マスク論争

ついにマスクを着用して登場したボリス・ジョンソン

ヨーロッパ諸国でも、店内などの人の集まる閉鎖された場所では、マスクの着用が強制される国が増え、市民も徐々にマスクの習慣が身につきつつある様子。イギリスよりも早めに、まだ感染数がぐっと少ないうちにロックダウンに入り、よって、イギリスより早く、感染を抑え、ロックダウン緩和を始めたオーストリア。首都ウィーンに住んでいるドイツ人の友達は、ロックダウン開始直後にメールをくれ、皆、きちんと指示に従って特に問題なく生活している、というような事を言っていました。そして、すでにかなり前から、オーストリア政府は、店舗内でのマスク着用を義務ずけていました。

食料、医療品を売る以外の店が開いてから、そろそろ4週間、イングランドでは、公共交通機関と病院内でのマスクの着用は義務となったものの、店舗内ではいまだに政府はその姿勢をはっきり出しておらず、私の住むような小型地方都市では、マスクをしている人などを見かけるのはめづらしいくらい。

イングランドよりもロックダウンの緩和を遅らせ、感染をイングランドよりぐっと抑え込んでいるスコットランド自治政府首相の二コラ・スタージョンは、先日、ロックダウンの徐々なる緩和にあたり、店舗内で、マスク、または、何らかの形で口元を覆う「Face covering、フェイス・カバリング」の強制化を宣言。「病院で医者や看護婦は、12時間のシフトをマスクを着けたままがんばっているのだから、一般市民が、医療機関を危機に陥れないよう、店舗内でちょっとマスクをするくらい、できるはずだ」と。ごもっとも。コロナ対策で、最近、イングランド(ウェストミンスター国会)とは多少違う方針を見せているスコットランドで、二コラ・スタージョンの支持率は上がっているようです。

よって、イングランドは、現段階では、ヨーロッパ内でも、庶民がマスクをほとんどしない数少ない国(地域)のひとつとなりつつあります。もっとも、ボリス・ジョンソンもようやく、店内でのフェイス・カバリング強制化を考慮し始めている事を示唆し、昨日、はじめて、マスクをつけた姿で登場していました。だって、スコットランドでフェイス・カバリング強制となり、イングランドでは強制しないまま、コロナ第2波でも来て、イングランドのみがひどいことになったら、責任問われるでしょうしね。また、西洋では、マスク着用は、日本のように、個人意志にまかせていたら、自主的にする人は、なかなか過半数にいたらないでしょうから、意義がある程度の数の人間にフェイス・カバリングをさせるには、「強制」宣言が必要となるのでしょう。

マスクやフェイス・カバリングにより感染を防げることの効果はいまだにサイエンティストの間でも意見の不一致が見られるところですが、徐々に、殆どの人間がすれば、効果はある、という見方が一般的となっているようです。特に、マスクをしている本人よりも、もし、その人物が症状のない感染をしていた場合に周囲の人間にばらまかない、という効果が強い、よって、自分のためというより、他人のため社会のため。そして、感染防止の効果を出すには、大半の人間がやる必要がある、という事になります。

ニューヨーク辺りではマスク文化が定着しつつあるようですが、アメリカ合衆国内他の地では、マスクをする、しないが、市民の自由権論争の象徴のようになりつつある感じがあります。特に感染の広がっている南部。「人から、マスクをつけろなどと指示されるいわれはない、素顔で歩くのが俺の自由だ」というやつです。また、マスクをするのが男らしくない、威厳に関わる、感染を怖がっているように見えるのがいやだ、という裏に流れるマッチョ思想などもその原因でしょうか。もっとも、こうした非常事態にマスクなんぞをするだけで、自尊信を逸するようなら、そう言った人物は、もともと、自分に自信がなく、コンプレックスの塊だったりする事多々です。また、「銃の所有は個人の自由と権利である」という人が多い国ですから、そうなるんでしょーねー。全員、右に倣えで、ユニフォームのようにマスクをしている東洋人と、俺様は違うんだ、ってのもあるでしょーねー。「自由が第一だ。俺は信念のために死ねる!」なんて、豪語している人のインタビューもラジオで聞き、あまりのアホくささにびっくりしました。マスクをやるくらいなら、死ぬって?

