過ぎ行くものへの封印

この絵は、英国ヴィクトリア朝のラファエル前派のうち、私が一番好きな画家、ジョン・エヴァレット・ミレーによる、Autumn Leaves(秋の落ち葉)。今時分の田舎の風景を、枯葉を踏みながら歩く時、また、どこかから、かすかな焚き火のにおいがする時、この絵を、よく思い浮かべます。

ひとつの季節が終わり、その残骸を燃やした煙が、冬も間近の空へ舞い上がる・・・。葉を燃やすモデルとなった少女達も、いつかは年を老う。彼女達は、キャンバスにその若い姿を留めながら、当然、もうこの世にはいない。

手持ちの画集の説明によると、ミレーは、

「枯葉を燃やすにおいによって目覚めさせられる感覚ほど、すばらしいものはあろうか?私にとっては、過ぎ去った日々の思い出を、これほど甘く伝えてくれるものは無い。それは、旅立つ夏が、空に捧げる別れの香(こう)であり、過ぎ去ったもの全てに、時が静かに封印をしたという、幸福な確信をもたらしてくれる。」

と言ったそうです。

焼き払った秋の葉の灰は、風に運ばれ、空に舞い、羊が点在する野に落ち、海の波に飲まれ、いつの日か、また、他の生物、事物に形を変えて再生し。

ここで一句、

去る時を とどめるすべは 知らずとも 
たたえよ 金の残照の中

*当記事は、2009年11月21日、ヤフージャパンにて投稿したものを多少書き直したものです。

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