ロックダウン中のオアシス

ガーデン・ルームに入って来たブラックバード

2年前(2018年)の6月から12月にかけて、非常に狭く、食べ物を作るだけで座るスペースもなかった我が家のキッチンを、庭に突き出すように拡大し、ダイニングテーブルを置けるエリアを作りました。3メートルx4メートルの、このエクステンション(拡大工事)のおかげで、かなり毎日の生活が向上した感があります。ちなみに、エクステンションというと、日本では、髪の毛を長くするヘア・エクステンションあたりが一番最初に頭に浮かぶかもしれませんが、イギリスでは、エクステンションというと、こうした、既存の家の拡大工事を指すことが多い感じです。

エクステンションが開始したばかりの頃

イギリスでの大工仕事は、最初に言われた期間よりずーっと長くかかるのが常で、始める前は、3,4か月と言われた工事が、のろのろ進んだ6か月の間、家の中はぐちゃぐちゃで、かなり大変でした。

つっかえ棒で、使い続けた以前の流し

台所の流しやコンロが比較的、長く使っていられるようにと、流しは以前のものを、つっかえ棒などをして、ぎりぎりまで使用。ついに、工事の後半に入り、流しとコンロを取り外してからは、大工の頭のナイジェルから借りた電気クッカーを使い、居間で調理、皿洗いは風呂場で、という、キャンプのような日々。

また、工事が始まる前の設計家との相談と設計図の作成、地方自治体への通知など、着工となるまでの道のりも長かった・・・。が、我慢した甲斐はありました。

何せ、日本の家のように、古くなったら、全部壊して、一から建て直すという事はほとんど行われないので、イギリスの古い家は、常に、内部の改善、改築、そしてエクステンション。昔の生活とニーズが異なってきているので、手を入れていない家というのは、ほとんど無いでしょうね。我が家も、1960年ごろに最初に建てられた、セミでタッチド(片側が隣家とくっついている家)で、前の家の所有者によって、すでに色々手が入れられていたのを、更に、私たちも、何やかやと多少の改造をしています。(これは、以前の記事「まきストーブのある家」でも書きましたが。)前の家の間取りに制限されずに、一から設計し直すことができたら、ずっと楽なのでしょうが。イギリスでは、こうしたセミでタッチド、更には、両隣がくっついている長屋のようなテラスドハウスが多い中、全部壊しての建て直しは、難しいですね。

新型コロナウィルスによる、イギリスのロックダウンが始まって3か月。このエクステンションを済ませておいて、本当に良かったなと思っています。雨の日や、外で日向ぼっこには暑すぎる日でも、庭を見ながら、ゆっくり座れる場所があり、室内でも、それなりに自然を感じられる、ちょっとしたオアシスです。朝食をここのテーブルで食べるのが楽しみで、起床も楽しくなりました。設計をしてくれた人は、この部屋をガーデン・ルームと設計図に記入していましたが、本当にその通り、室内というより、庭の一部の感じです。

ガーデンルームの、庭のパティオへと開く戸口から、時々えさをまくので、毎日のようにブラックバード(クロウタドリ)たちがやって来ます。「パーキー」(Perky、元気がいい、という意味)と名を付けた、一番私に慣れているブラックバードは、私が餌出しをしていないと、一番上の写真のように、開いたドアの隙間から、ちょこまか室内に入ってくるという芸当まで覚えました。先日は、流しで皿洗いをしている時に、足元にパーキーが立っており、私を見上げていた姿には、さすがにびっくりしましたが。「ほらほら、外に出て」と、後を追うと、ぴょんぴょんはねながら、ちゃんと狭いドアの隙間から出ていく姿にも失笑します。ここ1か月ほど、子育てをしているため、餌を沢山くちばしに加えて集めていく必要もあるので、ますます、頻繁にやってきます。


昨日は、かなり大きくなったひなに、ドアの外で餌をやっていました。この雛、自分でも地面に落ちているものをつっついて食べられるようになっており、そろそろ独立してもよさそうなのに、いまだに、多少甘えているようです。