イギリスも、そこまではいかずとも、他のヨーロッパに比べ、このアメリカ的、よくわからない自由論が強い傾向のある国です。よって、このマスクをするかしないか論争で、しない派からの意見は、主に、この「自由」の侵害。政治家の中にもこういう人は多い。特に、ブレグジット強硬派に多い感じなのが興味深いところです。そして、科学的なはっきりした証拠もないから、というのが、更に議論をこじらせています。

自由という言葉は解釈によって、色々問題のある言葉です。色んな自由のはきちがえがあります。ロンドンの地下鉄の中で平気で物を食べる自由、食べたごみを片さずに車内やピクニック先に置いていく自由、座席に足を乗せる自由、手で口も押えず咳する自由、トイレや公共の物を汚く使う自由。自由もいいが、社会や周辺の人間に対するちょっとした義務ってものも無いかい?と思う事は、イギリス社会では、とてもよくあります。義務があっての自由じゃないのかい?社会や公共のために、時には面倒でも、やらなきゃいけないこともある。それが義務。

マスクに関しては、日本国民の態度は、アメリカの正反対ですかね。戸外でもマスクをしていないと白い目で見られたり、マスクをしていても電車内で、思わずのどイガイガして咳でもしようものなら、周囲から殺気がくるので、常にのど飴を持って歩かないと・・・なんてことになります。実際、あまりマスクをやりたがらない、うちの母親も、先日、戸外をマスク無しで歩いていた時、知らないおじさんが、わざわざ接近してきて、「マスクくらいしたらどうだ。」と言ったそうです。すぐ切れそうな人に因縁つけられると怖いから、とりあえず、戸外でも、人がいる場所ではしておいたら、と言っておいたら、戸外では、あごにかけて、スーパーに入る時は口にあてるようにしたそうです。

私も、通気も良く他人とのソーシャルディスタンスの取れる戸外では、大声で叫んだりしない限り、マスク無しでいいと思うのですが、確かに、店内、電車の中はした方がいいと思うようになりました。特に、現段階で、客はおろか、店員、調理人ですらマスクをしてないようなイギリスの店舗やレストランに入るのは、とても嫌ですので。それに、感染被害が多い国では、確固たる証拠がなくとも、多少なりとも効果があると思えるものは、何でも取り入れた方がいい。

ほとんど死者のいない日本でのお出かけと、公式数4万人以上、非公式では6万人を超す死者を出していると言われるイギリスでのお出かけは、後者の方が、当然、不安です。実際、2月に日本にいた時は、平気で毎日スーパーにも、ショッピングにも行って、電車使ったお出かけもしてましたしね。こっちでは、ロックダウン緩和になっている今でも、用もないのにどこか行こうなんて気にもなりません。

イギリスでは、よく、コロナの感染を抑えるお手本としては、ドイツや韓国の例を見ろ、などとやってますが、日本はほとんど取り沙汰されていません。特殊ケースであるようで、参考にはならない、どう考えていいかわからない、というのが本音なのでしょう。「検査数も非常に少なく、強制ロックダウンも行っていない、なのに、老人の数が無茶多いあの国が、なんであんなに死者が少ないの~?」と謎の部分が多いから。色々、小さなことの積み重ねが、死者の少ない原因なのでしょうね。マスクをする人が多いのもそうなら、もともと綺麗好き、公共機関がぴかぴか、家に入る前に靴を脱ぐ、他人へのエチケットがちゃんとしてる、健康的な食生活の人が多い、などなど。あと、コロナは太った人が重症化する可能性が高いと言われる中、日本は、太りすぎ人口の割合が先進国の中で一番低い、というのを理由に挙げている科学者もいました。また、貧富の差がイギリスやアメリカなどより少ないというのもあるかもしれません。現在、イギリス国内で、感染が多いエリアは、比較的貧しく、他人種が多いとされる地域です。・・・日本は大丈夫ですよ。あとは、自由と義務のバランスを取りながら、安心しすぎず、怖がりすぎず、他人を糾弾しすぎず、今までと違った状況下でもおおらかさを忘れず、コロナ不思議国日本にはこのまま、我が道を行って欲しいところです。

