黄色い車の魅力

コッツウォルズでも人気の村、日本人観光客もたくさん押しかけるバイブリー(Bibury)での出来事。今年初めに、バイブリーの中でも一番有名な一連の石造りのコテージ、アーリントン・ロー(Arlington Row)に隠居して住んでいた84歳の老人、ピーター・マドックス氏の黄色の車が、何者かによって破損されるという事件がありました。ボンネットには「MOVE」(動かせ)という字が、ひっかいて刻み込まれ、ガラスが割られるなど、6000ポンドにのぼる被害。

事の始まりは、2015年に、バイブリーを訪れ、アーリントン・ローの写真を撮った男が、氏の黄色い車を目障りだと思い、黄色い車が写ったアーリントン・ローの写真をインターネットに載せ、「絵葉書のような通りなのに、この醜い黄色い車のおかげで景観が損なわれている」と書いた事に始まるようです。他にもツイートで、何人もの観光客が、「あの黄色い車、本当に邪魔だ」、「なければいいのに」、云々の意見を表すようになり、ついには、何者かによって、氏の車が破損を受けるに至ります。

私も、時々、きれいな景色の中に、でかいトラックなどがぼーんとあると、写真を撮るときは、なんとかそれが入らないように、苦心して撮ったりしますが、小さな黄色い車なら、それほど気にならないですね。一種のアクセントになることもあり。それに、大体、その車を破損してやろうなんて思うほどのことでもない。インターネット上の、ソーシャルネットワーク内での狭い世界というのは、些細な事が、こだまして、妙に重大な事項に思えてくるのか、そうこうするうち、バイブリーの黄色い車は、一部の観光客の間で、憎しみの対象と化してしまったのです。バイブリーの村人たちは、ピーター老人に同情しているというのに。ピーター老人は、車破損後、もっとおとなしめの色の車に買い替えたようです。

バイブリーは、ちょうど2015年に、母親がイギリスに遊びに来たとき連れて行ったし、もしかして、私の取った写真にも写っているかな、と過去の写真を確認したら、ありました!

2015年バイブリー訪問の写真、たしかに黄色い車が!
写真右手の木の後ろにちょこんと写っているピーター老人の黄色い車!気が付かなかった・・・。しかも、この同じ写真、当ブログで、コッツウォルズ旅行の記事を書いたときにも、しっかり使っているのに。だんなは、「僕は気が付いたよ。他に車はなくて、一台だけだったから、色がどうというより、あの車がなければ、もっと昔の雰囲気は出るとは思った。」と言います。普段は、ほとんど、何にも気が付かないタイプの人間なのに、ほんとかな。

ともあれ、この黄色の車が、目障りだと毛嫌いされ、挙句の果てには、壊されたというニュースを聞いた、やはり黄色い車の持ち主の、マッティー・ビー氏は、憤り、全国の他の黄色い車の持ち主たちに呼びかけ、昨日、ピーター老人への支持を示すため、100台の黄色い車が一同に集まり、バイブリーを通過したというのです。本当は、もっと多くの黄色い車オーナーが、ラリー参加に申し込んだそうなのですが、安全のために、100台に制限したのだとか。この件に関する、BBCのニュース記事は、こちらまで。一番上の写真も、当サイトより。昨日(4月1日)のニュースだったので、エープリールフールの嘘ニュースかと、一瞬思ったのですが、本当でした。

黄色い車というのは、去年登録された車のうち、わずか0.46%にしか及ばないのだそうですが、黄色い車の持ち主は、明るい気分にしてくれる、と車に名前まで付けて大切にしているファンが多いのだそうです。ちょっと変わった色を選んだ、という連帯感から、他の黄色い車を見ると手を振ったりする、などという人も。ちなみに、この国で一番人気は白で、去年登録された新車のトップ10の色は、上から、白、黒、灰色、青、赤、銀、緑、オレンジ、茶色、そして黄色の順番。緑やオレンジの車より、路上を走っているのは、黄色の車の方が、多い気がするのですが。黄色は、ぱっと目を引きます。そのせいもあって、最も安全な車でもあるのだとか。

うちの通りにも一人、黄色い車を運転しているデイヴィッドというおじいさんがいますが、私とだんなは、彼のことを、陰で、「黄色い車のデイヴィッド」(Yellow Car David)とあだ名をつけて呼んでいます。デイヴィッドという人が、同じ通りに、もうひとりいるので、区別する意味もあってですが。これが、白い車や黒い車だったら、ニックネームには使えないですからね。バイブリーでの事件のように、憎しみの対象になる事はまれで、ちょっとコミカルで、スマイルの対象となる事の方が多い色の車です。車を買い替えようなんて思っている人、これを機に、安全で微笑ましい黄色の車はどうでしょう。近所の人から、陰で、「黄色い車のxxさん」などとあだ名がついてしまう可能性はありですが。

昔、日本では、気がおかしくなると、黄色い車が迎えに来る、だなどと良く言っていましたが、あれはどういう理由だったのでしょうね。

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