)

イギリス内で一番数が多いフクロウで、私が、実物を見たことがあるのは、これだけ。「りすのナトキンのおはなし」のオールド・ブラウンは、どう見ても、このモリフクロウですね。tawnyという言葉は、オレンジがかった茶色を意味します。

barn owl(メンフクロウ)

このフクロウが一番好き、というイギリス人は多いのではないでしょうか。私もそうです。お面の様な,ハート形の白い顔が独特で、ミステリアス。暗闇の中飛んでいるのを見たらすぐに、「あ、バーン・オウル!」と分かるでしょうが、数も比較的少ないらしく、いまだ、遭遇した事はありません。

short-eared owl(コミミズク)

プーさんに出てくるフクロウは、イラストの感じから、このコミミズクに一番似ている気がします。日中にも活動するフクロウで、数の減少が案じられている種のひとつ。一つの場所に、ずっと居を構えるより、比較的移動型のふくろう。

long-eared owl(トラフズク)

イギリス国内では、南部より北部に多いフクロウ。冬には、北欧から飛んでくるものもいるようです。針葉樹などに生息する事も多く、ひっそりとした生活ぶりで、イギリス内のふくろうでは、一番生態がわかっていないということ。耳のよう突き出している羽は、実は耳ではありませんので、名前に偽りありです。頭巾みたいですね。

little owl(コキンメフクロウ)

目がきょろっと素っ頓狂な顔。上記4種がイギリス原生であるのに対し、このフクロウは、イギリスには19世紀に入ってから導入され現地化した新参者です。名前の通り、イギリス国内では最小。日中も見る事ができるということです。テレビでこのコキンメフクロウの夫婦が、住んでいる崩れかけた納屋の壊れた屋根から、ぜんまい仕掛けのおもちゃの様に、ぴょこぴょこ顔を出したり引っ込めたりしている様子を見た事がありますが、それは、それは、おちゃめでした。

なお、ハリー・ポッター映画に登場する、ふくろうのヘドウィグ(Hedwig)には、シロフクロウ(snowy owl )が使用されています。シロフクロウは、稀に、もっと北の国から、イギリスへ飛んで来ることもあるようですが、この国の在住者ではありません。

現在のイギリスでのフクロウ・グッズのブームがどのくらい続くか分かりませんが、一度くらい、実際に、野生のバーン・オウル(メンフクロウ)が無音で飛行する姿を見てみたいものです。

コメント

  1. ウチにも集めたわけでもなくフクロウがいくつか居ます。フクが福に通じるのか幸福のおまもりとも言われています。かぎ針編み、道具が少なくて済むところが良いですね。冬の間に何か作ってみようかな。

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    1. そうか、日本は、福ロウですね。

      私は、2年ほど前、編み物に挑戦し、1,2ヶ月で、こりゃだめだと挫折しました。鉤針編みも、おそらく、才能無いです。雪の冬季に作品作って下さいよ。そして、マーケットで売るとか。上手い人は、テレビを見たりしながら作業できるようなので、手間だ、時間がかかる、という感覚がないのでしょうね。

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