さて、それにしても、イングランドの店舗内でのフェイス・カバリング強制は本当にはじまるんでしょうかね。そうしたら、夏の庭に植える植物を買いに、ガーデンセンターにでも久しぶりに出かけてみたいところです。

追記(7月14日)

イングランドも、ついに、7月24日から、店舗内でのフェイス・カバリングの強制が始まるとの発表がありました。一般人が、マスクを着用する事については、いままで、曖昧な態度を取って来たイギリス政府(ウェストミンスター政府)の方針もこれで、一応は落着。理由なく違反した人物には、罰金が科せられるそうですが、絶対に嫌だと言い張る、態度の悪い客の対処を店員がせずに済むように、警察が取り締まることになってます。といっても、警察も、そんなのでいちいち呼ばれては、てんてこ舞いでしょうね。

いまだ、与党保守党(トーリー)議員の中には、やはり、国から、国民に強制で何かをやらせるという「自由の侵害」を嫌う議員がちらほらおり、「そんなことになったら、おいらは、24日から、もう店には足を踏み入れない!」と言ったという政治家もいたそうです。まあ、好きにしてよ。

政府のマスクに対する態度の変化は、上記の通り、マスクの効果に対する科学的意見が変わってきた事が理由のひとつ。また、ロックダウンの緩和で店舗がオープンしているのにかかわらず、足を運ぶ人が、さほど増えない、テレワークを中止して通勤を開始させる会社も少ない、よってオフィス街周辺の飲食店や、テークアウェイの店も閑古鳥・・・この打開方針として、多少なりとも、市民に安心感を与え、買い物促進、また、普通の日常生活に戻れるように、フェイス・カバリングの強制化に踏み切ったようです。

コメント

  1. 残念ながら、そのコロナによる死者が少ない日本でも、再び上がる都市部の感染者数に、都会から来るのを嫌う、コロナレイシズムの現象が地方各部で勃発。 差別する方は、差別される側になってみないと、その辛さは判らないでしょう。「明日は我が身」と思って、お手柔らかに行動するしかないかな? このコロナというウィルスは、人の心の闇にも巣食いつつあると考えるこの頃です。

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    1. 現段階で、日本人が、感染が多い国から、日本へ入国してほしくないと思うように、国内レベルでも感染の低い地域では、東京あたりから、来てほしくないと思うのでしょうね。用があって行かねばならぬ人は、気の毒。今の日本で、ある一定の場所以外で、他人から感染する可能性は非常に低いでしょうし、うつされる可能性が高いのは、気を許す家族や友人だと思うのですが、知らない人の方が怖くなるのが人情ですか。

      こちらも、地方の観光地の、ホテル、レストラン経営者は、観光客に来て欲しいと願っているでしょうが、そういった業種に携わらない地元民は、ロンドン辺りから、どーっと人がやってくるのが疎ましいようで、感染が低い場所の縄張り意識は強くなってます。また、イギリス人は、景勝地で、ゴミを後に残していくタイプが多いんですよね。湖水地方の地元民は、ロックダウン緩和が始まった好天の週末の後、莫大な量のゴミ処理に追われ、なんでも人糞、トイレットペーパーもあちこちに散乱、パンツまで落ちていたという話です・・・!

      マスク、ついにイングランドでも、来週末から強制となるようです。

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