ピルボックス

田舎の風景の中にぽつねんとあるビルボックス
ピルボックス(pillbox)というのは、もとは、ピル(錠剤)を入れるための、小型の携帯容器を指す言葉です。今日のブログのテーマの「ピルボックス」は、イギリスの海岸沿いや、川沿いを歩いていて、時にお目にかかる建築物で、日本で言うトーチカにあたり、防御用の陣地の事です。

1940年に、ナチスドイツがイギリスに侵略する、という恐れがあった際、その防御用に、こうしたピルボックスがイギリス全土、1万8千以上建設されることになります。ドイツ軍が、海から、また、川を上って侵略してきた場合、この小さな空間に入って、開口部から、機関銃などによる攻撃を行い、敵の進行を妨害・阻止するのが目的。

計7つの基本デザインが考案され、各地で、都合に応じて、この基本デザインに多少の変更を加えながら、建設。まだ、多くのこうしたピルボックスが、あちこちに残っており、全国つずうらうらのピルボックスを比較してみると、それなりの郷土色があるようです。

以前訪れたサマセット州海岸の村ポーロックでは、ゴロゴロ石でこしらえた味のあるものがありましたが、こういうのは稀で、ほとんどはコンクリート製。

頻繁に見かけるのは、コンクリート製の6角形のもので、やはり6角形が、一番多いモデルのようです。時に四角形のものにも出くわしますが、円形タイプはほとんど見ないです。

なぜ、こうしたトーチカがピルボックスと一般に呼ばれるようになったかというのは、多少、異論があるようですが、最も信じられている説が、第一次世界大戦の時代に作られた、円形コンクリートの防御基地が、当時、薬を処方販売する際に使用された、段ボール紙でできた小型容器に形が似ていたため、というもの。そして、その名が、そのまま、引き続いて、第二次世界大戦に築かれた、6角形、長方形、四角形などのトーチカにも使用され、現在も、ピルボックスと呼ばれ、親しまれています。


幸い、ナチスドイツの侵略は起こらずに済み、ほとんど、本格的に使用される事は無く終わったものばかりでしょうが、今や、そのまま、風景と一体化し、頭に髪の毛のごとく草をはやしているものもあります。

戦争中に、こうした防御に必要な土地は国によって徴発され、ピルボックスが建築されたわけですが、戦後、土地は以前の所有者に戻され、ピルボックスも、その土地の所有者の手に渡ったという事。自分の土地の中に、こうした過去のなごりが立っているというのも楽しいものかもしれません。一部のピルボックスは法で守られているものもあるらしく、壊したくても、壊せない、という場合もあるのかもしれませんが。私だったら、やはり、除去できる権利があっても、そのままにしておきますね。

これを書くに当たって、ピルボックス・スタディー・グループというビルボックスの研究(!)に熱心な人たちのサイトを参考にしました。どんなものでも、掘下げてみると面白いのかもしれません。

コメント

  1. 昔東京の古い借家に居た時には、珍しく地下防空壕がありましたが、そんな様なものでしょうか? 次回渡英の折、田舎へ行くときには気を付けて探してみます(笑)

    返信削除
    返信
    1. 敵が海や川を上って侵入してくるのを、この中に入って、小さな開口部分から機関銃で攻撃して、侵入を妨害・阻止しようというのがピルボックスの役目なので、避難場である防空壕とは、目的が違っています。(なるほど、誤解を招きやすいかもしれないので、ちょいと、後で、本文に手を加えておきます。)特に川沿いなどを歩くと、よく出くわしますので、探してみて下さい。

      削除

コメントを投稿