クリスマスの12日

クリスマスの12日間とは、クリスマスの夜(12月25日)から、1月5日の夜までの12日間。

そのクリスマスの初日から、12日間に渡り、ひとつひとつ贈り物をもらい、その数が増えていくのが、根強い人気のクリスマス・キャロルである「The Twelve Days of Christmas ザ・トゥエルブ・デイズ・オブ・クリスマス」(クリスマスの12日)。

英語の歌詞は、

On the first day of Christmas
my true love sent to me
A partridge in a pear tree

On the second day of Christmas
my true love sent to me
Two turtle doves
And a partiridge in a pear tree

On the third day of Christmas
my true love sent to me
Three French hens
Two turtle doves
And a partridge in a pear tree

4日から12日までのプレゼントは、

Four colly birds, Five gold rings, Six geese a laying, Seven swans a swimming, Eight maids a-milking, Nine ladies dancing, Ten lords a-leaping, Eleven pipers piping, Twelve drummers drumming

日本語に訳してみると、

クリスマスの1日目
私の心から愛する人が送ってくれた
梨の木にとまる一羽のヤマウズラ

クリスマスの2日目
私の心から愛する人が送ってくれた
2羽のタートル・ダブ(コキジバト)
そして、梨の木にとまる一羽のヤマウズラ

クリスマスの3日目
私の心から愛する人が送ってくれた
3羽のフレンチ・ヘン(にわとり)
2羽のタートル・ダブ
そして、梨の木にとまる1羽のヤマウズラ

(以下残りの日々は、プレゼントのみ訳します)
4羽のクロウタドリ、5つの金の指輪、卵を産む6羽のガチョウ、泳ぐ7羽の白鳥、ミルクを絞る8人の娘、踊る9人の貴婦人、飛び跳ねる10人の紳士、笛を吹く11人の笛吹き、太鼓をたたく12人の太鼓打ち

プレゼントの数が増えるにつれ、記憶ゲームのように、歌詞がどんどん長くなっていくわけです。

ビング・クロスビーとアンドリュー・シスターズが歌う「ザ・トゥエルブ・デイズ・オブ・クリスマス」をUチューブで聞いてみましょう。こちらまで。

歌詞に登場するプレゼントには、宗教的な意味が隠されている、と意見する人もいるようで、ヘンリー8世後、プロテスタントとなったイギリス内で、隠れカソリック信者が、ひそかに歌った歌などというまことしやかな説もあります。プレゼントを贈ってくれる「心から愛する人」は、神様。そして、ヤマウズラは、キリスト様で、梨の木は十字架、2つのタートル・ダブは新旧の聖書などなど。ただし、プレゼントが隠し持つとされる宗教的な意味に、カソリックとプロテスタントの違いは、全く無いので、この説はどうやら、後で、誰かがこじつけて考えたもののようです。プレゼントは、どこかで誰かが、適当に頭に浮かんだものを、片っ端から並べ立てただけかもしれません。

とても絵にしやすいキャロルであるため、前回の記事のアドベント・カレンダーや、クリスマス・カードの題材にとても良く使われるキャロルです。実際、クリスマス・カードの題材に使われるキャロルは、他には、頭に浮かびません。

今年、もらったクリスマスカードのひとつに、こんなのがありました。文字だけなのですが、書かれている内容は、子供がサンタさんに充てた手紙で、
「サンタさん、ヤマウズラと梨の木、タートル・ダブ、フレンチ・ヘン、クロウタドリ、金の指輪、がちょう、白鳥、ミルク絞りの女の人、紳士と淑女と、笛吹き、太鼓打ちの人を、僕にくれて、どうもありがとう。・・・ちょっと思ったんですが、もしかして、プレゼントを買った領収書まだ持っていますか?」
要するに、この子、こうした贈り物がいまひとつ気に入らなかったので、返品して、別のものを買いたい、というわけ。ゲンキンな最近の子供のイメージ髣髴で、笑えました。

さて、2日目の贈り物のタートル・ダブ(コキジバト)ですが、これは冬越しをする場所であるアフリカから飛んできて、4月から9月にかけての繁殖期にイギリスで過ごす渡り鳥であるため、キャロルには登場するものの、実際は、クリスマスの時期にはイギリス国内にはいない鳥なのです。

このタートルダブが、夏の間でも、イギリス国内で見られる数が激減しているというニュースを何度か耳にしました。そのうち、プレゼントに2羽もらうどころか、1羽も見ることができなくなるのではないかと。かつては、タートル・ダブの、満足した猫が喉を鳴らすような、のどかな歌声は、夏の間、イギリスの各地で聞こえたそうで、シェークスピアなどにも歌われたそうです。なのに、最近は、非常に少ない数が、イーストアングリア地域、およびオックスフォードシャー州の一部で見られるのみ。RSPB(王立野鳥保護協会)のサイトで、この鳥の声が聞けます。こちらまで。上の絵も当協会のサイトより。RSPBはこの鳥にレッド・ステータス(英国内での絶滅危機赤信号)を与えています。

激減の理由のひとつに、好んで食べる雑草の種が、集中農業で使用される農薬等の影響で消えていっている事があげられています。食べる物の幅が狭い鳥らしいので、他に代わりになる食べ物を探せないのでしょう。冬越しをするアフリカでもまた、やはり集中農業の拡大により、徐々に餌や住処が少なくなっていっているとの事。移動の中継地のマルタやキプロス等で、猟師に撃たれる数も多いのだそうです。また、悪天候による、イギリスへの到来の遅れ、湿った春などの影響で、卵を産む回数が減る事なども、理由として考えられているようです。

そのうち、消えて伝説の鳥となってしまうのでしょうか。羽のパターンがとても綺麗な鳥です。残念ながら、私も見た事はありません。

On the second day of Christmas
my true love sent to me
Dead turtle doves
And a partiridge in a pear tree

クリスマスの2日目
私の心から愛する人が送ってくれた
死んだコキジバト
そして、梨の木にとまる一羽のヤマウズラ

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