歩け、歩けと、万歩計

初代万歩メーターの広告、レトロな髪型がなんともいえません!

私は、どこでも比較的よく歩く人です。歩くのが、一番手ごろで金のかからぬ運動などとも言われていますが、実際のところ、時には、歩くだけでなく、多少、ぜいぜい、はあはあと、心臓がある程度ばくばくする運動は必要なようです。全く同じ年で、誕生日も近い友人が、ジョギングの女王のような人で、時々、ハーフ・マラソンなどにも参加しているのですが、彼女は夜中もぐっすり眠れるなどと言う。私は、比較的眠れないタイプなので、それを言うと、それはジョギングなどのエアロビクス運動が足りないんじゃないか、などと言われました。

半信半疑で、町に買い物に出かける時、行きの道を、ジョギングしてみようと思い立ちました。町の繁華街までは、そのほとんどを小川に沿って木々に囲まれた歩道を辿って行けるので、気分もいいのです。それではと、家の前から、さっそうと走り出したはいいが、200メートルと行かぬところで、すでに息切れし、自分の体力の無さに改めてびっくり。その後、少し走っては、歩き、少し走っては歩き。途中で、かなり速いペースの本格ジョギングお姉ちゃんに追い越されてしまいました。約1・5キロほどの町の中心についた時には、もう太ももがわなわな。この夜、私にしては、良く眠れたのですが、それがこのジョギングを試みたことによるかどうかはわかりません。

色々、調べたところ、ジョギングなどの運動もやりすぎは健康にも逆効果があるようです。強度の運動をしゃかりきにやった結果、脳卒中、心臓麻痺を起こしたなどという話も耳にしますしね。何事も八分目。

いずれにせよ、ジョギングやウォーキングに出た時の、合計歩数や距離を知りたいと、初めて、万歩計を購入。万歩計にあたるものは、英語ではペドメーター(Pedometer)といいます。ラテン語源のペド(足)とギリシャ語源のメーター(測量)が合体した言葉の様です。なんだか最近のペドメーターは、色々なアプリなどに連結しているものもありますが、私はごくシンプルな操作簡単なものを買いました。

ペドメーターの歴史は、なんでもレオナルド・ダ・ヴィンチあたりまで遡り、彼が、軍用に、または地図作製などのために、歩数を数える事によって距離を知るのを目的に、ペドメーターというものを試案し、彼の手による、振り子式のペドメーターのスケッチが残っているのだそうです。当時は、健康のため歩く、などという考えはなかったわけで。実際に、1770年頃、初めて、ペドメーターを作った人としてスイス人の時計技師が挙げられていますが、他にもあちらこちらで、色々同じような事を考えて、作っている人はいたのかもしれません。ヨーロッパで入手したペドメーターを、アメリカに導入したのは、トーマス・ジェファーソンだと言われています。彼が、その元のものに手を加えて改良したかどうかは、不明。

時が経ち、これを一般市民が健康の目安の道具として大挙して使い始めるのが、1960年代の日本。64年には東京オリンピックなどもあり、アメリカ風食生活が身に付き始め、太り始めた日本人を健康にしようと、山佐時計が、「万歩メーター」として販売。何でも、当時の日本人の一日平均歩数は、3500~5000歩だったそうです。(もっとも、この数字、現在のイギリス人の平均歩数よりもずっと高いのではないかと思います。)ともあれ、この歩数を上げ、一日に大体1万歩くらいをめざして歩けば、スリムなボディーを保ち、健康を維持できるのではと、特に科学的データに基づくものでもなく、区切りのいい数字として選ばれたそうなのです。ところが、この1万歩というのが、万歩メーターの成功のため、その後、そのまま、日本のみならず、各国で、目標とすべき数字として、見られ続けてきたようです。

万歩メーターの広告、スチュアーデスは、一日9000歩

1965年の発売当初の値段は、2200円。山佐時計のサイトによると、当時の大卒初任給が2万から3万円だったそうなので、かなり高いものであったのです。当社は、1985年に、この商品名を「万歩計」として登録商標所得しています。よって、「万歩計」と一般に呼ばれている名前は、商品名。これは、英語で、ボールペン(ballpoint pen)の事を、商標のバイロ( biro)と呼んだりすることや、掃除機(vacuum cleaner)を、掃除機を一般に広めた会社名、フーバー(Hoover)で呼んだりするのと、同じ感じです。

この1万歩というのは、最近見直しが行われており、イギリスでは、歩数にあまりとらわれず、1日10分、息がぜいぜいするくらいの速足であるけば、それが一番、健康維持に良い運動だという話もあります。この国、食べすぎ、運動不足、太りすぎは、日本よりもずっと多い国ですから、こういうのは力を入れて奨励しないと、糖尿病患者で医療機関が崩壊しかねない。私も、ジョギングで30分走る代わりに、町まで買い物に出かける道中、この速足10分間対策を行う方法でいいかなと思っています。要は、負担が大きすぎない程度に心臓をばくばくさせる運動をすればいいわけですから。

というわけで、万歩計・ペドメーターは何が何でも、一日一万歩を達成させるためというより、目安として、使うに限ります。歩きなれた場所と場所の間を、「なるほど、距離と歩数でこれくらいか」と思う程度の。一日中身に着けていたくもないですしね。とりあえずは、一日10分のぜいぜい歩きをする事を、ちょっと早い新年の抱負としておきます。ジョギングの女王になるのは、私には、ちと無理そうですし。

山佐時計計器株式会社のサイトはこちら。ここに載せた2つの写真は、このサイトからお借りしました。

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