さて、イギリスの国鳥は?

イギリスでは、公式に、国鳥なるものが設定されていません。日本の国鳥は、JALのマークで御馴染みの鶴だと思っていたのですが、桃太郎さんのキジなのですって。アメリカ合衆国は、早くも18世紀に、ハクトウワシ(Bald Eagle)と公認されています。

動物好きの国とされていながら、なぜに、いまだ、国鳥もないのか、と、現在、「イギリスの国鳥を選ぼう」キャンペーンが行われています。すでに去年、60の鳥たちの中から、10の候補が選出され、現在、この10の鳥たちのうち、どれがイギリスの国鳥にふさわしいかの、オンライン投票が行われています。この投票受付は、今年(2015年)5月7日に予定されているイギリス国会の総選挙の日まで続きます。その後、見事に、1位となった鳥を、国鳥としたらどうかと、新政府とエリザベス女王に推薦する事となっているようです。こういう、お金があまりかからずに、人気が取れる政策は、政治家大好きですので、特に新政権は、いい印象でスタートしたいのもあるでしょうから、選ばれた鳥が、正式に国鳥となる可能性は高い気がします。

それでは、ここで、アルファベット順に、イギリスの国鳥候補者を見てみましょう。

Barn Owl (バーン・オウル、日本語:メンフクロウ)
Blackbird (ブラックバード、日本語:クロウタドリ)
Blue Tit (ブルー・ティット、日本語:アオガラ)
Hen Harrier (ヘン・ハリヤー、日本語:ハイイロチュウヒ)
Kingfisher (キングフィッシャー、日本語:カワセミ)
Mute Swan (ミュート・スワン、日本語:コブハクチョウ)
Puffin (パッフィン、日本語:ツメノドリ)
Red Kite (レッド・カイト、日本語:アカトビ)
Robin (ロビン、日本語:ヨーロッパコマドリ)
Wren (レン、日本語:ミソサザイ)

候補にあがっている鳥たちのリストを見る前から、すでに、私は、ロビン(ヨーロッパコマドリ)がいいな、と思っていました。土を掘り起こすと、虫などの美味しいものが、掘り起こされた土の中から出てこないかと、近くに寄って来る姿から、ガーデナーズ・フレンド(庭師の友)という異名を取り、小型の鳥の中では、一番フレンドリーで、ガーデニング大国であるイギリスと、その国土を代表するのにふさわしい気がするのです。赤い胸当ても愛らしく、クリスマスカードのイラストなどにも、さかんに使われている、絵になる鳥でもありますし。

そう思ったら、1961年にタイムズ紙が行った、国民のお気に入りの鳥を決める投票で、すでに、コマドリは、ナンバーワンに選ばれているそうなのです。今の段階でも、コマドリが、投票の先頭を走っている様子。私も、投票締め切り前に、コマドリに一票入れるつもりでいます。ちなみに、その辺で見かけるコマドリの中には、イギリスに年中住んでいる定住者の他に、冬季、北欧の寒さを逃れてやって来る、渡り鳥コマドリもいるのだそうです。

我が家の庭にも頻繁に訪れ、コマドリよりも良く見かけ、一番なじみ深い鳥は、ブラックバード(クロウタドリ)なので、気分的にはクロウタドリに勝たせてやりたい気もするのですが。シンボルとしてのインパクトは、コマドリの方が強いかと思うのです。それに、クロウタドリは、すでにスウェーデンの公式国鳥なのだそうですし。

コマドリとクロウタドリの他に、候補に上がっている、俗にいうガーデンバード(個人の庭に訪れる鳥)は、ブルーティット(アオガラ)とレン(ミソサザイ)。アオガラは、黄色と水色の色調が綺麗で、アクロバットまがいの空中での飛行ぶりも人気。ミソサザイは、小さな茶色のボールに、上向きの短い尻尾がちょんと突き出ている様子が愉快。ただ、両者とも、コマドリとクロウタドリに比べ、人間への警戒心はずっと強く、まじかに寄って来る事は、ほとんどありません。そういえば、以前、隣に住んでいたおじいさん、夏に、庭にデッキチェアを出し、横たわって、うつらうつらしている時に、足の先にコマドリがとまったそうなのです。その直後、わざわざ、うちまで、その事を知らせに来ていましたっけ。「さっき、うちの庭で何が起こったか、知っちょるか?」と。うれしかったんでしょうね。

