ロンドンのスリにご用心!

私は、イギリスで、すりに合った事は一度もありません。

今まで、すりにやられたのは、20年以上前、イタリアのミラノで一回のみ。地下鉄に乗る前に、バリアを通るのにおたおたしていた時、後ろからこうやるんだと、教えてくれた兄さんがいました。ニコッと笑って、ありがとうを言うと、兄さん、いきなり踵を返し、すたこら逃げた。えっと思って、持っていたきんちゃく型のバッグを見ると、がばっと開いており、財布がない!ちょっと離れたところにいた、イタリア人の友人に、「あの男に財布やられた!」と言うと、彼は、だーっと後を追いかけたけれど、途中で、もうだめだと引き返してきました。「イタリアでスリにあって、警察に訴えても、時間の無駄で、何もしてくれないから、忘れるしかないよ。」と言われました。当時、このイタリア人の友人が良く言っていたジョークによると、「北イタリアでバスに乗ったら、バス内に1人はスリがいる。中部イタリアでバスに乗ると、バス内の3分の1はスリ。これが南イタリアへ行くとバス内の半分はスリ。」

幸い、この時、財布の中にあったのは、多少の現金と、イギリスでしか使えない、銀行カード。速攻で、カードを止める処理をする必要もないので、銀行への届けは、イタリアでのホリデーを終えてからしました。「忘れるしかない」と言われ、どのくらい、ぐずぐず考えていたかは、覚えていません。被害が大したことがなかったので、せっかくのホリデーを台無しにしたくないと、わりとすぐ立ち直った気がします。スリにむかって、「ありがとう」なんて微笑んでしまった、という間抜けな自分を笑いの種にし。ただ、ミラノというと、いまだに、他の何よりも「スリ」を連想します。もっとも、一日しかおらず、他のイタリアの街に比らべ、感慨も少なかったのはありますが。これを教訓として、簡単に開けられてしまう、巾着型のバッグなどは、以来、人の多い町に出るときなどは一切使わないようになりました。

先日、ロンドンのピカデリー・サーカス近郊のカフェで、友達とコーヒーと軽食しながら歓談した後、「それじゃ、そろそろ出よう」という事になり、友達が立ち上がって、床においてあったバッグを持ち上げようとしたところ、「あれ、私のバッグ・・・どこ・・・?」とあたりを見回し、彼女は、自分が置いた場所から、多少離れた椅子の裏側にあったバッグを見つけ、「なんで、こんな場所に?」と持ち上げ、テーブルの上にのせ「あれ、ファスナーが開いてる。あ、財布がない!」二人で茫然となりました。彼女の椅子の後ろにのテーブルには、こっちを向いて、初老のお上品そうな男性が座っており、びっくりした顔でこちらを見ていましたが、私は、彼がそのテーブルにつく以前に、他のもっと若そうな男性が座っていたのを覚えていたので、「あの人じゃないよ。」と友達には言いました。お上品な男性は、「あそこの防犯カメラがあるから、映ってるかもしれないよ。」そこで、店のマネージャーを捕まえて、事を説明すると、彼は即効で、2階にに駆け上がり、防犯カメラのビデオをチェック。「映ってるから、警察を呼べば、何とかしてくれるかも。」と、一番近いというチャリングクロスの警察署の電話番号も調べてくれました。

友人はとりあえず、財布に入っていた3枚の銀行カードをキャンセルするため、必死でスマホの銀行のアプリで処理。たまたま、テーブルの上に置いてあったスマホが盗まれなかったのはみっけものです。その間、警察署の電話番号に私が電話しても、電話はつながらず。仕方なく、緊急の救急車や、パトカーを呼ぶ999に、彼女が電話をすると、そういうことは、この番号にかけてくれ、と今度はその教えられた番号にかけると、これもつながらなかったと。昔から、イタリア同様、スリなどのいわゆる、軽犯罪は、警察はさほど意欲を見せて事を対処してくれないのですが、特に最近では、政府が警察へ回す資金なども減り、ロンドンでは上昇一方のナイフ殺傷事件、麻薬犯罪の処理で、警察もてんてこ舞いなのでしょう。スリなど、たとえ、防犯カメラにしっかり犯人の顔が映っていても、相手にしてくれない。犯人が、防犯カメラが自分の方向を向いている中、どうどうと犯罪を行ったのも、そうした事を把握しているためだったかもしれません。このままでは、こうしたスリ行為も、ロンドンやイギリスの大都市では増える一方となるかもしれません。いや、すりだけに限らず、去年、空き巣に入られた、地方都市に住む友人も、犯人は、どうやら、界隈で、空き巣犯罪で知られている人間らしいが、警察はほとんど何もしてくれず、逮捕する努力も見られなかった、ような事を言ってました。