夕暮れになると、はりねずみの餌出しもして、ちょうど陽が落ちかかった時に現れて、ばりばりと餌を食べるはりねずみたちの姿も、このガーデンルームの窓から見物できます。ロックダウン中に、自然とのふれあいで精神的に助けられている人が沢山いるという話ですが、私たちもそうですね。庭に出て、花の中を蜂がぶんぶん飛んでいる姿にすら、いやされますので。

我が家は、町の一番古い部分の、教会が見える、眺めの良いリバーウォークからすぐそばの場所にあり、私は時々、ひとりで散歩に出るのですが、遠距離の移動を禁じられているため、以前は平和であったリバーウォークが、ロックダウン中、6時前などの、よほどの早朝に散歩に出ない限り、いつ行っても人出が多く、町中の人たち全員が、あの場所めがけて歩いているようで、なんだか、気分的にゆっくりできず、こちらは少々足が遠のいています。

感染の数も、死者の数も、ピークの時よりは減ってきているとは言え、日本の現状に比べると、まだかなり多いのですが、先週から、食料品、医療品を売る店以外の店舗も開店を許されて、ロックダウン緩和が始まっています。7月からは、パブやレストラン、美術館、博物館も開く予定。まだ学校が開いていないのに、パブを先に開けようなんてのがイギリスです。

本来ならば、まだ緩めるべきでないところを、感染が蔓延してしまってから、のろくさとロックダウンを始めたこの国は、感染抑圧に時間がかかりすぎ、ついに、これ以上やると経済がダメになると、あせった政府の方針でしょうね。ささっと閉めて、ほぼ感染を無くし、早めに自由を取り戻しているニュージーランドの正反対。一般的に、問題を、早期にまっこうから対処せず、「目をつぶっていれば、そのうち消えてなくなる」と、現実否定に走った、イギリスを含む、ポピュリスト(人気取り主義)の政治家を長とする国は、対処が遅れてひどいめにあっている感があります。

また、感染が一応は抑え込まれたかに見えていたシンガポール、更には、ドイツなどのヨーロッパの国でも、自国民がやりたがらない工場などでの仕事に従事する外国人労働者などの間で、再び感染が広まっているというニュースも流れていました。こうした、一部外人労働者の、職場や宿舎の衛生や快適さが、全く考慮されておらず、ぎちぎちの状態での生活をさせられていたのが原因のようです。自国の必要性から、他国民をひどい状況でこきつかうと、最終的には、自分のためにならないというお手本のような話です。「情けは人のためならず」というやつですね。(このフレーズは、「情けをかけるのは人のためにならないので止めた方がいい」という意味だと思っている人が多いという話ですが、「情けをかけるのは、他人のためでなく、最終的には、自分のためにいい事だ」という意味。)真面目に、必要な仕事をしてくれているなら、他国籍でも大切に扱わないと。

うちのだんなは、リスクグループに属するので、緩和も何も関係なくロックダウンは続いています。が、リスクグループも、8月からは、自粛する必要がないとの宣言が、昨日ありました。これも、科学的根拠に基づくというより、政治的な判断です。現馬鹿政府が何と言おうと、巷に人が増える分、ますます、外に出たくないと言うだんなは、戸外と言えば、庭でグリーンハウスの場所を移動させるための、土台作りに穴を掘っているくらい。彼は、もう2か月くらい、玄関から外へ出ていません。もしかしたらワクチンができるまで、この状態?蟄居が長丁場となるにつれ、我が家の庭と、ガーデンルームは、ますます貴重な存在となります。

ロックダウンでテレワークを始めて経験する人なども増え、庭のある家、ちょっとした戸外のスペースがある家、また良い自然環境に囲まれた家の大切さが見直されています。ロックダウン後もテレワークが増える傾向がみられる中、都会から多少離れた、緑多い田舎の、そういった家が、今後人気となりそうだという話です。フラット(アパート、マンション)でも、日本のように、布団が干せるくらいの、ちゃんとした大きなバルコニーがついていればいいのですが、イギリスのフラットと言えば、植木鉢すら置けない、ただの飾りの様な、俗にいう「ジュリエット・バルコニー」しか持たない物件が多いため、人間が快適に住むにたるような、フラットの質の見直しと向上も必要とされるところです。

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