イギリスのクリスマスツリーの歴史

ロンドンのバッキンガム宮殿(Buckingham Palace)には、18年前にはクリスマスツリーが飾られていなかったという話を、昨日の朝のラジオで聞きました。

とある男性が、18年前の12月に、トラファルガー広場のクリスマスツリーを眺めてから、ちょっと歩いて、バッキンガム宮殿にたどり着くと、どこにもクリスマスツリーの気配が無いのに、いささかびっくりしたのだそうです。この人、家に帰ってから、「クリスマスツリーをイギリスに導入したのは王室なのに、そのロンドンの宮殿に、クリスマスツリーが飾っていないのは、いとも残念」と感じ、エリザベス女王に、「バッキンガム宮殿にツリーを飾ったらどうでしょうか」と、手紙を書いたのだそうです。数日後、宮殿の女王の秘書から「それは良い考えです。女王に、直々貴殿の手紙を見せ、考慮する事にしました」のような内容の手紙が、氏のもとに届いたのだそうです。まあ「考慮するなんていうのは、当てにならない、そのままだな。」と思っていたところへ、更に数日後、再び「日が暮れてから、バッキンガム宮殿の前を通られてみては?」のような手紙が届いたのだそうです。「ツリーがもう飾られてあるから」と。かなり素早い反応で、氏はびっくりしたようですが、以来、ずっとバッキンガム宮殿にツリーは飾られ続けているようです。有名なトラファルガー広場のツリーはともかく、バッキンガム宮殿のツリーには、実は、私は、このニュースを聞くまで気がつきませんでしたが。

年間、女王の元に届く手紙は、数え切れないほどだそうで、その一つが取り上げられ、行動に移されたという、めづらしいケース。こういう一般からの手紙を読む係りというのも、面白い仕事でしょうね。大半は、女王に見せるに足らない、どーしょーもない事が書かれているのでしょうが。

室内にクリスマスツリーを飾るという、もともとはドイツの風習を、イギリスに導入したのは、上記に書いたとおり、ドイツのハノーバー朝に遡るイギリス王室。

まずは、18世紀に、ジョージ3世の奥方でドイツ人であったシャーロット女王が、クリスマス時期にツリーを飾り始め、これが、上流社会の間で、真似されたようです。

この風習を、一般庶民にも浸透させるのは、ヴィクトリア女王と、やはりドイツ出身の夫君アルバート公。女王夫妻と王家の子供たちが、ウィンザー城内でクリスマスツリーを囲むイラストが、1848年12月の、ロンドン・イラストレーション・ニュース紙のクリスマス特集に載せられた事に起因します。このクリスマス好き夫婦の影響で、クリスマスが、イギリスで、1年で一番大切な行事となっていったわけです。クリスマスプディングなども、アルバート公のお気に入りのプディングであった事から、幅広く食べられるようになったという話ですし。

ただし、ヴィクトリア女王は、それまで、イギリスでも人気だった十二夜(1月5日の夜)の祝いは、酔っ払いなどによる暴動に繋がる事を懸念して、1870年代に禁止しています。よって、ますます焦点は、クリスマスへ移行したのでしょう。外での乱痴気騒ぎより、慈善を行う季節、クリスマスツリーが見守る家族内で、プレゼントを交換、ご馳走を食べて祝う祭りとして。にもかかわらず、クリスマス前後の巷での、救急車の数が足りなくなるほどの乱痴気騒ぎは、いまだ問題ではあります。

さて、こちらは、今年のコベントガーデンのクリスマスツリー。巨大な桶についている赤いリボンがキュートです。

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