白鳥などは、シンボルとしては優雅でいいですが、イギリス国民より、イギリス王室のイメージが強すぎる気がします。やはり川のほとりで時を過ごすカワセミは、近くの小川の静かな部分で、何度か、青い閃光の様に飛ぶ姿を目撃しました。綺麗ですけれど、特に、イギリスを強く思わせる鳥では無いですね。

大好きなバーン・オウル(メンフクロウ)は、私自身、実物を見たこともなければ、実際見た人の数は極めて少ない鳥。パッフィン(ツメノドリ)もそうで、ピエロの様な顔やよたよた歩きは可愛いけれど、実物を見た人は少ない。

レッド・カイト(アカトビ)とヘン・ハリヤー(ハイイロチュウヒ)は、猛禽類ですが、双方とも、農家や、ライチョウなどの狩猟用の鳥を守る狩猟番人たちから目の敵とされ、一時、絶滅も心配された鳥たちです。アカトビは、現在復活しつつあるようですが。茶褐色で、空中の同じ場所に留まり、飛ぶというよりグライダーの様な動きをする鳥。凧は、英語でkite(カイト)と言いますが、この名は、アカトビの飛行の様子から取って付けられたものです。凧の様な飛び方をするから、アカトビの英語名がRed Kiteだと、最初は思っていたのですが、実は、その逆なのです。だんなは、近くの村で、アカトビを一度だけ見た事があると言いますが、私は、この周辺で目撃した事はありません。以前、チルターンの丘にハイキングに行った時に、2羽のアカトビが凧飛行をしているのを見て、ハッピー気分となりました。ハイイロチュウヒの英語名Hen Harrierは、「鶏の狩猟者」の意味。こちらは、一度も見た事はありません。この比較的名の知れないハイイロチュウヒが、最後の10の候補に選ばれ、現在も危機に面しているこの鳥に対する、一般の理解度と知名度が上がるかも、という主催者の期待がかかっているようです。

ところで、候補の鳥たちより、ずっと一般人には馴染み深い、すずめやハトなどは一切考慮されないのですよね。多すぎて面白みにかけるのか。イギリスでは良く見かけるスターリン(Common Starling ホシムクドリ)も、群れて行動し、ぎゃーぎゃーという泣き声がイマひとつなためか、無視されてしまっています。こういった鳥たちを国鳥にしている国ってあるのでしょうか。

さて、予想通り、ヨーロッパコマドリの赤胸ロビンちゃんが、イギリス国鳥の座につけるでしょうか。イギリス総選挙の日を待ちましょう。

候補にあがる鳥たちの写真が見れるニュースサイトはこちら。投票を行っているサイトは、こちらまで。

追記:結果報告2015年6月10日

イギリス総選挙も1ヶ月たった後、ようやく鳥の選挙の方の投票結果の集計が終了したようです。予想通り、ロビン(ヨーロッパコマドリ)の余裕の勝利に終わりました。この後、政府とバッキンガム宮殿に結果を報告し、正式な国鳥としての認可を求める予定のようです。

やはり、庭に良く現れるアオガラが8位で、ほとんどの人が本物を見たことがないメンフクロウが2位につけているのが、ちょっと驚きでしたが、なんでも、投票最終日に、学校で、子供たちも投票に参加し、メンフクロウは、子供に人気で、子供の票を勘定しなければ、2位は、クロウタドリだったのだそうです。以下、1位から10位まで、日本語の名称で記載します。

1位 ヨーロッパコマドリ
2位 メンフクロウ
3位 クロウタドリ
4位 ミソサザイ
5位 アカトビ
6位 カワセミ
7位 コブハクチョウ
8位 アオガラ
9位 ハイイロチョウヒ
10位 ツメノドリ

コメント

  1. 夫も「ロビンがいちばん好き」と言っています。こちらはトビ(black kite)がいっぱいいます。「鳶がタカを生んだ」のことわざがあるように、疎んじられている鳥かもしれませんが、夫は好きで最初に見た時は感動していました。

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    1. それでは、ご主人も、ロビンに清き一票を。「鳶がタカ生んだ」ってありましたね、そういえば。ちょっと、鳶に失礼ですよね。あの飛び方や、尻尾の切れ目具合も独特で、味があるのに。場所によって、復活に成功していて、私が目撃したチルターンにも生息していますが、ウェールズにも多いみたいです。

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