ウィルミントンのロングマン

石灰岩(チョーク)の地層の丘の斜面を刻むことにより、白い土壌を露出させ、草の緑を背景にフィギュアを形作る丘絵は、イングランド、特に南部イングランドにいくつか点在します。

イーストサセックス州のサウスダウンズにある、ウィルミントンの丘から、側を通るものを見下ろす巨人・・・人呼んで「Long  Man of Wilmington」(ウィルミントンのロングマン)は、その中でも最大のもの。また、これは、西ヨーロッパで一番大きい、人間の形を模したフィギュアでもあるとのことです。彼、広げた両手の其々に、長い杖の様なものを握っています。このポーズが何を意味するのか、ロングマンが、いつこの丘に刻まれたのかは、誰も知りません。

私の持っているサウスダウンズ周辺のガイドブックによると、1710年以前に、このロングマンに言及している文献は一切残っていないのだそうです。古代のものの様に見えながら、実は、16世紀、チューダー朝の時代に作られた可能性もあるらしく、ヘンリー8世による修道院の解散で、近郊の修道院に付随していた土地を買収した人物が、新しい自分の土地に、「これは、おいらの土地」とハンコを押すような感覚で、古い異教風の丘絵を刻んだという説もあるといいます。

いずれにせよ、ハイキングには、もってこいの場所ですので、私達も、駐車場を後に、ロングマンへ接近することとしました。

丘絵というのは、遠くから見るようにできているのでしょうね、近づくほど、段々、形がはっきりしなくなってくるのです。そして、絵の脇や、その頭上から見ると、もうほとんど何が描かれているのか、わからなくなります。

丘を登り、来た方向を振り向くと、車を泊めた駐車場も小さく。

南方には海も望めます。

丘の上の人口密度は非常に低かったです。ジョギングをして、丘から駆け下りてきた男性一人とすれ違ったのと、遠くに、カップルを2組見たのみ。

うってかわって、羊密度はなかなか高く、あちらにも、こちらにも。音と言えば、羊達の、「バーーー」という鳴声のみ。イギリスの羊達は「メー」ではなくて、「バー」と鳴きますので、あらかじめ。子連れ狼ならぬ、子連れ羊も沢山。

緑の海のように、波形の起伏のダウンズの風景には、やわらかさがあります。

この羊は、眼下に広がる景色を楽しんでいる面持ち。こういう動物達にも、「景色がいい=気分のびのび=ハッピー」という感覚、きっとあるんでしょうね。私達も、しばし草の上に足を伸ばして、ハッピー!

丘を再び下って戻る帰り道は、ずっとこうして、前を行く羊達のおしりを眺めて歩きました。まるで、羊飼いになった気分のウィルミントンのハイキングでありました。

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