レジ袋を使わないだけで、世界は救えない

イギリスのスーパーマーケット等で、商品を入れるレジのビニール袋の有料化(5ペンス)が始まったのは、2015年と、もう6年も前の話になります。5ペンスでも、今まで無料だったものにお金を払うのは嫌だと、この影響で、一回のみ使う薄いビニール袋(single-use plastic bags)の使用率は、83%も減ったとされます。その代わりに、何度も繰り返し使えるという名目で、バッグス・フォー・ライフ(一生ものバッグ、bags for life)を各スーパーマーケットは店頭に並べ、盛んに売りだしました。

考えとしては、理にかなっているものの、一生ものバッグは、通常のレジ袋よりも耐久性が要求されるため、まず、製造過程で、ぺらぺらビニール袋より多くの素材(プラスチック)が必要とされ、さらには、多くのエネルギーも必要。よって、最低でも、4回から11回ほど(これは各バッグの厚さにより異なる)使用しないと、ぺらビニ袋より環境に悪いそうです。

ところが、特に、有料化導入直後のころは、自分でバッグを用意するのを忘れる人が多く、しかも、このバッグ・フォー・ライフが、確か、当時は、10ペンス~30ペンスくらいと、安価であったためから、何度もこれを買って、家に、各スーパーのバッグ・フォー・ライフがごろごろしてるなどという家庭も多くなってしまい、一生ものどころか、1,2回使ってまた買い足すという人が多く、最終的に、プラスティック使用量が以前より増えてしまったという、どうしょうもない結果に。通常のレジ袋は、今はほとんどスーパーからは姿を消しています。このバッグ・フォー・ライフの問題も各スーパー色々、見直しを行っているようではあります。

実は、我が家も、有料化直後、大手各社のスーパーマーケットのバッグス・フォー・ライフは3,4個買ってしまい、やがて、これらのバッグは、いらなくなった本や衣料などを入れて、近くのチャリティーショップ(慈善のための中古ショップ)に寄付してしまいました。この厚手プラスティックのバッグス・フォー・ライフは、けっこうかさばるので、車のトランクに入れておけばまあ問題はないでしょうが、徒歩で出かける場合、ポケットに入れていつも持ち歩くには不適切で、やがて、ぐしゃっと丸められる布製マイバッグを、ポケットやハンドバッグの底に入れて出かけるのが習慣になりました。布製なら洗えるし。そう、このプラスチックのバッグ・フォー・ライフは、中を消毒しないで、何度も使っていると、黴菌の巣窟にもなるようなのです。

確かに、マイバッグを使用することは、何度も同じものを使用すれば、多少の効果はあるでしょうし、ビニール、プラスティックを使いすぎてはいかん、というのが意識に焼き付くようになります。が、まだまだ、こんなちっぽけな個人の努力は、氷山の一角、ある意味、自分はエコしてるという、自己満足だけに終わっているような気がしないでもない。スーパーの通路を歩いてみても、ほとんどの野菜、果物、肉その他もろもろの梱包はプラスティックですから。これをどうしていくかが大問題。リサイクルすればいいという人もいますが、リサイクル自体にもエネルギーはかかるし、また、色々な素材が混ざり合い、リサイクルはほぼ不可能か、合理的でない場合もかなり多いようです。

我が家の地方自治体は、2週間に1回の割合で、リサイクル可能なもの(プラスチックやダンボール箱)等を袋に詰めて庭の前に出しておくと、回収してくれますが、実はこの回収されたリサイクル素材を、国内で分けて処理しきれず、その一部を、後進国に送り込んで処理を頼んでいた、というドキュメンタリーを数年前に見て、ショックを受けました。そして、そういったリサイクル素材を受け取った国では、ちゃんとした処理を行わず、それが山積みとなり、川や海に流れ出したりしていた・・・。現在、その問題がどれだけ改善されているのかわかりません。目の前からは、ごみが消えても、それがその後、どんな風に処理をされているのかも、不透明とは。特にショックだったのは、このドキュメンタリーの中で、山積みされているリサイクルされるべき素材の中に、うちの地方自治体の名前が入ったリサイクル用の袋もあって、それが画面に映し出された時。「何のためのリサイクルだ!」って。国や、地方自治体は、こうした問題を、ごまかさず、正直に国民に伝えてほしい。日本も、プラスチックはこちら、紙はあちら、なんて几帳面にわけてリサイクルルールにのっとっている人はたくさんいますが、その後は、ちゃんと国内でするべきことがされているのでしょうか。・・・そうだといいですが。

また、外出で、外でささっと物を食べねばならぬ時のテークアウェイの容器はほとんどプラスチック。こちらではサンドイッチの入れ物、日本ではコンビニ弁当なんかもそうですよね。しかも、これを外で食べて、近くにくずかごが見つからないとなると、「ああ、ビニール袋が欲しい!」なんてことになる。食べ物や汁が中にのこっているプラスチック容器を、ごみ箱が見つかるまで持ち歩こうとなると、そのまま、マイバッグに入れるのははばかられ、かといって、ずっと手にもって歩いてるのも、大いに不便。現代の生活が、かつては、将来の問題が読めず、「プラスティック・ファンタスティック!」などと言ってあがめられた、この素材に、いかに、おんぶにだっこしているか、思い知らされます。

この前、昔の日本映画を見ていて、大きな植物の葉に包んだおにぎりを食べ終わった女性が、ぽんとその葉っぱをその辺の藪に放り投げている様子を見て、なんか変に感動しました。水筒なんかも、竹筒でしたもんね、昔は。プラスチックにとって代わってくれる、丈夫でありながら、エコな素材・・・すぐにでも登場してくれないと、世界はどんなになってしまうのか。

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