アレクサンドラ・パレスとパーク

ロンドン北東部に位置するアレクサンドラ・パレス(Alexandra Palace)。ここからのロンドンの眺めは、ハムステッド・ヒース、そしてプリムローズ・ヒルからの眺めに匹敵するなどといわれています。学校の夏休みも終わった秋晴れの日に、ちょいと出かけてきました。

アレクサンドラ・パレスのアレクサンドラは、ヴィクトリア女王の息子エドワード7世の奥さんで、デンマークからお嫁に来たアレクサンドラ妃の名から取ったもの。女好きプレーボーイであったエドワードの浮気をじっと我慢して、彼を大切にしたお妃様です。これが、建設された時代は、ヴィクトリア女王まだまだ健在で、エドワードは皇太子、アレクサンドラは皇太子妃でしたが。

ロンドンの南部にあり、花火やスポーツイベント、各種べニュー、市民の憩いの場として、当時人気であったクリスタル・パレス(現在は消失してありません)とパークに対抗して、「ロンドン北部にも似たようなものを」というのが、アレクサンドラ・パレスとそれを囲むパークを作った理由のひとつの様です。1873年、ヴィクトリア女王の54歳の誕生日にオープン。ところが、一大オープニング・セレモニーの16日後、熱い石炭から発火し、パレスは焼け落ちてしまうのです。あーあ。それでも、めげずに、すぐに再建され、1875年に再オープン。

巨大ホール、コンサート用の部屋、劇場、オフィスなどを有した建物となります。敷地内には、アーチェリーや、クリケットのスポーツ施設、その他、日本風の村を模したものもあったとやら。音楽フェスティバル、フラワー・ショー、わんちゃんや馬のショーなどに使用されたそうです。クリスタル・パレスとパークをへこますまでの人気にはならなかったようですが。

1936年より、アレクサンドラ・パレスの建物の一部は、BBCのテレビジョン・スタジオとして使用され始め、テレビ塔が建てられます。そして、同年、世界初のハイ・ディフィニッション(高精細度)テレビジョン放送を、一般的に行うようになった場所となるのです。当然、当時の「高精細度」は現在の定義よりもずっと劣るものではあったわけですが。それを記念するブループレークが、テレビ塔の下の壁にとりつけられてあります。1955年には、実験的カラー・テレビのテストも、ここで行われます。

第1次世界大戦中に、アレクサンドラ・パレスは、最初は、ベルギーからの難民、後には、ドイツ、オーストリア人の戦争捕虜が収用されていた場所でもあります。捕虜の数は、17000人以上。この戦争捕虜達の事を記念するプレートも掲げてありました。彼らは、アレクサンドラ・パークの造園の労働力としても貢献したようです。

第2次世界大戦中には、再びベルギーからの難民収容に使用されます。踏んだり蹴ったりですね、ベルギーは。また、アレクサンドラ・パレスのテレビ塔は、ドイツ空軍のパイロットが自分の位置と目標を知るために使用していたラジオ無線を妨害するのに、陰で活躍。

不運にも、1980年に、アレクサンドラ・パレスは再び火災の憂き目に会い、1988年、再オープン。展示会、会議、その他もろもろのべニューとして使用されています。

建物内には、アイススケートリンクも収容。

さて、ここから南側の公園の傾斜を越えて臨むロンドン中心部の景色は、確かになかなか。

公園に横になる人はもちろん、パレスの前のテラスのベンチで、遠くのスカイラインを楽しむ人もちらほらおりました。週日は、ハムステッドヒースなどより人が少ないのも、のんびりしていて魅力です。

ハムステッドヒースより、東に位置するので、カナリーウォーフの一群のビルのシルエット(上の写真左側)も、良く見えます。

アレクサンドラ・パーク内には、ボートの浮かぶ小さな池もあります。ただし、白鳥やドラゴンの形をした、この貸しボートたち、かなり高額。30分で、大人一人につき5ポンド以上だったかな。最低金額が8ポンド以上に設置されていました。私が池の周りを歩いていた時、使われていたボートはひとつだけ。それは、そうでしょ、この値段じゃ。まあ、週日で人が少なかった、というのもありますが。ロンドンは本当に物価が高いのです。人があまりいない時は、値段を少し下げるとかすればいいのに、などと思いましたけどね。

噴水のあるローズガーデンも、いかしていました。白鳥ボートにお金をつぎ込まずとも、公園内を、ふらふら歩いていれば、無料で十分、いい気分。

アレクサンドラ・パレスは、ロンドンのシティー内にあるムーアゲイト(Moorgate)駅より電車で約20分。駅名は、そのままアレクサンドラ・バレス(Alexandra Palace)駅。駅からは、徒歩すぐですので、簡単にお出かけできます。更に、地下鉄駅の最寄り駅は、ピカデリー線のウッド・グリーン(Wood Green)駅となります。

ハムステッド・ヒースと、プリムローズ・ヒルからのロンドンの眺めについては、以前の記事を参照ください。こちらまで。

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