チャーチル・ウォー・ルームズ

もう何年もイギリスに住んでいながら、ロンドン内でさえ、まだ行っていない観光場所というのはあるものです。チャーチル・ウォー・ルームズ、または、キャビネット・ウォー・ルームズ(Cabinet War Rooms、内閣戦時執務室)と呼ばれる博物館もそのひとつ。行こう行こうと思いながら、月日が経ち、先日やっと行ってきました。ここは、第2次世界大戦中の作戦、戦略等を、爆弾などの妨害に合うことなく遂行できるよう地下に設けられた施設で、その一部が当時の面影を残して一般公開されており、また、ウィンストン・チャーチル博物館も、内部の一角に設置してあります。

ここへ観光に繰り出そうと決めたら、2017年の映画「Darkest Hour」(邦題:ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男)を、行く前に、ぜひ見てみましょう。映画背景は、第2次世界大戦中、アメリカが参戦する以前の1940年5月。ドイツ軍の電光石火の攻撃に追われ、フランスの海岸線ダンカークに追い込まれていく英軍。その緊急時に、戦時内閣は、ヒトラーと話し合いをして戦いを辞めようという派と、首相チャーチルを中心とした戦争続行派に別れます。チャーチル派が最終的に反対派を押し込め、ダンカークから、多くの小舟を利用しての兵士たちのイギリスへの一時撤退作戦、オペレーション・ダイナモが決行されるまでの過程を描いています。このオペレーション・ダイナモ自体の様子は、やはり2017年に「ダーケスト・アワー」より先に公開された映画「Dunkirk」(ダンケルク)でおなじみです。

本物ではなく、スタジオで再生されたもののようですが、映画内のかなりの場面が、この地下のキャビネット・ウォー・ルームズ内で起こった出来事を描いており、「あ、この部屋、映画のシーンで見覚えがある。」などというのに、沢山行き当たります。一番上に載せた写真、キャビネット・ルーム(閣議室)もしかり。この部屋で、停戦派を相手にチャーチルが激論を飛ばしていました。

入り口でチケットを買うと、オーディオガイドを無料で借りれるので、大体の観光客がこれを聞きながらルートを辿っていました。どうやら日本語のオーディオガイドが無いようで、そういった意味でも、映画を先に見ておくと、説明がはいらずとも楽しく回れます。英語に自信のある人は英語オーディオガイド使用になるかと思います。

この小部屋には、アメリカ大統領への直通電話が置かれており、映画では、まだ中立の立場を取ろうとするルーズベルト大統領に、チャーチルが必死の援助の懇願を頼むシーンで出てきました。

戦闘状態の把握、戦闘作戦などが練られた、Map Room。

ジョージ6世などの訪問の際は、チャーチルのこのベッドルームで会ったそうです。

秘書たちが忙しくキーボードを叩いたタイプ室。

この他にも、スタッフの寝室、キッチン、チャーチルのスピーチをラジオ放送するための部屋なども見られ、また、上記の通り、一部はウィンストン・チャーチルの一生に関する博物館に当てられています。チャーチルは、自分でデザインした、胸に葉巻を入れるためのポケットのある、作業着のようなものを時に着ていた事でも知られますが、その作業着の展示もあり、チャーチル博物館内では、私は、それが何となく一番印象に残っています。

入り口は官庁街のホワイトホールの裏手。写真右手が大蔵省、左手が外務省の建物で、キャビネット・ウォー・ルームズは、大蔵省の建物の下にあたります。

この入り口の向かいはセント・ジェームズ・パークですが、すっかり紅葉も深まり、綺麗ですので、キャビネット・ウォー・ルームズを訪ねた後に、そぞろ歩き。館内にも、カフェはあったのですが、なにせ、地下で、圧迫された感があったので、多少寒くても、公園のベンチでサンドイッチにありつきました。水鳥やら、りすやらを眺めながら。

日本でも、数年前に、ハトを丸ごと飲み込んだとニュースになっていたセント・ジェームズ・パークのペリカンたちも、秋日和のこの日、のほーんとした顔でくつろいでいました。私など、サンドイッチごと丸のみにされてしまいそうな大きなくちばしは、閉じたままでしたので、安心して近づきました。

チャーチル・ウォー・ルームズの公式サイトは、こちらまで。

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