さて、一応、銀行アプリで、カードは止めたものの、心配だからと、彼女は、近くの銀行の支店に入って、本当にカードが使用不能になったか、確認にはいったのですが、窓口の女性は、それは、この電話番号に電話してくれ、と、実際にその銀行にいるのに、どこかへ電話をかけるはめとなり、彼女はその後、銀行のロビーで約20分ほど、自分のスマホからかけた電話で、あーでもないこーでもないと、係員と会話をした後、やっと、ちゃんと止まっているとわかり、そちらは解決。それにしても、生活が便利でありながら、それを機能させるシステムが複雑となり、銀行の支店に入っても、そこで実際にいる人は、こういう時に、何もやってくれないという事実に、ちょっとびっくりしました。皆さんも、実際に、自分がスリにあって、カードを何枚も盗まれたとき、どうすればいいのかという対処法はしっかり把握しておいた方がいいかもしれません。必要以上に沢山のカードを持ち歩かない、というのも一考。

友人は、その後、警察へは家に帰ってから、インターネット上でフォームを埋めて通報する、と言って、大急ぎで帰途に着きました。私は私で、彼女の後ろにすわっていたスリ男の行為に気が付かなかったという罪の意識に良心をとがめられ、私たちにとっては最悪のお出かけとなって一日が終わりました。彼女も、バッグは、自分の足の脇の床の上に置いてあったはずなのに、どうやって、そこから後ろへ引きずられたのか、一切気づかなかったと言っていました。思うに、あのスリ男、かなりのプロで、周辺のカフェからカフェへと歩き回り、獲物をねらっていたのかもしれません。

ロンドン、またはヨーロッパの大都市へ観光へ出かける人たちへの忠告としては、カフェやレストランの混雑する場所では、まず、バッグは、床の上など、自分で見えない場所には、絶対置かないという事でしょうか。ロンドンに慣れているはずの私たちですら、これですから。もっとも、スリに合ったのは、友人の行きつけのカフェで、逆に、気が緩んでいたというのもあるかもしれませんが。

また、できるだけ、財布はバッグの底などの、取りにくい場所に入れる。私は、大体において、小型リックサックを持って歩くのですが、リックサックはファスナー型で、財布は、更に、その中のファスナーがある別の仕切りに入れてあります。椅子に置く時は、椅子の背にリックの背負い部分をからめて、背中にたえずリックがある感触があるように座っています。これでも大丈夫なのでしょうが、これからはますます、気を付け、できれば、テーブルの上か、別の椅子の上など、自分の目に入る部分に置こうと、と思ってます。私の別の知り合いも、ローマのレストランで、足元に置いたバッグを盗まれた経験がありますし。地下鉄内や、雑踏の中を歩く時は、私はリックは手に提げています。

また、最近では、歩道を歩いていて、自転車やオートバイで背後から近づいてきた輩に、ハンドバッグをひったくられるという犯罪も増えているようですので、道路沿いを歩く時も注意が必要です。

もし万が一、被害にあってしまったら、上述の通り、警察はスリには取り合わないと思ってください。銀行カードの詳細なども、万が一の対処のため、できればバッグのどこか、別の場所に入れておくのもいいかもしれません。とにかく、こういうことがあると、実際の被害もそうですが、気がめいりますので、気を付けて、楽しい観光を続けられるようにしましょう。

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