子羊のいる牧場

イギリスの農家で、子羊が生まれる季節は、ラミング・シーズン(lambing season)と呼ばれます。ラミング・シーズンは、イギリス国内の場所にもよりますが、冬季から初春にかけて、早いところで12月に始まり、遅くは4月頃まで。特に2月、3月に生まれる子羊たちが多い感じです。生まれる羊の数は、雌羊一頭につき、平均1.3頭とのこと。秋に妊娠し、約5か月で子羊の誕生。

2月頃に生まれた子羊たちだちは、もう牧場デヴューを果たしています。暖かな小春日和となった昨日、散歩で通りかかった牧場でも、お母さんに連れられた子羊たちを何匹も見かけました。可愛い!

立ち止まって、眺めていると、お母さん羊は、ちょっと警戒して、こちらの様子をうかがっています。

家畜に限っては、「食べちゃいたいほど可愛い」という表現が、現実味をおびるのです。この愛らしい子羊たちの中には、間もなく食卓に上がってしまうものもいるでしょうから。家畜は、人間が必要としなければ存在しない動物。子羊たちも、最終的な「食肉」としての目的がなければ、生まれてくる事もなく、こうして見かける事も無いのでしょう。特に、現段階では、羊の毛の需要も値段もかなり落ちているようですから、羊毛だけを目的として、羊を飼うという農家は、ほとんどいないでしょうし。

それでも、こうして、羊たちが生きている間は、のびのびと戸外で走り回ることができるわけですが、世界人口が増えに増え、より多くの人々が、肉を毎日のように沢山食べる事が習慣となっていくと、こんな悠長な飼育もしておられなくなり、すべて狭い場所に閉じ込め、工場のように家畜生産をするのが一般的となる日もあるかもしれません。一部のニワトリの飼育はすでにそんな感じですし。最近になって、世界の人口増加対処策として、たんぱく質の獲得のために、もっと多くの人に昆虫を食べるように奨励してはどうか、などという案も出ていますが、西洋人は、昆虫食べるのは、嫌な人多いでしょうね。私も、以前食べたイナゴなどは、足が歯に挟まったりして、食感が悪かったのを思い出します。

もっとも、中年をすぎると、動物たんぱくの取りすぎは、癌などの病気につながる事にもなり、プラスよりマイナスとなる場合が多いらしいです。ですから、50くらいからは、菜食主義者になった方が、体のためにも良い、などという話もあります。いずれにせよ、今の世の中、先進国は、確かに、肉の食べ過ぎ、というのは言えている気がします。昔は、肉は、少量を有り難く食べるものだったのが。菜食主義にはなれなくとも、室内でギューギューづめで育った家畜の肉を安く買って、たくさん食べるより、戸外で、元気に育った家畜の肉を、多少高くても、少量ずつ美味しく食べる・・・という方がグッドかもしれません。

丘で草食む羊の数は、イギリス全国で3200万頭もいると言います。イギリスの人口が、今のところ約6500万人だというので、その数の多さがわかるでしょうか。以前、アルパカを飼う農家が増えているという話を書きましたが、まだまだ、羊の数には到底おっつきません。特に、こうした田舎では、羊の数の方が人間の数より多いでしょう。もっとも、イギリス人口は、日本やイタリアと対照的に、着実に増えていっています。

子羊たちのいた牧場の近くの畑では、菜の花も咲き始めていました。

野を跳ねる子羊のように、
Spring is sprung. (春が飛び出した)

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