これが本当の壁の花(ウォールフラワー)

崩れかけた昔のレンガ造りの壁の割れ目から咲いているこの花たちは・・・ウォールフラワー(壁の花)。アブラナ科の植物で、学名は、Erysimum(エリシマム)、かつては、Cheiranthus(チェイランサス)という名のが主流だったようですが。日本語では、ニオイアラセイトウの名でも呼ばれているようです。鮮やかで香り良く、春の花として、人気。名目上は、多年草ではあるものの、ガーデンでは、2年草として育てられるのが普通です。こうやって、壁の割れ目から生えるくらいなので、日当たりの良い、比較的さらさらの乾いた土壌がお好み。

ちょっと恥ずかしがり屋で、物怖じするため、パーティーなどの集まりの最中、壁のそばで1人で立っていたりするタイプの人を、

She is a wallflower.
あの人は壁の花

などと言ったりしますが、これは、もともと、19世紀初めに使われだしたフレーズで、元来は、ダンスのパートナーが見つからないために、壁の側にずっと座っている女性を指したという事。日本語でも、直訳の「壁の花」という言葉が同じような意味で使われているという事は、由来はこの英語の表現から取ったのでしょうか。

ハンプティーダンプティーが座って、転がりおっこったような、古い壁の上に咲く姿は、なかなかサマになっています。

ほんとに、わすかな隙間から顔を出して咲いてました。春の花壇では良く見るものの、ウォールフラワーという俗名の通り、本当に壁に咲いているものはあまり見かけないので写真を撮った次第。これを見ると、ダンスに誘われるのを待って壁の、側に座っている女の子達に例えられたというのがわかる気がします。

さて、ウォールフラワーの中にも、多年草として育てるものもあります。2年草として育てるウォールフラワーは、咲くシーズンが比較的短いので、私は、自分の庭には植えた事がないのですが、去年の夏、多年草の紫色をしたウォールフラワーであるErysimum "Bowles's Mauve"(エリシマム ボウルズ・モーブ)を購入しました。エリシマム ボウルズ・モーブは、1982年にチェルシー・フラワー・ショーでデビューした花で、1973-1982年の10年間の新種植物の中で、最高のものとチェルシーのお墨付き入り。

買って約1年で、あっという間に成長し、いまや、花と言うより、貫禄のある茂みの風情。葉は常緑である上、とにかく花の期間が長~くてびっくりしました。冬の間でさえも、ちょぼちょぼ咲いており、初春に、少し暖かくなったかな、と思うと、わーっと一斉に咲き始め、春一番に蜂達に蜜を与えていました。日当たりの良い場所に植えてあるという他は、手入れと言って特に何もしておらず、花が終わった長い茎を切り取っていただけ。この夏は、あまり巨大化しないように、少し、刈り込むつもりではいます。鼻を近づけると、ほんのり良い香りもします。

エリシマム ボウルズ・モーブは、恥ずかしがり屋の「壁の花」というより、部屋の真ん中にどーんと構えている感じです。

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