Keep calm and carry on

ペアで揃えてあったケシの花の模様のマグカップのひとつを、床に落として割ってしまいました。ちょっと気が利いた対のマグカップを、また買いたいな、と思っていた矢先、とある店のウィンドウに、上のマグカップが飾られてあるのを見て、「これじゃ!」と思い、購入。

ひとつには
Keep calm and drink tea (慌てず騒がず、紅茶を飲もう)
のスローガンが書かれ、

もうひとつには、
Keep calm put the kettle on (慌てず騒がず、やかんをかけよう)
と書かれてあります。

*キープ・カームは、直訳は「冷静でいなさい」ですが、「慌てず騒がず」の方が語呂が良いと思うので、そう訳しました。

これは、戦時中、ドイツの爆撃に対して、イギリス市民に、落ち着いて日常生活を続けるよう呼びかけた、英政府の発行したポスターのスローガン、

Keep calm and carry on (慌てず騒がず、生活続行)

のパクリ商品です。キャリーオンには、「(今やっている事を)続ける」の意があるので、要は、非常時ではあるけれど、冷静を保って、いつもと変わらず日常生活を続けましょう、的な心構えを唱えているわけです。

マグカップに使われているスローガンは両方とも、外でサイレンが鳴り響く非常事態の中、ひとり室内で落ち着いてやかんをかけ、紅茶を飲む、妙に肝の据わった、変なイギリス人を連想させるものがあり、そしてまた、紅茶を飲めば、全てはOKという、紅茶好き国民性も髣髴とさせるところが気に入っています。

実際、この戦時中のポスター(上の写真:英語版ウィキペディアより拝借)の発行数はさほど多くなかったらしく、当時は、それほど人目にとまらなかったようですが、やはり、戦時中の伝説のスローガンともなった「ビジネス・アズ・ユージュアル」と同じく、「キープ・カーム・アンド・キャリー・オン」も、今も時々使われます。特に昨今の経済危機を受けて、再浮上している感もあり、こうしたパクリ商品が巷に溢れています。

うちのだんなによると、入院中、看護婦さん用のオフィスの壁にも、このポスターが貼られているのを目にしたそうです。確かに、英語のウィキペディアに、当フレーズは、イギリスの看護婦さんたちの間で、非公式のモットーにもなっていると書かれてあります。

最近、この戦時中のオリジナルのポスターを何枚か所持していた女性が、専門家に古物の判定をしてもらう「アンティーク・ロードショー」という番組に登場し、専門家から、数千ポンドの価値があると告げられ、びっくり、というニュースもありました。

何事にも動じないイギリス人・・・というヴィクトリア朝にできあがり、戦時中に更に誇張された国民イメージは、現在のイギリス人にも当てはまるもでしょうか?それは、実際、また、戦争の様な非常時にならないと、わからないものがあります。東日本大震災から一年経った今、災害に対処する日本人の姿の方が、現イギリス人の性質より、この言葉のイメージに近い気がするのですが。

それにしても、このスローガンは、後ろの部分を変えるだけで、マグカップのものの様に、色々、作れますね。「ああ、退院後は、以前みたいに、食欲が出ないな・・・へーこら・・・」と言いながら、大盛りのランチを瞬く間に平らげたうちのだんなに、少々びっくりして、「あなたのモットーは、Keep calm and stuff your face (慌てず騒がず、たらふく食べよう)がいいかもね。」と言うと、これが、思いの他うけて、しばらく、ふぐふぐ笑っていました。そして、「そんなモットーの入った皿があったら欲しいな。」

そんなお皿は作りませんが、日本人風に「慌てず騒がず寿司食いねえ!」とKeep Calm and Eat Sushi (キープ・カーム・アンド・イート・スシ)Tシャツをデザインしてみました。着てね~。


*マグとマグカップ*

上の文中で、マグカップという言葉を使いましたが、これは、日本英語(ジャパングリッシュ)です。英語でマグカップは、ただのマグ(Mug)。これは、私も、イギリスに来たての頃、何度か人に、「カップは要らない。マグだけ。」と直されたものです。

「a mug of tea 」は、マグカップ一杯の紅茶のこと。

マグには、また「顔」の意もあり、警察の記録に使われる、犯罪者の正面と横からの顔写真の事は、「マグ・ショット」(Mug Shot)と呼ばれます。


*やかんを火にかける*

「Put the kettle on」(やかんをかける)という表現ですが、最近の家庭ではほとんどが、電動ケトルを使用しているので、実際に、やかんを火にかけて沸かすという事をする人は少数派でしょう。にもかかわらず、電動ケトルをスイッチオンするのにも、昔ながらの「Put the kettle on」が慣用的に使われています。

この表現を使ったナーサリー・ライムに下のようなものがあります。

Polly put the kettle on,
Polly put the kettle on,
Polly put the kettle on,
We'll all have tea.

Sukey take it off again,
Sukey take it off again,
Sukey take it off again,
They've all gone away.

ポリー、やかんを火にかけて、
ポリー、やかんを火にかけて、
ポリー、やかんを火にかけて、
皆で一緒に、お茶にしましょう。

スーキー、やかんを火からおろして、
スーキー、やかんを火からおろして、
スーキー、やかんを火からおろして、
皆、出かけてしまいました。

さてと、私もプット・ザ・ケトル・オンして、紅茶用のお湯を沸かす事にします。

コメント

  1. ご主人と私は同じよう^^
    退院してきたら、お見舞いにいただいたケーキをたらふくほおばっている私です^^

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    1. 病院食は不味いものですが、イギリスは、夕食の臭いをかいだだけで、嘔吐をもようすほどの不味さで、その反動もでているようです。

      ご自宅で、ゆっくり、ケーキと一緒に紅茶も召されているのでしょうね。無理なさらないよう。

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