デべナム

サフォーク州のデべナム(Debenham)という村を訪れました。

イギリス人にデべナムというと、ほとんど皆、老舗デパートのデべナムズ(Debenhams)を思い浮かべると思います。デべナムズの創立者の一人は、ウィリアム・デべナム(William Debenham)という人で、彼の名前が会社の名となったわけですが、この人は、サフォーク州の別の村の出身のようです。でも、デべナムという名は、苗字としては非常に稀な名で、他に聞いたことがありませんから、おそらく彼のご先祖様は、このデべナム村の出身ではないでしょうか。村自体の名前は、村の西側を水源とするデベン川(River Deben)からきています。デベン川は、デべナムの村を流れ、やがては、いまだに起動している潮力水車のあるウッドブリッジを通り、北海へ流れ出ます。

さて、ここへ行くのには、私と友人は、サフォーク州の州都イプスウィッチからバスに乗って行きました。イプスウィッチからデべナムへは、同じ会社によって運行されている、少しだけルートを異にする2つの違う番号のバスが通るのですが、時間的に、行と帰りで、この違う2本のバスを使う事になりました。往復でチケットを買うと少しだけ安くなるので、行に、バスの運ちゃんに、「デべナムまで往復で買ったら、帰りは別の番号のバスで戻ってもいいの?同じ会社でしょ?」と聞くと、運ちゃん「いいような気がするけどね、ぼくは。運転手なんて、そんなチケットじろじろ見ないし。」「え、はっきりわからないの?」「うーん、へへへ、僕はいいと思うんだけどね。ま、君たち次第だよ。」「・・・。(心の中では、あんたねーーー!と叫んでいました。)」よく言えば、おおらか、悪く言えば、かなりいい加減な返事に、「ここはイギリスじゃ!」と改めて思ったのです。帰りのバスの運ちゃんが厳格な人で、とがめられ、別料金を請求されても嫌なので、片道ずつ買うことにして乗り込みました。チケットには、たしかに、乗ったバスの番号も印刷されているので、それで正解だった気がします。

バスを降りて、まずデベン川が、ちょろり、ちょろちょろ流れだしている辺りを見に行きました。村のはずれから西へむかう小さな田舎道は、デベン川が水源から流れてくる川底にもなっていて、私たちが訪れた時は、川というより、水たまりがあちこちにたまっているただの田舎道・・・という感じでしたが、雨の後などは、わりと水量多く流れて来るようです。あまり車が走っている気配はないのですが、一応は、車も、川と道を共同して通れるようになっています。長靴を履いていたら、しばらく、びちゃびちゃと水をはねかせて、水源方向に歩いても良かったのですが、ちらっと見た後、退去して村に戻りました。

昔は、デベン川は、小舟でしょうが、デべナムのあたりまで、navigable(船で上ってこれる)状態であったそうです。今は、船が行けるのは、もっと河口に近いウッドブリッジあたりまでのようです。

デべナムの村の中心は、やはりキャラクターあふれる古い家が沢山並んでいます。上の写真の右手の家には、「God Save the Queen」などと書いてある。

昔のギルド・ホールであったという、上の黄色い建物は、ベッド・アンド・ブレックファースト(B&B)になっており、今、売りに出ているようで、外にセールの看板が立っていました。イギリスの片田舎の村で宿を経営したい人、どうですか?でも、いかにも、観光客風な人間は、私たちくらいだったので、他に収入がなければ、商売成り立たないのかもしれません。さらにそのむこうにある、レッド・ライオンというかつてのパブの看板がかっている建物も、今は民家で、こちらも、売りに出ています。

売りに出ている・・・と言えば、上の写真中央の立派な石造りの建物は、1905年築という、かつてのタウン・ホールであったそうですが、こちらも、内部は改造され、家になっており、やはり、売りに出ていました。目抜き通りの、歴史的建物が3件も、一気に売り出されている、というのも奇遇です。

教会も愛らしく。さすがにこれは、売り出されていません。いまだ、ちゃんとした教会の役割を果たしています。

ヴィレッジ・サイン(村の看板)のデザインには、デベン川、教会、古い建物の他に、羊と小麦が組み込まれています。このサインのデベン川は、実際のぴちゃぴちゃの水たまりみたいな代物とはずいぶん違い、波まで立つ海のように描かれてますが・・・。昔はこうだった、というのでしょうか。

周辺を少しだけウォーキングしましたが、まずは、羊にご対面。

そして一面の小麦畑。もう収穫は終わっています。思うに、周辺のこうした農業地域が、たくさん水を必要とするため、この辺りのデベン川の水も少なくなっているのではないでしょうか。

村のすぐそばには、池や果樹園を組み込んだ自然保護地帯もあり、池の周りのたくさんのベンチには、何人かの村人たちがくつろいでいました。

バスの時間に間に合うよう、村の目抜き通りに戻り、また、イプスウィッチまで片道チケットを購入して、無事、帰りのバスに乗り込みました。

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