誰もいらない中古家具

新年そうそう、ロフトや車庫にたまっていた物を整理しようと思い立ったのか、お隣さんが、「中古のいす6脚いらない?」と聞いてきました。椅子など、うちにも必要以上にあるので、お断りすると、「いや、椅子として使うというより、しっかりした木材だから、薪ストーブで燃やすのにいいんじゃないかと思って。」という返事。

無料であげますというリサイクルのウェッブサイトに載せても誰からも連絡がないし、家具を扱うチャリティーショップ(寄付された中古品を売り、あげた収益を慈善事業に回す店)でも、要らないと言われたので、あとは、大型ごみ捨て場に持っていくしかないそうなのです。ので、それくらいなら、「お宅は、薪ストーブがあるから、燃やすのにいいんじゃない。」となったわけ。

お隣さんは60代のカップルで、一緒になる前は、男性は奥さんを病気で亡くして未亡人、女性はご主人に浮気されて離婚。その後、ティーンエージャーの頃に一度付き合っていたという二人は、再び、6、7年前によりを戻して、一緒に住むことに決め、うちの隣に越してきたという面白いケース。彼らが、若かりし日に最初に出会ったのは、二人の出身の、私たちが住んでいる町の近くの、ひなびた町のディスコだったというのが笑ってしまいます。「当時は、あそこにも、ディスコがあったのかー」というような、のんびりした町なので。それぞれ、昔の伴侶との間に、独立した子供たちもいるし、何もいまさらと、一緒に住むだけで、結婚はしないつもりのようです。二人とも、前に住んでいた場所から多少持参してきた物があるので、それをそろそろ、見切りをつけられるものには見切りをつけて整理したいところなのでしょう。

最近、よほど価値のあるものでないと、中古家具など見向きもされません。それだけ、賃金の安い国で作られた新品の家具があふれているのでしょう。いや、わりとちゃんとしたメーカーの家具でも、我が家で、拾って来て使っているアーコール社のウィンザーチェアのように、中古だというだけで、道端に捨てていく人もいる。

近所の日本人女性が、春に、かなり遠方に引っ越すことになり、彼女も、持って行かないと決めた家具の処理に困っていました。やはり、チャリティーショップに連絡を取っても、まず、写真を撮って送ってくれと言われたそうで、それを見て、まだ、新品同様で、売れそうだったら取りに来る、という感じで、ほとんどの家具は、いらないと言われそうだという話。彼女の長年愛用していた巨大な丸テーブルなども、実際に引っ越しに持っていく手間や費用を考えると、処分してしまい、新しいものを買った方がいいかな、という感じで、おそらく、捨てることになるようです。

以前、キューバの特派員のラジオ放送を聞いていて、滞在期間が終わり、住んでいた場所を引き払うことになった時、知り合いや、隣近所の人が、部屋の中の家具や機材でいらないものはないか、と沢山見に来て、引き上げ日には、部屋はすでに空になっていたというような話をしていました。大変な違いです。商品の物流が限られている、または、国が、借金なしに、内部の財政だけで生きている社会では、中古家具もまだまだ貴重品。

比較的安い家具が市場にあふれている他に、この国では、不動産の値段が高く、若い世代が、なかなか広い家を買えないため、若い人たちは、家の中の家具や雑貨を、それほど欲しがらなくなった、という話もあります。まず、貸家の人が増えているし、どうせ金を使うなら、外食や旅行などの、自分の経験になる事に金を使う傾向なのだとか。

ともあれ、隣から、そうやって渡された椅子を、だんなはさっそく、解体して、その後、電動丸のこで切り刻んで、ログにしていました。

燃やすと、たしかに、良く燃える。椅子としての勤務お疲れ様、南無阿弥陀仏と火葬です。最近、大量に、ちゃんとしたログを購入したばかりですし、この中古椅子も、一緒に燃やしながら、春まで、ぬくぬくと暮らせそうです。

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